まだ、昨日の興奮がさめやらぬ、主水日記。
5月13日・日曜。
朝より、銀座へ、出かける。
午前10時には、百貨店が開く。
さすがに、去年の今頃よりは、
大分、客足が戻っているようだ。
やがて、銀座シネパトス前に、到着。
地下入り口通路の、料理屋が2件、閉じていた。
休業と閉店に、なっていた・・・。
ここへゲストに来る人々が、よく、食事していたのに・・・。
寂しいのう。
今日は、1日、ここで過ごす。
南側の1スクリーンが、今年の、
<第24回ピンク大賞>の、会場なのだ。
今年は、呼称としての<ピンク映画>誕生から、
50周年記念、という、めでたい年・・・なのだが。
同時に、前年度ベストテン投票・発表の、
最後の年でも、ある・・・。
すでに、ピンク映画ミニコミ誌・<PG>のwebsiteで、
公式に、そう発表されていたのだ。
業界全体の、年間制作本数が、既に50本を割り、
昨年は、43本にまで減っている現状であり、
ベストテン選考自体の、意義が薄れた、というのが、
その、大きな理由だった・・・。
よって、ファンや、ピンク映画業界の人々で、
にぎやかなる会場内でも、
「節目・・・」「一区切り・・・」「来年は無いのか・・・」
等の言葉が、ひんぱんに、飛び交っていた。
司会者・登壇者・観客らも含め、
皆、明らかに、戸惑いを覚えている様子が、見られた。
彼らの発言を、総合するに、
今、大手の新東宝・エクセス両社での制作が、相当に激減しており、
殆どの監督が、OP(オーピー)映画の現場で、仕事を続けているものの、
劇場数の減少・公開枠の限定性等により、
なかなかすぐに、登板できない監督も、出てきている模様・・・なり。
よって自然と、ほとんどの各賞ノミネート作品が、
OP映画の制作、となってくるのであって・・・。
ここは、頑張っていただきたいものである。
また、来年度以降の、
このイベント枠の有無や、内容的あり方等にかんしては、
まだ、はっきりとは、今後の方針が固まっていない模様、とみえた。
(注:ただし、14日以降は、銀座シネパトスの20時台枠に、
ピンク映画名作群の、特集上映が、しばらく行なわれる予定。)
制作・撮影側の人々にとっても、毎年の<ピンク大賞>が、
大いなる発奮材料に、なってきたであろう事は、
察して、余りあるものがある・・・。
できれば、続けてほしかったのだが。
とはいえ、場内では、
一部に明るいニュースも、あった。
<オカシネマ>方面では、つとに知られている、
キャスト違えで繰り返されてきた、舞台劇・「小鳥の沐浴」が、
本年度の受賞者、里見瑶子・なかみつせいじの共演で、
池島ゆたか監督の演出版により、
本場・ニューヨークでの公演が、決定した事、など・・・。
先に反省点などを、国内公演中に練ってから、
現地へ、向かうそうである。
イベント中盤の、授賞式で報告する、
久々に助演女優賞の、里見女史が、
思わず、涙する一幕も、あった。
(いってらっしゃい!ボンボヤ−ジ!!の声)
また、業界有数のロングランナー・深町章監督に対しては、
本年度の特別賞が、送られた。
監督生活40周年、まだまだやる気十分、お元気そうだ。
さて、この日の上映は、
ピンク映画50周年記念の、特別上映にふさわしい、
高橋伴明監督の名作・「襲られた女」(再見)から、始まった・・・。
1981年、ZOOM−UP映画祭・作品賞受賞作。
山路和弘、下元史朗、忍海よし子、萩尾なおみ、織田倭歌、他、出演。
新宿界隈で、
いまいちぱっとしない、何でも屋稼業を続けてきた、
つっぱり青年と、中年男。
自室でつきあっていた女性と、別れることになった青年だが、
バーの女性と、微妙な、心理的関係にあった。
総会屋男性の浮気写真を狙った、最後の大仕事に、
彼女を仲間に引き入れたばっかりに、
事実上の三角関係にあった、3人には、
やがて哀しい、別れの時が、来た・・・。
遅れてきた青春の、終わりを告げる、
ああ、ラスト・ワルツが、わびしいぜ・・・。
休憩後、2本目は、
後藤大輔監督・脚本の昨年度作品、
ベストテン投票3位作品、
「となりの人妻 熟れた匂い」を、再見。
すでに解説した通り、落語の「芝浜」を、
現代の漁港町に置き換えた、
なかなかに愉快な、ドタバタ喜劇。
階段での夫婦芝居など、やっぱり、又、笑ってしまうのだった。
監督賞・男優賞(なかみつせいじ)・技術賞(撮影・飯岡聖英)、受賞。
3本目、「色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ・・・」。
今回の作品賞、ベストテン1位作品。
いきなり、奇妙な風体の人物が登場、
遺書代わりらしきビデオを、撮り始める。
八王子の不動産屋に就職した、人間関係の苦手なヒロインが、
数奇な運命をたどり、死を決意するまでが、
えぐい、痛〜い、不幸なるエピソードの羅列でもって、
語られてゆく・・・。
女優も男優も、相当なる力演、怪演。
血生臭そうなシーンもあるので、
観ていて、だんだん、こわくなってくる。
だが。
結果的には、助演の里見瑶子が、
主役のお株を奪う程の、存在感を、見せつけていたのだった・・・。
反則技、食らった。
ただ、劇中で起きる、ある事件の犯人、
割とすぐ、捕まるんじゃないか?と。
どうみても物的証拠、残り過ぎてるもんなあ。
指紋とか、遺留物、いろいろあるだろ〜、と。
そこだけ、気になった。
表彰式・休憩の後、
4本目、稲尾実(=深町章)監督の、
現在鑑賞可能な、最古の作品を、上映。
1976年・国映製作・新東宝映画配給作品、
「痴漢満員電車」。
久保新二のサラリーマンが、
夜学の予備校生と、変わり者の女子高生に出会って、
<チカンマン・ユニオン>を結成、
たわいもない、あの手この手で、
エロいシチュエーションを呼び込んでは、遊んでゆく、というもの。
女房とその友人女性も、徐々に、巻き込んでいって・・・。
明らかに東京近辺・郊外の、私鉄や地下鉄で、
きわどい撮影、あり。
(ほんとにやっちゃダメよ!犯罪だからね!の声)
電車(国電!)のカラー車体や、
「ストで会社が、休みだよ・・・」
「わっかんねえだろうな〜」などの台詞に、
製作当時の時代を、感じる。
3人の無邪気な言動が、いたずら精神満載、団子状に並んでゆく。
場内でも爆笑が、結構起きていた。
公園で一同が、ぼやくラストも、
お見事、なり。
5本目が、先日、上野オークラでもやっていた、
「女真剣師 色仕掛け乱れ指」。
これが、ベストテン・2位。
男優賞(那波隆史)・新人女優賞(管野しずか)・技術賞(飯岡氏)を、受賞。
そして、ラスト・6本目が、
今回最大の、刺激的問題作。
ホラーの奇才でもある、友松直之監督の・・・
「囚われの淫獣」。
<幻想映画社>のロゴにふさわしく、
いきなり、イギリス風中年紳士の、操作人形が登場、
映画館場内でのご注意等、やや皮肉交じりの、口上を述べる。
「さあ、もうじきタイトルが、出るだろうが・・・」
などと、ご丁寧に前説の後、
ようやく、ピンク色の劇映画が、始まる・・・。
そして、ベッドの上、カメラの前で、こちらを向いて、
顔の見えない男性とまぐわいつつ、気持ちよがっている、
女優が、登場。
きわめて明るい照明、陽気な感じ。
それと並行するように、別次元の、
こちらはやや暗めの、ドラマ・シーンが展開。
ピンク映画館の客席で。いつのまにか、眠ってしまった、
一部の、男女観客たちが目覚めると、
どういうわけか、旧館に、閉じこめられていて、
いくらどうやっても、ロビーから外へ、
出られない、というのだ・・・!
この両者シーンが、交互に現れ、
ひんぱんに入れ替わる、構造。
既にこの時点で、映画世界が迷宮化しており、
超早回しと、人形の声の解説付きで流される、
登場人物各人の、ハイテンポな回想シーンとあいまって、
相当におもしろい、躍動的画面になっている。
そうした画面世界の中で、ナビゲ−ターたる人形紳士は、
「君達の観たい映画を、各自で見極めれば、
ここから、出られるかもしれないよ・・・」
と、告げた上で、各人に問う。
「さあ、君は、どんな映画が観たい?」と。
かくて、観客役一人一人と、人形との間で、
観客論のディスカッションが、続けられてゆく・・・。
しまいには、その各人の願望・欲望を、丸出しにした、
<ロビー内劇映画>とでもいうべき、激烈シーン!が、
一部で現出するに、いたる・・・。
これがまた、劇中観客・モギリ女性らの、
ピンク映画館にやってき来た経緯と、その心理的背景を、
きわめてあけすけに、暴き立てる、
かなり・・・刺激的な、ディスカッションで。
ある劇中女性客(またしても!倖田李梨)など、
もう、カンカンになる程のもの。
ここらへん、観ていてさすがにちょっと、心配になってくる。
なにしろ、この上映会場には女性客も、多々、来ているのだから・・・。
(面白がってくれてる女性客も、いたみたいだけど、ね・・・?の声)
そして、一人の観客が、
あるファンタジクな、究極の選択を、する・・・。
これはもう、パロディというより、
作り手・受け手双方への、強烈なる挑発。
高度すぎる、批評性。
究極の、メタ・ピンク映画といえよう。
友松作品的?血生臭さを、抑えめにしたのが、
今回に関しては、プラスに働いた。
この<映画>を、すでに、大いに楽しんでしまった以上、
この作品の、強烈なる映画イメージを、越える何かを探すのは、
なかなか、困難なことになりそうな、
今、そんな予感が、するのだった・・・。
以上。

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