2010/5/8

売上割戻引当金と返品調整引当金  商業簿記

売上割戻引当金と返品調整引当金について、会計処理は簡単ですが、その本質を捉えるのは意外に難しい気がします。


  「売上割戻引当金は、当該売上に対して設定する」

と学んだあとに、

  「返品調整引当金は、当該売上ではなく、当該利益部分に対して設定する」

と教わった人は、

  「返品されたら当該売上は全額なくなるのに、なんで返品調整引当金は、当該売上全額に対して設定しないんだ?」

と違和感を持たれるかもしれません。


そして、その答えは、

  「返品されたら、原価分の商品は取り戻せるから」

ではありません。(ある意味では正しいのですが)

返品調整引当金を理解するには、当期のP/Lに計上される売上だけでなく、売上原価についても考える必要があります。


返品調整引当金を設定した場合、当期の売上高を減額しないと同時に、売上原価も減額しません。

つまり、返品されるであろう商品の売上も売上原価も当期に計上されます。
(当期に販売したという事実は変えません)

したがって、当期は、売上−売上原価が利益になるはずですが、将来返品によってその利益がなくなる可能性があるため、利益計上すると同時に当期に費用(返品調整引当金繰入額)計上もしておく、といった感じです。

ですから、返品調整引当金は利益部分に対して設定するのです。


もし、当該売上を全額控除してしまったら、売上原価だけが残ることになります。
つまり、「当期に商品をタダであげた」のと同じになってしまいます。

(先ほど、「ある意味では正しい」と書いたのは、もし仮に「商品が気に入らなかった場合は、全額返金します。商品は差し上げます。」といった契約があった場合には、利益がなくなると同時に、商品もタダであげた状態になるため、売上全額に対して引当金を設定する必要があるからです。もちろんこんな契約ないでしょうけど。)


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<まとめ>

売上割戻引当金⇒割戻をしたあとの価格で販売したことになるだろうと考える
            (売上−売上割戻引当金)−売上原価=売上総利益

返品調整引当金⇒通常の価格で販売したが、将来に利益がなくなるだろうと考える
            売上−売上原価=売上総利益  
            売上総利益−返品調整引当金=0

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実際に返品を受けた場合には、

             仕入         / 売掛金
             返品調整引当金

という仕訳を行います。

この貸方は、前期の売上(つまり原価部分と利益部分)の対価である売掛金の減少です。

利益部分の売掛金減少については、前期の利益が実際になくなったので、前期の利益を控除するために計上した返品調整引当金を充当すればいいのですが、原価部分については、対応する売上を前期に計上してしまっており、販売が完了したものとして処理していますから、「現金で決済してもらう変わりに、売掛金をつかって得意先から新しく商品を仕入れた」といったイメージです。


最後に、
返品調整引当金を売上総利益に対して設定するのに対して、売上割戻引当金は売上に対して設定しますが、売上割戻というのは、そもそも売上のうちの利益の一部を得意先に対して返還することなので、本質的には、売上のうちの利益の一部に対して売上割戻引当金を設定していることになります。

つまり、売上総利益というのは、売上−売上原価という差額概念ですから、売上を減額することによって間接的に利益を控除しているのか、売上総利益から直接控除しているのかという違いにすぎません。
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タグ: 会計 商品売買 決算



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