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私はこれ以上の論争を諦めた  

横から伸びてきた彼の手が、先程私が押したばかりのボタンをもう一度押した。やはり耳障りな音だった。
「お前に慈悲というものはないのか。」
「何を言う。設定温度挙げてやってるだろ。」
「そうか、それはどうもありがとう。」
 ため息をひとつ吐き出して、私はこれ以上の論争を諦めた。相変わらず冷風を垂れ流し続ける機械を憎しみを込めて一瞥してから、作業の続きに戻る。彼は満足したようにリモコンをソファの上に放り投げて、自分も作業へ戻るべく机に広げられている紙の束へと向き直った。我々の前に並べられた紙たちには細々とした文字が整然と並べられていた。それらは何かの嫌がらせでもあるかのように徹底して無意味だった。退屈だ、退屈。大いなる退屈だ。時間の浪費だ。そう考えだしてしまうと私の頭はもうそれらを全く受け入れようとしなかった。それらはただ私の目の前を掠めていくだけで、何物も私に残しはしなかった。
「なぁ、」
 すっかり仕事に対するやる気を無くしてしまった私は、黙々とデスクに向かっていた彼の頭に声を掛けた。彼は非常に迷惑そうな顔をしてはいたが、律儀に仕事の手を止めて視線をこちらに向けてくれた。私は無表情(と自分では思う)でそれを見返した。
海は冷たかった。暗かった。
悲しみを内包していた。それ自体が絶望に暮れていた。
私の中に海はあった。静かに、そして広大に存在していた。
波は立たないのだった。それもまた悲しいのだった。
兎角、それが全てなのだった。

「意外と地味だな」
「どういう意味だ」
「もっと、波がこう、派手に」
 身振りで高波を表すと、彼は呆れたように首を左右に振った。夏の日差しが彼の平生から青白い顔を照らしている。つくづく明るさの似合わない男だと思った。
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