あなたは、 番目の訪問者です。

2016/5/22  11:53

針山憲夫さんご一家の舞台があります。  
このブログでリンクを張らせていただいている、クラリネット奏者の
針山憲夫さんの娘さんでバレリーナとして欧米でご活躍の
針山愛美(はりやまえみ)さんがご出演になる舞台が、豊中市の
アクア文化ホールで開催されます。開催は今週の木曜日5月26日です。

平日の夕方ですが、共演者がベルリンフィル在籍のヴァイオリニスト
Holm Birkholz と実力者なのでプレミアム感高いです。
チラシには小さく記載されていますが、「いわゆる針山ファミリー」として
ご両親(針山憲夫さん、針山和子さん)が出演なさる場面もあるようです。

舞踊は、大勢が出演する舞台は華やかですが、一つ一つの表現を細部まで
鑑賞し尽くすにはやはりソロに限ります。
「豊中プロジェクト」として今回を皮切りに、シリーズ化も予定されている
公演とのことですので、お時間が許される方はその第1回に足を運ばれては
いかがでしょうか。

下に会場のWebサイトで掲載されているチラシpdfをリンクしておきます。
http://www.toyonaka-hall.jp/event/details/pdf/160526.pdf

2016/3/24  23:30

長嶋未来さんの新刊が4月20日(水)に発売されます。  
ピアニスト長嶋未来さんが、もう一つの顔である「作家」として、約1年ぶりに新作を発表されます。少し間があいていたのでちょっと心配していたのですが、サブタイトルを目にすると、今回もまた細密に織り上げられた物語で楽しませてくれそうで、期待が膨らみます。

長嶋さんの作品は、物語(スジ)だけでなく、イギリスやヨーロッパの文化・歴史に精通した情景描写も大きな魅力で、自然で豊かな文章表現が、まるで目の前に物語の舞台があるかのように文物・風景を描きだします。そういえば、前作(前シリーズ)では、脇役が食べるミートパイがあまりにおいしそうだったので、おもわず自分も在日英国人が経営している店で買ってしまった覚えがあります。








の一冊として集英社からの発売です。

2015/7/25  8:01

江戸裕梨さん(TDAC所属)の舞台を観てきました。  
このブログには珍しくダンスの話題です。といっても、個人的には30代前半から京舞に馴染んでいた(人間国宝だった四世井上八千代師に生前何度か拝謁したことがある---といっても話したことはありませんが---のが密かに誇りだったりする)ので、舞踊への関心は決して低くはなかったのです。

今回記事を書く江戸裕梨さんは、日本舞踊ではなく洋舞の世界の人です。同じ学校の後輩だということで接点があり、彼女が(指導者として)所属するトモコダンスアートカンパニーの公演や生徒さんの発表会を、数年前から観に行くようになっていました。

しかし!今やこれは、私の中にあってはたんなる同窓の誼(よしみ)を越えて、むしろ「この人の舞台は観ておかねば」と強く思わせるものとなっています。江戸さんや江戸さんが所属するカンパニーの公演に足を運ぶと、ダンスアートの最先端に、それも非常に高い水準のそれに、接することができるのです。

ピアノリサイタルのチラシよろしく、江戸さんの経歴を紹介すると
・第59回 東京新聞主催 全国舞踊コンクール 現代舞踊第二部 3位
・第61回 同コンクール 現代舞踊ジュニア部 3位
・第17回 こうべ全国洋舞コンクール モダンダンスジュニア2部 2位
・第63回 東京新聞主催 全国舞踊コンクール 現代舞踊ジュニア部 5位
・第20回 こうべ全国舞踊コンクールクラシックジュニア1部 ファイナリスト
・S.C.D.C. in 金沢2008 中村祐子賞受賞
・2014年第8回Passion du Ballet Kyoto モダン&コンテンポラリーの部1位、京都市長賞受賞。
と、年々高い評価を獲得するようになってきています。そして実際に舞台を観ると、まさに「看板に偽りなし」で、芸術的水準の高い舞踊とはどのようなものであるかを、強烈に印象づけてくれるのです。

具体的には、まず、5月に開催されたDance Prism vol.8。これは、江戸さんの(現在の)師匠である今中友子さんが主宰するダンススクールの発表会に、指導助手として参加したもの。クラシックからコンテンポラリーまで、さまざまな踊りが次々と展開する構成でしたが、不思議に全体を通しての連続感を感じるものでした。そしてプログラムを改めて眺めてハッと気がついたのは、「Prism(プリズム)で分解された七色の光は、元は一つの太陽光なんだ!」ということ。このタイトルが付けられた深い意味にようやく気づき、「なるほどなー」といたく感心したのでした。そして、会ったことはないけれども、幼児から成人までをまとめ上げて公演タイトルに収斂する舞台を見事に構成する今中友子さんという人の芸術的感性とリーダーシップには卓越したものがあるなと思ったのでした。

その舞台の中に何度か、生徒さんと一緒に登場した江戸さん、踊りの難度は生徒さんに合わせてあるので、ピアノで言うところの「超絶技巧」的なものはほとんどなかった(と思う)のですが、しかし、シンプルな動きの中にこそ、本当に高い技術を持った人の表現力が際立つものだなと、感嘆しました。幻想的な舞台での腕から指先にかけてのしなやかな動きは、まるでその指先から言葉や物語が紡ぎだされているかのようでした。また、スウィングジャズに乗った踊りでは、後ろ向きでステップを踏んでいるときの背中が、まるで顔のように、表情豊かに語りかけてくるのが印象的でした。そして、ビートの効いた音楽の中にあってなお、体のすみずみの動きがきれいに一つにまとめ上げられているところがすばらしかったです。

ごく最近観たのは、邦楽のパフォーマンスにゲストとして招かれて、太鼓や笛の演奏と、完全に江戸さんに任された舞踊とが共演する舞台。主役である「かわら屋本舗」の人たちは、リーダーの河原崎能弘氏を筆頭に海外での公演実績が多数ある実力者ぞろい。ちょっと話はそれますが、能管や篠笛(と太鼓)を演奏していた滝本ひろ子さんは京都で制作されるテレビ番組や映画の邦楽スタッフとして録音や出演もしている方で、最初に数秒聴いただけで、この笛はすばらしい!と一気に引きこまれてしまいました。色彩感あふれる音色と音吐朗々たる笛の歌いようは、より大型の笛で音響性能に勝るモダンフルートに少しも引けを取らず、また、祭囃子風に演奏する際のステップも軽やかで、とくにその足先がとても美しくて思わず見惚れてしまいました(こういうところに目が行くのは京舞の影響なんやろうなー)。主目的だった江戸さんの舞踊以外にも数多くの感動を得ることのできた演奏会でした。

さて、この演奏会にゲスト出演した江戸さんの踊りですが、前半は民舞「はなおと」を元にしたもの、後半は滝本さんが作曲した「ユーフラテス」という10分にもおよぶ曲に、江戸さんによる完全オリジナルの舞踊を合わせたものでした。前者では、もんぺ姿の田舎娘風の衣装を着た江戸さんが舞台中央に正座したところから始まり、だんだんと大きく複雑な動きになっていきます。クラシックダンスの体の使い方が基礎にあるので、衣装はもんぺでも、体の動きはまるで背骨や関節の一つ一つを意のままにコントロールしているかのような柔らかさと滑らかさで、また、コンテンポラリーダンスのオフバランスによるスピード感や躍動感が加わって回転や跳躍はよりダイナミックなものとなり、踊り手の身体に備わった高度な技巧と表現力が短い時間の中に凝縮されたようなパフォーマンスでした。

後者では、音楽は最初、ピアニシモの淡々と繰り返される演奏から始まりました。プログラムに「ユーフラテス」という題名のみが書かれている初めて聴く曲に、どのようなモチーフを見出すかはなかなか脳に汗をかく作業で、観る者の鑑賞能力を大いに試されているような気分になりましたが、文明発祥の地ということから、(舞踊では)神話的な世界が描かれているのではないかなー、と最終的に思い至りました。

踊りのパフォーマンスでは、片足立ちバランスを維持したままの鮮やかな姿態変換、転倒と紙一重のような重心を崩しながらの躍動など、高難度の表現が散りばめられていましたが、たんに技巧に走っているというのではなく、一つ一つの動きに完結性(やり切れている感じ)があり、前後の動きとのつながりの良さがとても印象的でした。また、時間の流れの中で感じる大きな息遣いと、動きと静止との鮮明な対照が、けっこう尺の長いこの舞台を、メリハリの効いたものにしていたように思えます。

出演者全員が登場してのアンコールでは、音楽・踊りともにほとんど即興的(impromptu)なものだったと思いますが、太鼓や笛との対話感がある身体表現がとても新鮮で、正直なところ、こういう舞台はこれまでに一度も見たことなかったので、記憶の中に色濃く焼き付けられました。

最後に、江戸さんの所属するトモコダンスアートカンパニー(TDAC)からのオーディション情報です。TDACでは、11月14日(土)に公演が予定されている「トモコFANTASIA2015」という舞台に向けて、出演者を募集しているそうです。下にTDACのWebサイトと募集要項のPDFファイルをリンクしておきますので、ご覧の上、興味ご関心があるようでしたならば主催者にお問い合わせください(オーディション実施日が迫っていますのでご注意を)。

→TDACのWebサイトはこちら

→トモコFANTASIA2015の出演者募集要項pdfはこちら(A4で出力できます。)


2015/7/23  1:25

SOUP(スープ)のサロンコンサートがあります。(2015年7月26日@Salon Classic)  
直前になってしまいましたが、今週末の日曜日に声楽アンサンブル「SOUP」(スープ)のサロンコンサートがあります。

昨年12月のクリスマスコンサートがvol.9だったので、今回はvol.10ですか?と尋ねると、「プレ vol.10」の位置づけで、10回記念のコンサートはまた別に企画をしているとのことです。

今回は創設メンバーである、中濱美佐さん(sop.)、竹田奈津さん(pf.)、馬戸香織さん(fl.)の3人による演奏会。会場も、こじんまりとしたサロンです。(といっても、ピアノはNYスタインウェイ!) 創設の原点に戻ったような演奏会になるのかもしれません。

お時間が許される方は、下にリンクしてあるチラシをご参照になり、お運びください。

→チラシのpdfはこちら(A4で出力できます。)


ところで、この演奏会を「後援」している「フロイデ企画」は、細部までしっかりと作り込まれた、演奏会全体を統べる物語性のある、とても完成度の高い演奏会を提供しています。ここに鑑賞日記を書こうと思いつつまだ書けていないのですが、先月にも、SOPUとはまた別のメンバーによる演奏会があって、これまた感心のため息が出るほど細部まで丁寧に作り込まれたもので、音楽会一つを開くことに対して、非常に誠実な姿勢で向き合っていることがひしひしと伝わってきて、深く記憶に刻まれるものでした。

最近は激しく時間に追われていてブログへの記事執筆も滞っている状態ですが、そのすき間を縫ってなんとか聴くことのできた演奏会が、出演者の創作力のみなぎるものであると、ヘロヘロの心と体に大きな元気がもらえるような気がします。

つむぎだされた歌や演奏が心の奥深くでコトリと音を立てる瞬間(これこそが玉響なのかも)に、一つでも多く巡り合いたいものです。

2015/6/13  8:01

フロイデ企画「おしゃべりコンサート〜心に響く世界の名歌〜」を聴いてきました。(2015年6月13日)  
ここのところずっと芸術とは無縁の殺伐とした毎日が続いています。そんな中、久しぶりに残響のある空間で音に包まれるような演奏会に足を運ぶことができました。その場所は、岸和田市の自泉会館。文化庁の登録有形文化財に指定されている歴史ある建物ですが、ただ古いだけではなく、現代のハイテクホールのように計算され尽くされていない自然な残響がとても気持ち良い空間です。最初から横道にそれますが、最新のシミュレーション技術を用いれば、無響室で録音した音にどんなふうにでも響きを後付けできます。前述の「音響を計算し尽くした」ホールで聴いていると、逆説的ですが、まるで高性能な空間系エフェクターで人工的に作り出した音を聞いているような気分になり妙な違和感を覚えることがあります。音というものは、ある程度大雑把で雑味があった方が心に響くのかもしれません。

クリックすると元のサイズで表示します
自泉会館エントランスからホールを見上げる

クリックすると元のサイズで表示します
いつ訪れても完成された美しさを見せるホール内部

クリックすると元のサイズで表示します
客席の窓の外には美しい紫陽花の花が

「おしゃべりコンサート」は、自泉会館のヘビーユーザー?である白原理香さんと、御影の中濱美佐さんが中心になって以前から開催してきた演奏会ですが、「おしゃべり」といっても、思い付きのまとまりのない雑談がセットになっているわけではありません。むしろ、事前にとてもよく準備されていて、進行の細部にまでわたって緻密に構成されたトーク付の演奏会なのです。

本日の演奏会は、お二人を中心とする「フロイデ企画」の主催ということになっていて、同企画のメンバーである歌い手さんが4人参加しました。しかも、女声2(吉野里美さん、齋木慶子さん)+男声2(谷村悟史さん、内山圭介さん)の4声という理想的な顔ぶれで、期待は否応なく高まります。

定刻より5分遅れで始まった演奏会は、まず中濱さんがフロイデ企画について手短に紹介し、続いてオープニングに「世界初のCMソング」だという思わず気持ちが浮き立ってくるフニクリ・フニクラを全員で。1曲目特有の不安定さはあったけれども、聴いて思わず、「これやー、この和声感と残響感、響きにつつまれる感覚、ええなー」とさっそくいい気分です。

最初の「おしゃべり」はバリトンの内山さんでした。その端整な歌声と対照をなす、噺家さんのようなざっくばらんで親しみのある語り口がとても印象的です。その紹介で、2曲目はテノール谷村さんのO sole mio と3曲目ソプラノ吉野さんのNon ti scordar di me を続けて。谷村さん、初めて聴きましたが、ちょっと翳りのあるプロフィール写真とは別人のような明るいキャラクターでびっくり。そして声もイタリアのまばゆい光を髣髴させるものでした。すでに何度も聴いたことのある吉野さんは、軽い方のソプラノを標榜してはいますが、なかなかどうして、男女の別れに際しての深い情感がひたひたと染みてくる演奏でした。

続く白原さんのピアノソロ「仔犬のワルツ」を紹介する吉野さんのトークですが、楽曲分析的な聴きどころを一点、ピンポイントで紹介したところが印象的でした。白原さんの演奏自体は、手になじんだ名曲とはいえ、決して弾き崩すことなく、しかし白原さんらしい音色と息遣いはしっかりと表現されたものでした。

ところで、この日のピアノ伴奏はすべて白原さんの担当でした。最後まで聴いて感心したのは、プログラムにはそのタイトル通り「世界の名歌」が散りばめられていて、アンコールにはなんと日本のフォークソング(「民謡」という意味ではありません)の名曲まで含まれていたのですが、それらのどの曲にあっても、それぞれの作品の持つ特有の空気感や肌触りそして質量感が、生々しく再現されていたことです。話は跳びますが、とくに最後の(アンコールの)フォークソング、白原さんはリアルタイムに聴いていた世代ではないと思うのですが、ギリギリでリアルタイム世代の私が聴いても、「なんか若いのが楽譜だけ見て余興で弾いとるなー」といった残念感がまったくなく、オリジナルとは異なるピアノアレンジだったのですが、不覚にも心に熱いものがこみ上げてくるほどでした。

4曲目のロッシーニ作曲、「猫の二重唱」。これを普通に歌うだけならばそんなことはやめた方が良いとさえいえる曲ですが、定番の「ネコ耳」演出だけでなく、この曲そのものの解釈が吉野さんと齋木さんのオリジナルで、第3の登場人物(猫物?)もあったりで内容が面白すぎ。ネタばれになるので具体的には書きませんが、人生経験を重ねた人ほどそこに表現されている「シャレにならへん」メッセージが心に突き刺さったことでしょう。

5、6曲目は菩提樹(内山さん)、わが母の教え給いし歌(齋木さん)、と定番の歌曲を2曲、それぞれ解説付きでの演奏。歌はもちろんすばらしいわけですが、たんにその曲を歌うのではなく、それが収められた歌曲集全体の解題もなされることで、聴いていてより多くのものを受け取ることができますな。こういう「おしゃべり」はとても意味のあるものです。

第 I 部の最後は、日本の夏の曲メドレーでした。義務教育の音楽の授業で習った曲も多かったですが、ハッキリ言って、小中学校の音楽の授業で耳にした模範歌唱&伴奏とは芸術的な水準がぜんぜん違います。声楽の専門家が4声で歌い、ピアノの専門家が伴奏をすると、こんなにも作品の値打ちが違ってくるものなんだなー、と感動しました。最後の「椰子の実」、前半のしめくくりにふさわしい名曲の名演でした。


休憩後の第II部は、まず白原さんのピアノソロで幕開け。ショパンの幻想即興曲でした。以前からポーランドの俊英リシェツキの薫陶を得ているだけあって、作品の解釈や息遣いに迷いがなく、安心してピアニストが演奏を通して伝えたいことに耳を傾けることができました。

2曲目以降は最後まで、オペラやミュージカルからのアリア集。それぞれ、どのようなオペラのどのようなシーンで歌われるものなのかを簡潔かつ平易に解説してからの演奏でした。で、こういう肩の力の抜けた演奏会での解説なんて「説明するまでもなく知っとるワ」と高を括りがちですが、どっこい、なじみの曲に新たな発見があったりしてびっくりしました。その一番は「庭の千草」(邦訳題名、歌は齋木さん)です。アイリッシュ音楽大好きの私なのでアイルランド民謡が原曲であることは知っていたけれど、オペラ「マルタ」の名シーンで歌われた曲だというのは解説で初めて知りました。これに喚起されてあとでちょっと調べてみると、原題名はThe Last Rose of Summer で、花は白菊じゃなくて薔薇だし、さらに歌詞の内容は邦訳に比べて思いっきり深く、たんに邦訳の過程で薔薇が白菊に置き換えられただけではない大きな違いが両者の歌詞の間にはあることを知り、この作品についての理解が非常に深まりました。

後半がオペラアリア中心ということで、「おしゃべり」のメインディッシュ的に、吉野さんによるSATBの声種の違いについてのワンポイント・レッスンがありました。それぞれの声種に「なろうと思ってなれるようなものなのではない」、声種と劇中での配役とは密接に関連しており、同じソプラノでも軽い声の歌い手は「どんなに歳をとっても少女の役」、と予備知識が無くても直感的・具体的にわかりやすい解説。こういう解説というものは、専門用語をいかに普通の用語に置き換えて、しかも本質を損なうことなく伝えることができるか、ということがとても大事なのです。その観点から、最若手のテノール谷村さんには、経験豊富なお姉さまからトーク中に(準備段階での)厳しーいダメ出しが暴露されて客席が沸いていましたが、すぐれた模範に接することができる演奏会の中で経験を重ねてゆくにつれて、彼も立派な「おしゃべり」に成長していくことでしょう。

プログラムが綿密に練られているからなのか、歌い手の声の調子が上がってくるからなのか、はたまた十分な振動エネルギーを与えられてピアノが目覚めてくるからなのかわかりませんが、というかおそらくそのすべてが作用しての結果だと思いますが、後半の演奏が進むにつれて「いい音楽を聴いてるなー」という充実感に心が満たされてきました。クラシックの演奏会にJAZZの言葉を使うのもどうかと思うけれど、この感覚を一言で表現するならば、「groove」という言葉がぴったりであるように思えます。

「メリーウィドウワルツ」→「踊り明かそう」→「マリア」→「トゥナイト」ときて、プログラム最後の曲はオペラ椿姫より「乾杯の歌」。出演者全員での演奏でした。4人揃うとまるで大人数の合唱と同じような厚い響きになり、高揚感の頂点を極めて所定のプログラムが締めくくられました。

アンコールに用意されていたのは、すでに書いたように、日本のフォークソングの名曲でした。クラシックの演奏会でフォークソング、しかも日本の歌手なんて、とまゆをひそめる方もあるかもしれませんが、個人的には、欧米の有名な歌曲でも、その歌詞を詳細に読み解いてみると結構しょーもないことや時代錯誤的で独りよがりな内容であることが少なくなく、この曲にメロディがなくて歌詞だけ読んだらぜんぜん感動せーへんな、メロディと伴奏がすべてやな、と思うことさえあります(言いたい放題でスミマセン)。対して、日本のポピュラーソングでもその歌詞の意味がとても深く、自称「詩人」の詩集なんかよりよっぽど心の奥底に届くものがあります。クラシックは高尚でポピュラーソングは低俗だというような先入観あるいは固定観念にとらわれずに鑑賞すると、詞・曲ともに非常にすばらしい作品がたくさんあるのです。

で、この日のアンコール曲、その日本フォークソングを4声の重唱にアレンジしての演奏。伴奏は伴奏技術の懐が深いピアニストが、弾き込まれてよく枯れたフルコンサートピアノで演奏。会場は自然な残響が豊かな歴史的建築物。なんとも贅沢な1曲でした。

終演後は、出演者のみなさんと少しずつお話をして会場を出た後、せっかくの久しぶりのオフなので、しかも魅力ある城下町の岸和田に来ているので、最短距離で駅まで戻って帰路につくのではなく、城下町の路地をあてどもなくさまよって探索し、地元のおもしろい光景などを楽しんでから南海電車に乗り込みました。

クリックすると元のサイズで表示します
城見橋筋商店街(通称「闇市」)のショーケースの中では、テディベアも法被着用。襟にはちゃんと「宮本町」と染め抜かれています。このテディベアに着せるためだけに特注したのかもしれません。

クリックすると元のサイズで表示します
同じく「闇市」の餅屋さん。間口がガランとしているのは、改装中で店内の機械の出し入れなどをしていたからです。

クリックすると元のサイズで表示します
種類の違う3種類の和菓子を購入。この中ではよもぎ団子が美味でした。さすが餅屋さんだけあって、団子の食感が秀逸です。これを食べた後、にわかに京都の観光地で売っている「茶団子」に対して怒りが込み上げてきました。(^^;)

クリックすると元のサイズで表示します
岸和田銘菓といえばこれ、「時雨餅」(しぐれもち)別称「村雨」(むらさめ)。複数の和菓子屋さんで製造されていますが、地元のピアニストさんが一押しなのがこれ。1竿ずつでも買えますが、3竿セットで買うと、包装紙の収まりがよく、見た目が美しいです。

クリックすると元のサイズで表示します
鯛焼きファン垂涎の「天然もの」の鯛焼き。南海岸和田駅からアーケードに入ってすぐのところにあります。私の普段の行動範囲で「天然もの」を売っているのはここだけしか知りません。「養殖もの」の鯛焼きしか知らなかった私にとっては、なかなかのカルチャーショックでした。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します
アーケードの中に突如現れる謎の店「まはろ。」(ハワイの言葉で「ありがとう」) 正面にはドナルドダックの首だけが飾られています。意を決して聞き込み調査をしてみると、なんと、ディズニーな店でもハワイアンな店でもなく、「バリバリのだんじりマンが経営している居酒屋」なんだそうです。これで一件落着といきたいところでしたが、アーケードから横道に入ったところでさらに謎が深まる店に遭遇することになります。

クリックすると元のサイズで表示します
「鉄板居酒屋」と書かれていますが、壁にはだんじりの絵と「そーりゃ」の掛け声(ローマ字)、さらに、ウクレレとハイビスカスの絵も。壁をぶち抜いてまで作ったショーウィンドウの中にはサーフィンボードも飾られています。当地では、だんじりマン・居酒屋・ハワイというのは三位一体の存在なのでしょうか?

クリックすると元のサイズで表示します
アーケードの中でおそらく一番繁盛している喫茶店「和蘭豆」(ランズ)。シティホテルのバーテンダーを彷彿とする蝶ネクタイにベスト姿のマスターとにこやかな奥さんが迎えてくれますが、客層は実に幅広く、地元の人たちに愛されている店だということがわかります。ここのオリジナルロールケーキ「ノア・ロール」は岸和田を訪れるたびに食べる価値があります。岸和田のブランド卵で作ったしっとり濃密なスポンジ生地で、キャラメリゼしたクルミ(だから「ノア」)が入ったクレームシャンティが巻かれています。最近多くなっている、シャポシャポのクリームを伊達巻(寿司)にしたようなロールケーキがあまり好みではない筆者には、「ロールケーキはこうでなくちゃ」と思わせる逸品です。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します
最後は、アーケード(商店街)の裏にある街並みの写真をば。上の写真:「超長屋」と言ってもいいようなこの建物を見たときには本当に驚きました。城下町ですので、外敵の侵入を防ぐための地割になっていたのでしょう。また、裏道は下の写真のように、人一人がようやく通り抜けることができるような路地が迷路のように入り組んでいます。京都の裏路地を探索するのはツウの楽しみですが、岸和田でも同じ楽しみがありそうです。
この裏路地では、岸和田名物「がっちょ」と「かしみん焼」を食べさせてくれるお店をついに見つけました。この日は入れなかったけれど、今後の大きな楽しみです。

2015/3/18  23:28

長嶋未来さんの新刊が3月20日(金)に発売されます。  
以前にもお知らせしていた長嶋未来さんの新刊は、3月20日(金)の発売です。
前作は神戸三宮のジュンク堂で、長い間、全6巻平積みで売られていたほどの人気でした。
芸能人がメディアで宣伝しまくって売っているような本でもないのにこの売れ行き。マーケティングではなく実質が評価されての結果だと言えるでしょう。
管理人kumaも、大手書店で当該文庫が並ぶ棚を確認して準備万端であります。

再度お知らせしておきます。








の第3弾として集英社からの発売、定価637円です。

2015/1/22  1:48

阪神淡路大震災 20年後の震源地をのぞむ  
少し遅れてしまいましたが、1月17日は明石生まれの筆者には特別の日でした。
仕事の日程がギチギチに立て込んでいる中ではありましたが、この日だけは時間を確保して、震源地である淡路島北端をのぞむ明石港まで足を運びました、というか帰郷しました。

震源である野島断層の直上には江崎灯台があり、20年前の6月、未曽有の大災害の源をこの目で確かめておかねばとこの灯台を訪ね、その後、夕暮れ迫る明石海峡を、連絡船の上からこの灯台を眺めながら明石港へ帰ってきた記憶があります。

まずは、震災後20年を経た明石海峡の様子です。周囲が薄暗くなってきた夕方5時過ぎに灯台に明かりが灯り(明暗センサーによる自動点灯とのこと)、およそ4キロメートルの距離を隔てた対岸の明石からも灯台の所在が確かめやすくなります。白と赤の灯がゆっくりと回る様子を目にすると、20年前に見た現地の惨状を思い起こして、深く身に沁みて感じるものがありました。

クリックすると元のサイズで表示します

そして明石港。淡路島には雲がかかっていたけれども、播磨灘方向は晴れ渡っていて、厚い大気に濾された茜色の水平線から、天頂の深い藍青色へのグラデーション、そして連絡船が出航した名残の大きな波紋がじつに美しい。震災の朝は西の空に赤い満月が沈もうとしていたことを覚えているけれども、その日の夕方はどんな天気だったかな、覚えていないな、などと考えながら、しばし立ち尽くしていました。

クリックすると元のサイズで表示します

さて、その20年前の6月を象徴する1枚から。当時はまだ明石海峡大橋は完成しておらず、本州側の主塔の下に橋げたが1つだけ吊るされた状況でした。その景色を淡路島松帆の浦から望むとこんな感じ↓になります。

クリックすると元のサイズで表示します

明石海峡にはほとんどカラス並みに多く飛んでいる鳶(とんび)と近年運行を休止した「たこフェリー」のあさかぜ丸(船体塗替え前)が写っています。背景の山は須磨の鉢伏山ですね。淡路島から眺めるととても印象的な姿です。そして、同じ場所から播磨灘方向を眺めると、景色は一変。一面が海原となります。こちらに向かってさらに海岸沿いを歩いていくとそこが震源地の野島江崎です。

クリックすると元のサイズで表示します

灯台下のバス停付近の様子。震災から半年が過ぎようというのにこの状態。阪神間では建物が倒れたり傾いたりしていたのに対し、震源地では大地が引き裂かれている! 子供のころから地学・天文学への関心は人一倍高かったけれど、地球の持つとてつもなく大きな力を目の当たりにしたのは、この時が初めてでした。

クリックすると元のサイズで表示します

そして、灯台が鎮座する山を見上げれば…。断層に沿って灯台の敷地の真下まで大規模な地割れが発生し、山腹の崩壊による被害を食い止めるために緊急治山工事が行われていました。写真では小さすぎてわからないかもしれませんが、この山肌にヘルメットをかぶった職人さんたちが張り付いて、縦横にワイヤーとネットを張り、コンクリートで固める工事をしているのです。(なお、写真右手に見えるのは、この山の上に江崎灯台があることを示すオブジェクトで、これ自体が江崎灯台なのではありません。)

クリックすると元のサイズで表示します

後で写真を載せる、灯台への急な階段を上って行くと、工事現場に入る横道があり、そこで一人の作業員さんが休憩していました。私がどんな経緯でここに来たのかといったことを話すと、「トラロープ(=工事用の黄色と黒の縞模様のロープ)を伝って近くまで行って見てきな」と、結構寛大に現場を見せてくれました。そして、その職人さんが長崎から応援に来ていること、また、(周囲には何もないところだけれど)明石海峡は船の往来が多くて仕事をしていても飽きることがないこと、などを素朴な語り口で話してくれたことを20年後の今でもくっきりと覚えています。私たちの災害のために、遠く長崎から技術を持った人たちが助けに来てくれているのだと思うと、理屈抜きに心がじーんとしました。

クリックすると元のサイズで表示します
寄った写真で見ると、灯台の敷地境界の石垣の下まで地割れが及んでいたことがわかります。

地割れした山腹と「灯台への急な階段」の位置関係は下の写真のようになります。阪神淡路大震災を象徴する光景としていろいろなところで目にすることの多い「断層で横ずれした階段」ですが、この当時はまだ応急処置をしただけの状態で放置されていました。

クリックすると元のサイズで表示します

実際に上りはじめると神社の石段どころの話ではない、barrier-freeならぬbarrier-fullな、階段を這うようにして灯台に向かい、「横ずれ」部分を越えて上から見下ろすと…

クリックすると元のサイズで表示します

ここが野島断層の淡路島最北端部分です。途中で引きちぎられるようにずれた敷石と地割れは、約2年後に震災を後世に伝えるためにカラー舗装されて整備されることになるのですが、1995年6月時点では、ブルーシートとゴミ袋のような黒ビニールで覆われているだけです。そしてこの地割れは前述のとおり階段の左右(西東)にもずっと続いているのでした。(それにしても、上から見下ろすと、海に転げ落ちていくかのような階段の角度です。)

(続く)

2014/12/30  23:14

SOUP(スープ) vol.9 クリスマスコンサートを聴いてきました。(2014年12月13日)  
大晦日になってクリスマスのこと書くかぁ〜、というツッコミが聞こえてきそうですが、どんなに遅れても記録に残しておきたい演奏会というものはあるもので、そういうjournal的な意義付けでこのコンサートについて記事を上げておこうと思います。(於:日本福音ルーテル西宮教会)

「vol.9」という数字からわかるように、声楽アンサンブルユニットSOUPの演奏会は今回が9回目です。中濱美佐さん、竹田奈津さん、馬戸香織さんというオリジナルメンバーを維持しつつ、毎回きちんとしたテーマ設定と、充実した構成・演出でこれだけ回を重ねてきているというのはなかなか稀有なことだと思います。それぞれSOUP以外でも演奏活動はされているわけですが、このユニットでの演奏会に固有の価値を感じているからこそ、これだけの回数を重ねてくることができたのでしょう。

クリックすると元のサイズで表示します
「クリスマスは教会へ」。SOUPのポスターは右端です。

さて、今回の演奏会は、冬の定番であるクリスマスコンサートでした。会場としてキリスト教会を借りることができるということからもわかるように、内容は俗なお祭り騒ぎではなく、(今回も)敬虔な空気に満ち溢れたものでした。教会の掲示板には「クリスマスは教会へ」と書かれたポスターが貼られていましたが、今日のような催しに足を運ぶと、クリスマスの本来の過ごし方はどうあるべきかということが自然に体に染み透ってくるように思えます。(ま、私自身がキリスト教主義の学校で学んできているということもありますが…)

クリックすると元のサイズで表示します
阪神電車から見た六甲の山並みと冬の空。

当日の天気は時々雲は出るものの、冬らしい晴天で、香櫨園駅で下車して眺める夙川の常緑樹も、青空を背景にして映えていました。会場の西宮ルーテル教会は、シンプルだけれどもセンスのよい飾りつけで、聖夜が近いことを静かに語っていました。

クリックすると元のサイズで表示します
この日の夙川べり。変わらぬ美しさがあります。

教会に入り、プログラムをもらって詳細を確認します。演奏会は二部にわかれており、前半が本日の出演者の一人一人がfeatureされたミニリサイタル、後半はいわゆる「クリスマスソング」を中心にして13曲が用意されていました。プログラムのほかに、この「ミニリサイタル」で演奏される曲についてのけっこう詳しいプログラムノートも別紙で用意されていました。プログラム本誌はコピーではないきちんとしたカラー印刷物で、ある程度の時間をかけて計画的に準備されたものであることがわかります。こういった点はSOUPの演奏会にぬかりがありません。

クリックすると元のサイズで表示します
舞台の様子。ただし、終演後の撮影なので片付けモードに入っています。

一番手は竹田さんのピアノソロ。ドビュッシーのベルガマスク組曲から「プレリュード」「月の光」「パスピエ」でした。以前からこの教会のピアノの音はいいなーと思っていましたが、それを再認識させてくれる演奏。印象主義の作品が持つ独特の響きと空気感が会場に満ち、ピアノの銘柄(ヤマハ)やサイズ(最小グランド)をまったく感じさせないものでした。竹田さんは、今風に言えばクラシックとJAZZの「二刀流」プレーヤーなのですが、クラシックの「一刀流」?プレーヤーに勝るとも劣らぬ、すばらしいドビュッシーでした。

次は中濱さんの独唱。白原さんは、中濱さんと次の齋木さんという、いずれも共演歴の長い二人のソプラノさんを安心感のある伴奏で支えました。

で、中濱さんが演奏したのがペーター・コルネリウス(Peter Cornelius)の「クリスマスの歌」(Weinachtslieder)からの3曲。クリスマスツリー(Christbaum)、羊飼い(Die Hirten)、シメオン(Simeon)でした。演奏前の解説トークとプログラムノート(この曲だけで500字近くも書かれていた!)によると、コルネリウスはドイツの作曲家で、この作品は日本ではあまり知られていないけれどヨーロッパではかなりよく演奏されているとのことでした。また歌詞は聖書の言葉をもとにコルネリウス自身が書いたものだとのこと。


参考までに。「クリスマスの歌」より「3人の王」
イギリスケンブリッジでのクリスマスです。
この曲はこの日の演奏会にはプログラムされていません。

私自身、作品どころか作曲家の存在自体を知らなかったのですが、実際に演奏されるのを聴いてみると、伴奏も含めてまさに「静かで心にしみるような美しさ」(プログラムノートより)を感じる作品で、今日の演奏会でこの作品に出会えたことは大いなる幸運だったと思いました。クリスマスにこんなにいい曲があったんだ、と感嘆するのと同時に、こういう隠れた名曲を発掘?し、誰かのお手本がそこいらに転がっているようなことがない状況で(GoogleやYouTubeやで検索しても、国内の資料はほとんどヒットしません)、ほぼ独力で自分のレパートリーにまで仕上げてくるというのは並大抵のことではないなーと、より充実した演奏会の実現に努力を惜しまぬ姿勢に感動すら覚えました。

ところで3曲目にプログラムされた「シメオン」というのは聖書に登場する人名なのですが、これが実は、かの軍師官兵衛こと黒田如水の洗礼名と同じなのですな。「Simeon Josui」と彫られた印鑑も残っているようです。大河ドラマがクライマックスを迎えた12月に、なかなか印象深い偶然でした。

三番手は齋木さんの独唱で、シューマンの著名な歌曲から3曲。「献呈」「蓮の花」「お前、私の指の指輪よ」でした。「献呈」はご存じのように後奏にアヴェマリアの旋律がでてきます。うまく曲を選んでいるなー、という感じです。演奏そのものは、期待通りの安定した歌唱でした。

前半最後が馬戸さんのフルート独奏で、ピアノ伴奏は竹田さん。曲は昨年亡くなったデュティーユ作曲の「ソナチネ」でした。解説トークでは、毎回、フルート音楽史および作品解題があってとても勉強になります。ここで覚えた曲を他の演奏会で聴き、より深く鑑賞できるという学習効果がかなりあります。現代曲に頻出の特殊奏法に加えて第1楽章は変拍子(と表現していいのかな?)。JAZZに造詣の深い竹田さんの本領発揮で、笛とピアノで織りなす独特の揺れ感がなかなか印象的でした。疾走する第3楽章を聴いていると、毎度のことなのだけれども、この高速フィンガリングでよく一つ一つの音がきちんと粒立ちよく出るものだなー、とちょこっと横笛を吹いてみたりすることもある身としては、魔法を目にしているかのような思いがします。

休憩時間には、SOUPの今回を含め全9回の演奏会+番外クリスマスコンサート1回のチラシの展示を見る機会がありました。毎回が力作であるチラシが10回分時系列で展示されると、なかなか壮観です。私は第3回から聴き始めたので、それ以前のチラシを見て、「第1回はこんなふうにして始まったんだー」と感慨深いものがありました。

クリックすると元のサイズで表示します
今回と番外分1回を含めて過去10回分のチラシたち。

後半は、最初に「もろびとこぞりて」をピアノと声とフルートで演奏した後、最後まで中濱さんが解説と進行を担当しました。個人的に久しぶりに聴く「中濱トーン」の司会は、その柔らかな語り口の魅力だけでなく、2曲ずつ行われた解説トークの内容充実度も際立っていて、作品の背景やエピソードについて、この日だけでかなりの物知りになりました。いやー、ただ演奏するだけでなく、本当によく準備のされた演奏会だと思います。

演奏で印象に残ったのは、まず、小さなお客さんたちを意識した?ディズニーナンバーからアラン・メンケン作曲の2作品「Whole new world」と「カラーオブザウィンド」。歌は中濱さん齋木さん、ピアノは白原さんでした。日頃高度な技巧が要求される作品に取り組んでいる声楽家さんがポピュラーな曲を歌うと、トレーニングを重ねた声楽家の圧倒的な表現力を再認識します。とくに、歌詞のメッセージ性の高い後者(「カラーオブザウィンド」)は、ピアノ伴奏でも弱奏を極める深い表現があり、作品と歌と伴奏が三位一体になった、「アニメの歌」と侮ることのできない、なかなか聴きごたえのあるものでした。

竹田さんのJAZZピアノは、今回も大きな存在感を示しました。とくに、馬戸さんのフルートとからむと最高で、ブルース・スタッフ編曲による「Amazing grace」を聴いていると、完全にJAZZの語法で表現されていて、よくある、クラシックのアーティストが余興でJAZZっぽく演ってみました、というのとは明らかに一線を画しています。この曲に続けて演奏されたピアノソロ「Let it snow」は四分弾きのスウィング感と軽やかなメロディラインがこれまた最高。弾き終わった後、一礼するときの満面の笑顔は、会心の演奏であったことを物語っているように見えました。

プログラムの最後には、クリスマスの定番曲や教会由来の伝統曲が4曲並びました。「The Christmas song」「O holy night」「Jingle Bells」「The first Noel」。2曲目は原題「クリスマスの讃美歌」で聖歌集239「清らに星すむ今宵」、4曲目は讃美歌103番「牧人羊を」として知られているものですね。3曲目も実はポップスではなく教会由来の古い曲だと聞いて驚きました。締めくくりの「The first Noel」は、フルートも加わった中濱さんと齋木さんの神々しい重唱で歌い上げられ、この日一番ともいえる和声の美しさにとっぷりと浸りました。

このあと、「きよしこの夜」と「赤鼻のトナカイ」を皆で斉唱、おしまいに、いつものように竹田さんの軽快なピアノ演奏に乗せて子供たちへのクリスマスプレゼントがありました。今年は、銀色のブーツに入ったお菓子でした。(上のクリスマスツリーの写真を参照)

クリックすると元のサイズで表示します
終演後の見送り。幅広い年代の人が集まった演奏会でした。
クリックすると元のサイズで表示します
終演後、早くも日が暮れた闇に映える教会のクリスマスオーナメント。
夙川の夜は静かに更けていきました。

2014/11/30  1:27

西宮ルーテル教会でSOUP(スープ)のクリスマスコンサートがあります。(2014年12月13日)  
いよいよ12月となりますが、2週間後の13日(土)に西宮のルーテル教会(正式名称:日本福音ルーテル西宮教会)で、拙ブログではおなじみの声楽アンサンブル「SOUP(スープ)」のクリスマスコンサートがあります。

以前の記事でも書いていますが、この会場は普段は礼拝が行われている正真正銘のキリスト教会なのですが、音楽的な条件が非常によく、ピアノも古いながらもよく管理されていて、都会のビルの中にある建築条件の厳しいサロンなどよりよほど気持ちよく音楽に包まれることができます。そして何よりも大切なことは、暖かい気持ちをもった老若男女に囲まれて行われる音楽会には、たんに技巧だけでは語れない、とても大切なものが満ち溢れているということです。

キリスト教会の行事ですからもちろん幼い子供も来ます。でも、幼児教育に携わってきたメンバーがいるだけあって、最初から最後までずっと「お利口さん」でいられるとも限らない彼らをうまく包み込んで、終わってみればよい思い出だけが残るから不思議なものです。

メンバーについては、今回(Vol.9)は、中濱美佐さん・馬戸香織さん・竹田奈津さんのオリジナルメンバーに加えて、ソプラノの齋木慶子さんとピアノの白原理香さんが参加されます。かなり以前のことになりますが、私が齋木さんの歌を初めて聴いたとき、この人にメサイアでアルトを歌ってほしいと思ったことがあります。ソプラノを標榜していますが、低域まで存在感が痩せることのない慈しみ深い声には、ほれぼれとするものがあります。また、白原さんのピアノは、竹田奈津さんのピアノとは持ち味が違いますので、お二人がどのように演奏を分担されるのかも興味津々です。

交通至便かつ周辺環境も抜群の会場です。お時間が許される方はぜひお訪ねください。

→チラシのpdfはこちら(A4で出力できます。)

2014/11/3  0:06

田中正也さんによるポーランド作品の演奏会があります。(2014年11月8日)  
由緒ある、日ポ・サロン国際交流ポーランド留学生支援事業(駐日ポーランド共和国大使館後援)として、田中正也さんのリサイタルが行われます。場所は梅田のど真ん中(梅田新道・南東角)、ザ・フェニックスホールです。

演奏予定曲目は、当然ポーランドの作曲家による作品が並びますが、田中正也さんは、その経歴が示すように、ロシア・東欧の作品に関しては非常に造詣が深く、初めて聴く作品でも、その作品を通して作曲家が伝えたいことが、聴き手の心のなかに、まるで砂に染み入る水のように入ってきます。プログラムの中にはこれまでに一度も聴いたことのない作曲家の名前もあるのだけれど、むしろそれを田中正也さんの演奏で聴けることこそが楽しみ!とさえ思えます。(ショパン作品はもちろんたっぷりありますのでご心配なく。)

気候のよいこの時期、演奏会は各地で目白押しですが、「コンサートにでも行こか?」ではなく「このコンサートは聴いておきたい!」と思わせる、田中正也さんのリサイタルです。

→田中正也さんの公式Webサイト内コンサート情報ページへ


ところで、少し前の話になりますが、7月の末に名古屋で田中さんのピアノセミナーを聴講しました。これまでの人生の半分近くをロシアで過ごしている田中さんなので、はたして日本語で上手にレクチャーできるのかな?と、内心かなり失礼な懸念を抱きつつの拝聴だったのですが、これは大いなる杞憂でした。

レクチャーとしての基本的な構成がしっかりしていることは言うまでもなく、練習曲と作品に共通する演奏技術の関係、作品を解釈・演奏する上での重要点、さらには、休符の音楽的な演奏の仕方(!)といった、深遠なテーマまで、実に盛りだくさんの内容で、しかもすべて田中さん自身が自分で演奏して解説をしてくれるという、ほんとうに至れりの尽くせりのセミナーでした。おかげで、音楽を職業にしているわけではない私も、このセミナーで取り上げられた作品については、その聴き所が非常によくわかるようになりました。

田中さんの公式Webサイトにはその都度、セミナーの開催情報が掲載されると思いますので、関心のある方は、ぜひ一度足をお運びになってください。




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ