胸の手術について記載  

卯一郎  先生、家内には、なんにもおつしやらないで下さい。危いですか。
松原  なに、決して、そんな御心配はありません。たゞ、手当について……。
卯一郎  手当と申しますと……。
松原  いろいろありますが、先づ、差当り、心臓を冷やしていたゞきませう。それから、足の方に湯タンポを入れて……。
卯一郎  なるほど、湯タンポぐらゐなら、かまひますまい……。
松原  注射はおいやですか。一本、念のためにやつときたいですな。
0

(無題)  

後ろはどうなっているか、阿Qには見えなかった。しかし突然感じたのは、こいつはいけねえ、首を斬られるんじゃねえか。
 彼はそう思うと心が顛倒して二つの眼が暗くなり、耳朶の中がガーンとした。気絶をしたようでもあったが、しかし全く気を失ったわけではない。ある時は慌てたが、ある時はまたかえって落著いた。彼は考えているうちに、人間の世の中はもともとこんなもんで、時に依ると首を斬られなければならないこともあるかもしれない、と感じたらしかった。
 彼はまた見覚えのある路を見た。そこで少々変に思った。なぜお仕置に行かないのか。彼は自分が引廻しになって皆に見せしめられているのを知らなかった。
0




AutoPage最新お知らせ