第3部 第81話 自分を磨いていくこと  

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私はこれまで、ケイのことを想い続け、つらいときには優に相談に乗ってもらっていました。
それに、ハルとの出会いと別れの経緯についても、優に話したことがありました。
掲示版で初めて優の書いた文章を読んだときに、ハルの文章にあまりにも似ていたから、黙って通り過ぎることが出来なかったこと・・・。
ハルがもう一度私の前に現われてくれたような、懐かしさと愛しさを感じていたこと・・・。
でも、時間が経つにつれて、私の中でハルと優とは全く違う人なんだと思えるようになってきたことも、電話での会話の中で打ち明けていたのです。
どちらも相手の心変わりによるもので、自分のほうから離れていったわけではないにしろ、私は2年足らずという短い期間の中で、2人の男性を想っていたことになります。
そんな私が、この先、優を好きになることがあったとしたら、優は一体どう思うのだろう?
「この先、私が優を好きになることがあっても、いいですか?」
メールにそう書き記した私は、優の返事が来るまで、長い1日を過ごしていました。

夜になって、いつものおやすみメールが届いたとき、私は胸がドキドキするのを感じながら、待ちわびた返事が書かれているメールを開くと、そこには短くこう書かれていました。
「しおんに好きになってもらえる男になるように、仕事にそして自分を磨いていくことに、頑張るよ。」
私の問いかけに対して、好きになってもいいか悪いかという答え方ではなく、好きになってもらえるように頑張ると、言ってくれた優の謙虚ともいえる心を、私は嬉しいと思いました。
私もまた、優に好きになってもらうために、自分を磨いていかなくてはいけない・・・。
でも、ありのままの私も好きになってほしい・・・。
そんな思いを感じていたのです。

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今このストーリーは、夫である英治の数々の悪行ですでに夫婦関係は壊れていて、彼女がネットの世界に心のよりどころを求めていき、そこでの出逢いを書いています。
振り返ってみると、2003年12月にハルと出逢い、わずか4ヵ月も持たずに2004年4月に別れ、5月にはケイと知り合い、翌2005年の2月に初めてケイと逢うも、その後関係がぎくしゃくし、そして今度は優と出逢い、今2005年秋。

前回も書きましたが、男にかまってもらわないと生きていけない彼女は、少しばかり優しくされると、すぐに心を奪われ、簡単に恋だの好きだの思ってしまいます。
そんな軽い彼女に対し、男のほうはそんなに簡単に不倫のようなことはできません。
(不倫が発覚して責任を取らされるのは、いつも男のほうですから・・・。)
彼女の思いを知れば知るほど、この女とつきあうと面倒なことになると思うのでしょう。
最初のハルも、次のケイも、最終的に男の方が振った悪者になっていますが、実際は彼女につきあいきれなくなったからでしょう。

そして、今回の優も、良いとも悪いとも言わずに、何とも巧みな言い方の返事です。
自分の責任を回避しつつ、彼女を傷つけないように、それでいて前向きな言葉で・・・。
やはり優は、女性の扱いに慣れた男です。
一方、彼女も「魔性の女」ですから、彼女の告白により付き合いが本格的に始まり、これから二人の駆け引きが見ものになります。
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第3部 第80話 引越しの日  

いよいよ優の引越しの日・・・

午後になって、全ての作業を終えた優から届いたメールを読んだ私は、とうとう優が実家へ帰るときが来たことを、悟ることになったのです。
単身赴任のときにも、私達が逢える見込みなど全くといっていいほどなかったけれど、これでますますその可能性がなくなってしまったことを、感じていました。
でも、それはそれで良いのかもしれない。。。

私はこれまで、ネットの世界で、奇跡ともいえる出会いをして来ました。

ハルと出会い、初めて芽生えた不思議な想い・・・。
そしてどうしようも出来ない別れの辛さを知り、苦しみの中にいるときにケイと出会い、心を通わせることが出来たおかげで、私の心にある辛さも苦しさも、いつの間にか全部思い出に変えることが出来た・・・。
そんなケイの気持ちもあっという間に見えなくなって、ずっと苦しんでいるときに、
今度は優に出会った・・・。
ハルにもケイにも、逢う機会はあったけれど、手を繋ぐこともなかったからこそ、
こうしていい想い出になっているのかもしれない・・・。
きっと、優とは逢えないからこそ、気持ちだけで繋がっているからこそ、どこか安心
できているのかもしれない・・・。
お互いが結婚をしているという事実を目の当たりにすると、やはり私は、どこか臆病になってしまうのです。

夜になって、優から、実家に着いたというメールが届きました。
変わってしまった優を取り巻く環境・・・。
それが影響して、後々、私達の距離は微妙に変わって行くことになるのです。
そしてやがては、声を聴くことさえ出来ない状態が続いて行くのです。

優と私の1日のメールのやり取りは、朝起きたときに優から来るおはようメール、
私の日中のメール、そして優からのおやすみメール、私からのおやすみメール・・・。
その他に、電話で話せるときには、優からの確認メール、それに対する私の返事メール・・・。
優の仕事が休みの日にはメールもお休み・・・。
だいたいがこのパターンでした。

優が転勤したばかりの頃は、私に電話をくれることが、週に一度くらいはありました。
しかし、そんな数少ない機会だというのに、私のほうが、電話を受けられる状態にはなくて、メールが来ていることに気付かなかったり、気付いた場合でも周囲に家族がいるときだったりして、泣く泣くあきらめたことも何度かありました。
優からの電話は、いつも仕事中だったり、飲み会の途中で抜け出したときや家に帰る途中だったので、あまり長くは話せないのですが、それでも電話をくれることがとても嬉しかったし、心が癒される時間でもあったのです。

しかし、そんな状態は1ヶ月も続かず、段階的に、私達の距離は遠くなっていくのです。
最初はいつの間にか電話が来なくなったことに始まり、メールがおやすみメールだけになり、やがてそれすら来ない日が続いたりしました。
残業が続いていて、優の帰りが遅いことはわかっていたので、私はそんな状態に寂しさを感じながらも、ひたすら我慢を続けていたのです。
それでも、時々どうしようもなく落ち込んだりすると、弱気なメールを送ってしまう私がいました。
そうすると優は、どんなに忙しいときでも、必ず優しい言葉のメールをくれるのです。
私は、そんな優の心がとても嬉しくてたまらず、優への想いが弱まるどころか、ますます強いものになっていくのを感じていました。

ある日のこと・・・
優にメールを送ったときに、私はこう書き記しました。
「この間、私がケイの気持ちを確かめたとき、友達として付き合っていこうって言われた。それでやっと気持ちを切り替える決心がついた。
 お揃いの携帯電話に、お揃いのストラップを見ると、まだ心が痛くて、どうしようもなくなるときがある。
 だから、まだ自分の気持ちがどうなるかはわからないけど、
 この先、私が優を好きになることがあっても、いいですか?」

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前回優は、あれだけ彼女の気持ちを惹きつける言葉を言っておきながら、転勤になり実家に戻ったら、どんどん疎遠になっていきます。
やはり女性とのつきあいに慣れているから、ああいう言葉をすらっと言えるのでしょうね。
残業で忙しくても、本当にその気があればメールはできるはずです。
しかし、家で妻が待っているという負い目があるから、疎遠になるのです。
それなのに、彼女からの弱気なメールには、すかさずフォローします。
実に巧みですよね。

男にかまってもらわないと生きていけない彼女は、そんな優に心を奪われ、またまた恋愛感情を持ってしまいます。
ハルといい、ケイといい、ネットで知り合った人にこうも簡単に恋だの好きだの思ってしまう彼女は、やはり性格的に歪んでいるとしか思えないのです。

彼女からの思いもかけない告白に、果たして優はどういう返事をするでしょうか・・・。
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第3部 第79話 これからもずっと・・・  

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それからしばらくして、9月に入ってまだ間もないある日のこと・・・
いつものように、夜、優から電話がありました。
優の話によると、当初予定していたよりも転勤が早まり、あと10日足らずで、本社に赴任しなくてはならなくなった、というのです。
私は、転勤を祝福したうえで、自分の考えていることを話し、実家に帰ることで、それ以降の連絡が取れなくなったとしても大丈夫だから・・・と、明るく話してみせました。
それは、優に語りかけているというよりかは、まるで自分自身に言い聞かせているようでした。
優が幸せになるためなのだから、そうなったとしても、それはそれで仕方のないことだと、わかり過ぎるほどわかっている・・・。
でも、実際にそうなってしまったら、きっと私は、また1人になる時間が来ると、大きな喪失感から抜け殻のようになってしまうのかもしれない・・・。
そうなることを最低限に済ませるために、私に出来ることは、優の幸せを一番に祈ることと、自分自身の心の奥に潜む寂しさを、決して表には出さないことでした。
そんな私の心を、優は察してくれていたのでしょう。
「本社勤務になると、今よりも仕事が忙しくなると思うけど、今までのようにメールも
電話もするから、しおんは何も心配することはないんだ。俺たち、いつかは逢おうな。
絶対に逢えるよな。だから、これからも、ずっとずっと、ずっとよろしくな・・・。」 
私は、優の言葉がとても嬉しくて、涙が出そうでした。
そして、その言葉に応えるためにも、今度こそケイとのことをはっきりさせなければならないと思ったのです。
もしも、ケイの気持ちが私にないのだとしたら、きっぱりと諦めて気持ちを切り替えないと、自分がダメになってしまうような気がしていました。

ケイは、9月に入って忙しさが落ち着いても、私に逢いに来てくれる様子は、一向に見られませんでした。
相変わらずメールも途切れがちで、内容も淡々としたものばかり・・・。
ケイの気持ちが見えなくなってしまった私が、何度か気持ちを確かめようと問いかけたことに対し、こんな返事をくれていました。
「オレの言ったことが、あいに影響を与えることが怖くなっている・・・」
「誰かを好きになることに、臆病になっている・・・」
いつも、気持ちがはっきりとわかるものではなく、何となく曖昧な感じのする言い回しでした。
何度気持ちを確かめようとしたとしても、いつもこの調子ではらちがあかないと思い、取り敢えず結論を出してもらおうと考え、
「私と、今後どのように付き合って行くつもりなのか?」
そう問いかけたのに対して、ケイからの返事はあっさりしたものでした・・・。
「友達として付き合って行こう・・・。 それでいいよね?」
この答えは、だいたい予想が出来ていたので、あまりショックは受けませんでした。
しかし、当時の私は、ケイときっぱりと別れてしまうのではなく、どんな形にしろつながっていたいという願望しかなく、そのためには、自分の中にあるケイに対する想いを、完全に友達という形に切り替えるしかないと思っていました。
しかし、それは簡単なようで、案外難しいものなのだと、後々思い知ることになります。
ケイが他の女性と仲良くしていると嫉妬したり、これまでの経緯や、納得出来ないことに対して、必ず気持ちの葛藤が湧き起こるのです。
その度に、私はただの友達なんだからと、自分に言い聞かせなくてはならず・・・、
諦めが悪く、気持ちの切り替えが下手なことを、実感せずにはいられませんでした。
ケイの嫌な面が見えているはずなのに、簡単に割り切ることが出来ないような複雑な想いは、それからもしばらくの間続いていくことになるのです。
出来ることなら、これからもずっとケイへの想いを大切にしたかったし、ケイにもそうしてほしかった・・・。
でも、時の流れと共に、人の心は変わってしまう。。。
もうケイの心は私にはないという現実だけが、私の心を苦しめ続けていきました。

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彼女の再三の問いかけに、
『オレの言ったことが、あいに影響を与えることが怖くなっている・・・』
『誰かを好きになることに、臆病になっている・・・』

なぜケイはこんな返事を続けているのか、わからなくもない部分もあるけれど、やはり男として、はっきり結論は出すべきだと思うのです。
同郷ということで関係を切ってしまうのはもったいないと思っていたのか、それとも妻や子のいる身で、彼女との不倫にはとてもじゃないが踏み込めないと思っていたのか・・・。

『友達として付き合って行こう・・・。それでいいよね?』の言葉で、彼女はケイとの関係にようやく一区切りがつけられたのですが、ここに書かれているように気持ちを切り替えるのにさんざん苦しむのに、その後も現在に至るまで、同郷の異性の友達として本当につきあいが続くとは、やはり田舎ならではの濃い人間関係と、リアルの友人の少ない彼女の性格によるのでしょう。
私だったら、これだけ悩み苦しめられたら、気持ちを切り替えて友人としてなんて、つきあえないです。

優とのことでは、本音を言わずにすべてを我慢して、現実のつらさを自分だけで処理しようとする自己犠牲の歪んだ考えが書かれていますが、それは結婚したあとの夫の英治の行動に対しても同様で、若いころからまともな恋や男性とのつきあいをしてこなかった彼女の決定的な悪い性格でもあるのです。
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第3部 第78話 魔性の女「しおん」  

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亜希子さんからのメッセージには、「サークルを一時閉鎖する」と書いてありましたが、調べてみると、私を追い出した後に、サークル名だけを変えて活動を継続しているということがわかりました。
優が退会した後のサークルは、あまり楽しい場所ではなく、このまま続けて行きたいという気持ちは強くなかったけれど、こんな形で退会されられたということは、やはり気持ちの良いものではありませんでした。

優から私の元に電話が来たのは、管理人の亜希子さんから強制退会通知が来て、30分ほど経った頃でした。
私は、梨奈さんと亜希子さんからのメッセージの内容を話し、

私:「どうしてこんなことになったのか、わからないんだよね。。。
   だって、私と優とのことについては、サークル内の人達は知らないはずな
   のに・・・。一体どういうことなんだろう?
   それより、亜希子さんと付き合っていたんだったら、何で私にそう言ってくれな
   かったの?」
優:「実は、さっき亜希子さんからメッセージが来たんだ。
   しおんとのことを訊かれて、今でも付き合いがあるって正直に話したから、
   怒ってしおんを追い出したのか・・・。
   俺と亜希子さんはね、確かに何度か話はしたんだけど、
   話を聞いているうちに、彼女の口から、複数の男性の話が出て来るんだよな。
   早く私に告白しないと、誰かのものになっちゃうからって。
   俺の競争心をあおりたかったのかもしれない・・・。
   でも、それって何か違うよなーって・・・。
   いろいろな人と付き合っているみたいなんだけど、
   俺はその中の1人にされるのが、嫌だと思ったんだ。」
私:「もしかして、私、亜希子さんに嫉妬されたのかな? 優を略奪した悪い女だっ
   て・・・。サークルの中では、一番おとなしくて真面目そうだったのに、
   実は魔性の女だったなんて、思われてたりしてね(汗)」
優:「そうかもしれないな。今頃サークルの中で言われてたりして・・・。
   魔性の女『しおん』 だって(笑)」
私:「えー、私ってそんなキャラじゃないよ。全然違うのになー。
   勘弁してほしいよね(汗)」

仕事中だというのに、こっそり電話をくれた優の話を聞いているうちに、私はようやく気持ちが落ち着いてくるのを感じていました。

それから優は、急に神妙な口調で、こう切り出したのです。
「話は変わるけど、しおんに聴いてほしいことがある。実は俺、10月から本社勤務になりそうなんだ。そうなると、今いるところを引き払って、実家から会社に通うことになる・・・。」
私は、あまりの突然の話に、驚きを隠せませんでした。

優が本社勤務になって実家に帰るということは、つまり、もう今までのように夜の電話が出来なくなるし、家に居る時間はメールも出来ない・・・。
そうなると、これで私達の付き合いが終わりになるのかもしれないと、思いました。
もちろんそれは、私にとって、ものすごく寂しいことです。
でも、これで優は、単身赴任生活を終えて、やっと家族の待つ家に帰ることが出来るのです。
聞いたところでは、単身赴任生活の優の食事は、決して良いものとはいえませんでした。
健康面のことを考えると、私は、そんな優のことが、とても気にかかっていたのです。
しかし、家に帰るとなると、食事の心配をしなくても済むし、何よりも家族と一緒にいる時間が大幅に増える。
優にとっても家族にとっても、そうなることが、一番の理想の姿なのだと思いました。
それが優にとっての真の幸せなのだから、これを機に、私達の付き合いが終わってしまうことになったとしても、それは仕方のないこと・・・。
短い間だったけれど、優にはずっと支えてもらったし、楽しい時間を過ごすことが
出来たのだから、それだけでもう充分なはず・・・。
これは決して強がりなんかではなく、私の中にある本心のすべてなのだと、
ずっと自分自身に言い聞かせていました。
せめて、残された1ヶ月余りの時間を楽しく過ごせたら、それでいいと思ったのです。
しかし、そんな私の思いとは裏腹に、優の転勤はもっと早まることになるのです。。。

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『しおんとのことを訊かれて、今でも付き合いがあるって正直に話したから・・・』
こんな返事をするとは、優もはっきり言っておバカですね。
亜希子さんのようなしたたかな女性とは、付き合ったことがないのでしょう。
そして、それに対する彼女と優のやりとりが、まさに象徴的です。

『サークルの中では、一番おとなしくて真面目そうだったのに、実は魔性の女だったなんて、思われてたりしてね。』
『そうかもしれないな。今頃サークルの中で言われてたりして・・・。魔性の女「しおん」だって』
『えー、私ってそんなキャラじゃないよ。全然違うのになー。勘弁してほしいよね』

彼女は、亜希子さんのような人を「魔性の女」と思っていましたから(第3部第61話参照)、それを引用して、自分のことを「魔性の女」とジョークのつもりで言い、
優の悪ノリに、そんなキャラじゃないと否定していますが、自分こそが「魔性の女」であることに気づいていないのです。
いや、むしろ自覚しているけど、認めたくないのかもしれません。
それは、いかにも一番おとなしくて真面目そうなふりをすることに、子供のころから
慣らされていたからなのかもしれません。優の本社転勤話での、本心を隠したやけに真面目ぶった自分自身への言い聞かせも、そういうところからでているのでしょう。
本性は、不倫はするは、男を振り回すは、自分をいつも構ってもらいたくて、同情と肯定の言葉を求めています。
いずれにせよ、彼女のようなキャラは、つきあうにはとてもやっかいな性格ですよね。
そして、このときの「魔性の女」という言葉が、彼女の性格や素性を最もよく表していると私は思い、この復讐のブログのタイトルに使うことにしたのです。
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