第3部 第77話 サークルからの強制退会  

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8月に入ると、ケイの仕事はますます忙しくなっていました。
お盆を除くと休日がほとんどない状態で、メールの内容からも、その忙しい様子は伝わって来ました。
でも、9月になって忙しさが落ち着いたら、また私に逢いに来てくれるのだろうと、その頃は信じて疑いませんでした。

そんな状態の2005年8月29日のこと・・・
私がいつものようにサークルを覗いたときに、梨奈さんから1通のメッセージが届いていることに気付きました。

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お久しぶり(^v^)
しおんさん、聞いていいかな。
以前サークルにいた優さんとお付き合いとか なにか関係あるのかなぁ?
勘違いしないでね。
私は別に優さんと何かあるわけでもないし。
ただ、ちょっと思ったことがあってね。

From: 梨奈
2005/08/29 14:12:44
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それは、まるで私と優の仲を勘ぐって探りを入れるような、内容でした。
私は、優がサークルを退会した後も、個人的にメールや電話のやり取りをしていることは、サークルのメンバーには、一切話したことはありません。
なのに、どうしてこんなことを言われてしまうのか?
私から出た話でないということは、優が何か話したということなのだろうか?
これは優に訊くしかないと思い、すぐにメールをしました。
メッセージに書いてある時間からもわかる通り、優の勤務時間内での出来事です。
そして、優からの返事が来る前に、今度は亜希子さんからのメッセージが届くのです。

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しおんさんへ
今更こんな事を、私が言うのもおかしい話だとは思いますが、
しおんさん、もしかして優の事が好きなんじゃないの?
今でも、優と繋がりを持っているようで?
私と優は、一時期、真剣に付き合おうとしてましたし、
付き合ってるつもりでいましたが、結局は、逢わずに終わりました。
だから安心して下さい。
優は、とっても優しい人ですよ。保証します。
どうぞ仲良く・・・。
これを機に、サ−クルを一時閉鎖致します。
勝手で申し訳ありません。
もしかして2人で私のこと笑ってた?

From: 亜希子
2005/08/29 14:52:33

あなたは [ずっと恋していたい!] から強制退会させられました。
From: 管理人(亜希子)
2005/08/29 14:53:07
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私は、こうして管理人の亜希子さんからの「強制退会」という形で、何が何だか訳がわからないままに、サークルを去ることになったのです。
それからまもなくしてから、優からのメールが届いて、私達は電話で話すことになったのでした。

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Yahoo!の掲示板でどういうやりとりがあったのかはわかりませんが、彼女は偶然にも声をかけてもらってサークルに移りましたが、前にも書いてあるように、タイプも性格も違う亜希子さんと梨奈さんですから、彼女がケイとのことを書いたところで、あまりに幼稚な話で2人は鼻で笑っていたに違いありません。
気の強い亜希子さんの皮肉たっぷりなメッセージでわかるように、優とつきあうためにサークルをつくって、おびきよせたのでしょう。

私も一時期、SNSで何人かの女性とグループをつくり、メッセージのやりとりをしましたが、つきあうレベルまでいく前に、嫌気がさしてしまいました。
やはりネットの世界でアクティブに活動している人は、彼女もそうですが、クセが強いですね。

果たして、優からはどういう連絡がくるのでしょうか?
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第3部 第76話 紫苑(しおん)の像と私の心  

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そんなことがあった夏のある日の夕方・・・
私の元へ、優からのメールが届きました。
メールに添えられていた写真を見ると、そこに写っていたのは女性の銅像。。。
(上の写真です)

「一体これは?」意味がわからずにいる私。
「声聴けるかな?」と書かれたメールに、「家の電話の方にかけて」という返事をすると、すぐに電話がかかって来ました。
「今日は早く仕事が終わったんだよ。そしたら、すごく、しおんに逢いたくなって・・・。
 でも今からだと逢いに行けないだろう? だからどうしようかって考えて・・・。
 代わりに【しおん】に逢いに来たんだ。 しおんは、あの写真に写っている紫苑(しおん)の像って、知ってる?」

私はハッとしました。
私に「逢いたい」と言ってくれる優の気持ち、それをどう受け止めたらいいのか?
ちょうどこの頃の私は、ケイのこともそうですが、英治のこと、娘の真美のことなど、これでもかというくらいに、次から次へと問題を抱え込んでいて、情緒不安定な時期で、そんな私の話をいつも真剣に聴いてくれて、元気のないときに励ましてくれていたのが、まぎれもなく優だったのです。
それを、長く暗いトンネルの中を灯りをつけずに歩いているような状態に例えたとすると、そんな私の足元を、いつも明るく照らしてくれていたのが、優の存在だったのです。
「無理しちゃダメだよ。」「俺がしおんの心の薬になれたらいいな。」 
そう言ってくれる優の心を素直に受け入れられず、ずっと疑心暗鬼になってしまっていた私。
それに加えて、自分に対する自信のなさから、虚勢を張ってしまっていた私が、ようやく素直になって、優の気持ちを受け入れてみようと思い始めたのは、このことがきっかけでした。

優は、たとえ現実がどんな状況にせよ、「好きなものは好き」と口に出して言えるような、とても素直で真っすぐな気持ちの持ち主です。
現状も知ったうえで、自分の気持ちを受け入れて、それに逆うことをせずに正直な気持ちを話してくれるし、いつも優しい話し方で伝えてくれます。
たとえ私の話すことがどんなに辛く厳しい現実だとしても、それに対して決してマイナスなことは言ったりせずに、常に前向きな考え方が出来るように、言葉を選んで話してくれる。
私は、そんな優の言葉に何度も励まされ、いつの間にか、たくさん抱えていた心の傷も、少しずつ癒されていくのを感じていました。
優は、きっと自分が大切にしていたものを失って、大きな痛手を負った経験があるのだと思います。だからこそ、他人に対しても優しくなれるのでしょう・・・。
私達が初めて写メの交換をした翌日には、約束通り、優の写メが送られて来ました。
緊張しているような感じに見え、硬い表情をしているけれども、とても優しそうで整った顔立ちをしている男性が、そこに写っていました。

しかし、そのときの私は、ケイに対する気持ちの整理がついていなくて、苦しんでいた時期でもありました。
同じ日に機種変更した、お揃いの携帯電話・・・。 
そして、ケイが私の誕生日に仕事を休んでまで逢いに来てくれて、同じ景色を一緒に観たこと・・・。
そのときに渡された、お揃いのストラップを見る度に心が痛み、見えなくなったケイの気持ちを何度も確かめようとしては、ケイの何気ない言葉に傷付き、泣きながら眠る夜が続いていました。
そんなことの繰り返しに、心をボロボロにしながらも、優に癒される日々がそれからも暫くの間、続いていくのです。

優と私は、住んでいる場所が遠かったので、距離やお互いの置かれている状況を考えると、逢える見込みは全くといっていいほどありませんでした。
それでも優は、そのことを悲観的には考えず、いつかはきっと逢える日が来るだろう・・・。それは、何年先のことになるかは、全く見当がつかない。お互いが、歳をとったときになるかもしれない・・・。
それでもいいからと、ものすごく長い目で、逢える日を夢見ているようでした。

優と出会った頃に、私は自分のホームページを開設して、優とケイを含む何人かに限定して公開していました。
「しおんは、きっとかわいいお婆ちゃんになるんだろうな・・・」
電話で話しているとき、何かの拍子に、優は何度かそう言ってくれたことがあります。
後から聞いた話だと、最初の私に対する印象は、「ちょっとすました顔をして、気取った感じのショットバーでカクテルを飲んでいるような人」だったそうです(汗)。
そんなイメージを持たれていた私ですが、ホームページの日記を読んだり、実際に電話で話しているうちに、本当はかなりの三枚目で、気取らないお店でもお酒が飲めそうな感じだとか(確かに)、ものすごく恥ずかしがり屋だとか、どんどん印象が変わっていったようです。
私は、自分のことはよく話していますが、優のことについてはほとんど知らないことばかりです。
日々の暮らしや出来事についても、どんな悩みを持っているかということも、優はほとんど話したことがありません。
だから、私だけが優の優しさに依存しているのではないかと思うことが多々ありましたが、優は、それについては否定してくれていました。
もし、メールと電話だけの付き合いで、お互いの心が癒されているとしたら、それはある意味理想的なことなのかもしれません。
逢うことにこだわらずに、お互いの幸せだけを祈って、日々の生活を送っていくことが出来るのかというと、私は、自分でも不思議なくらいそれが出来たのです。

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優は、やはり女性の扱いに手慣れていますね。今日の話のなかに、そのことがいくつも書かれています。
彼女は別の見方をしていますが、一般的な男性から見れば、優は実に巧みに彼女の心を動かす言動を、苦もなくスラッと繰り出していきます。

まずは、「紫苑の像」
偶然とはいえ、彼女の実家の近くの御所湖にありました。
同じ名前のそれをわざわざ見に行って写メで送るとは、キザですよね。
優は仕事で盛岡近辺にいたために土地勘があり、御所湖のことも知っていたのでしょう。
もちろん彼女は、御所湖には何度も遊びに行ったことがあります。
(余談ですが、昔独身時代に彼女は高橋さんと頻繁にラブホに行きましたが(第1部第8話参照)、この御所湖のすぐ近くにはラブホが多くあり、盛岡市内だけでなくこのあたりにもよく来たようです。)
そして、彼女は自分の名前「しおん」を、この「紫苑の像」から採ったとも書いています。(私には、別の由来を言っていました。私にはごまかしていたのでしょう。)

「無理しちゃダメだよ。」「俺がしおんの心の薬になれたらいいな。」という言葉をはじめ、優しすぎる言葉や態度に、同じ男として不信感を抱きます。
その一方で、「きっとかわいいお婆ちゃんになるんだろうな・・・」とか「ちょっとすました顔をして、気取った感じのショットバーでカクテルを飲んでいるような人」と、女心をくすぐり、決してけなしたり悪口を言わなかったり、自分のことはほとんど話をしないで聞き役に徹しているのは、とても手慣れていないとできません。
ふつうは、自分のことをわかってもらおうとして、自分からいろいろと話題を作るのが常道ですから。。。

第三者から見れば疑問だらけの優のこういう言動と、彼女の性格の波長が、うまく合ったのでしょう。
こうして、優という自分を理解してくれる男性を見つけ、彼女は新たな日々の楽しみや生きがいがもてるようになったのです。
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第3部 第75話 英治を取り巻く女性について  

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一方、それからも英治とさちえの動向を知るために、私はこっそり英治の携帯メールをチェックし続けていました。
本当はこんなことをしたくはないと思いつつ、真実を知る方法が他に思い浮かばない以上、こうするよりほかなかったのです。

さちえは臨月までスナックで働き、5人目の子供を無事に出産。
しかし、ゆっくり休んでいる暇はない。
父親である男性に逃げられてしまったからには、自分が働いて、子供達を養っていくしかないのです。
さちえを捨てた男性には、英治も怒りを持っていて、接触を試みたこともあったようですが、私が知る情報はメールからのみなので、詳細についてはわかりません。
その頃さちえは、自分の店(スナック)を持つことを考えていたようで、金銭的なものを含めて、英治に相談を持ちかけていました。
5人も子供がいて、しかもシングルマザーともなれば、生きていくためには時には手段も選ばず、自分に都合よく利用出来そうな人間はちゃっかり利用するといった具合に、生き方もしたたかになるのでしょうか?
この頃、さちえにはもう新しい彼氏がいたというのに、英治には隠してつきあいを続けていたのです。(後のメールで知ることになった。)
そんなことなど何も知らない英治のメールには、さちえの店の開店資金について心配するような言葉が綴られていてました。
本当は全額負担してあげたい気持ちなのに、今の自分にはそんな力がなくて申し訳ないとか・・・、一体どこまでが本音なのかもわからないような、ええ格好しい言葉には、思わず嫌悪感を感じました。
出産のときの保証人といい、実際、英治がどれ位の金額を援助したのかは、まったくわかりません。

そしてこの頃、英治には、さちえ以上に頻繁にメールのやり取りをする女性が現れました。
さちえと同じ店でアルバイトをしていて、おそらく年齢はさちえよりも若く、子供のいる女性で、名前は良恵。
店に行くのはもちろんのこと、外で一緒に食事することが、何度もあるようでした。
それだけではありません。
良恵に会社のカードを貸して、ガソリンを何度も入れさせている。
良恵の子供のために、大きな鯉のぼりを買ってあげた。
私が知っているだけでも、これくらいしてあげているのです。
うちは他人に援助してあげられるお金が捻出できるほど、裕福な家庭ではありません。
旅行や娯楽に使えるお金はもちろんのこと、貯金さえもほとんどできない状態です。
自分の家庭の状況を顧みず、いい人のふりをして、他人に援助する英治の気持ちは、まったく理解出来ないのです。

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単身赴任状態の英治は、やりたい放題ですね。
見栄っ張りでええ格好しいで、周りから頼られていると自己満足している勘違い男の典型です。
実際はいいように女に使われ、貢がされ、そして最後は捨てられるおバカさんなのに。。。
そして、第3部第73話にあったように、妻や娘にそれを指摘されると、ムキになって感情を爆発する。。。
こんな男ですから、彼女もさっさと離婚するのが一番の得策だと思うのです。
しかし、やはり我慢していれば養われてもらえるという甘えが強いのでしょう。
それに対して英治は、彼女に対して、夫婦らしい思いやりやいたわりの心を持っているとは思えないのです。
妻である彼女の存在は何なのだろうか? と、とても疑問に思うのです。
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第3部 第74話 優の存在感  

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その日は休日・・・
優にメールをすることも出来ない私は、むしゃくしゃした気持ちを抱えながら、長い夜を過ごすしかありませんでした。。。
優だったら、たとえこんな類の話でも、親身になって聞いて、優しい言葉をくれるはずなのに・・・。
しかし優は、ケイのように休日も関係なく、頻繁にメールをくれるわけではない。
休日は連絡が来なくなる。。。
だからといって、メールの内容が急にそっけなくなり、6月以来逢いにきてくれなくなったケイには、もう以前のようには、自分のことはもちろん、家族に関する悩みも話せなくなっていたのです。

こんなとき頼りになるのは息子の俊也。
真美のことや英治のことに関する悩み・・・、いざとなると、いつでも聞いてくれる相手は、俊也しかいませんでした。
父親のこと、そして姉のことは、俊也も常に気にしていたようです。
その日の夜も話し相手になってもらい、いろいろと話をしました。

話すことによって、少し気持ちも落ち着いて、長い夜が明けた翌日・・・
均に送ってもらい、真美が帰ってきました。
 
結局このときの真美の行動は、私が思っていた通り、英治の反省を促すことなどなく、単なる自己満足だけで終わったのです。
この出来事は、優にも話しました。
次々にいろいろなことが起きて、その度に心を痛めても、問題を起こした当人には、伝わることもなければわかってもらえない悲しさを、たくさん抱えていたこの頃・・・。
優の存在が、大きな支えでした
それは、一種の依存なのかもしれないと思いつつ、私には、優の優しさに甘えることだけが、救いになっていたような気がします。

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このときの問題を当時中学2年の息子を話し相手にするしかないとは、いかにも情けないし、息子もそんな母親の話し相手をするとは、やはり親離れ子離れができていないのでしょうね。

『それは、一種の依存なのかもしれないと思いつつ、私には、優の優しさに甘えることだけが、救いになっていたような気がします。』

その前はケイだったし、さらにその前はハルに頼って甘えて、なんとか生きてきた彼女。
自分の心を理解し同情してくれる人には、とことんのめりこむのです。
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