桐山純一の説明・紹介  

「書けばきり がございません。伺えばきり がございません。だから書きもいたしませんでした。あなたのお手紙もきょういただいたものまでは拝見せずにずたずたに破って捨ててしまいました。その心をお察しくださいまし。
 うわさにもお聞きとは存じますが、わたしはみごとに社会的に殺されてしまいました。どうしてわたしがこの上あなたの妻と名乗れましょう。自業自得と世の中では申します。わたしも確かにそう存じています。けれども親類、縁者、友だちにまで突き放されて、二人の妹をかかえてみますと、わたしは目もくらんでしまいます。倉地さんだけがどういう御縁かお見捨てなくわたしども三人をお世話くださっています。こうしてわたしはどこまで沈んで行く事でございましょう。ほんとうに自業自得でございます。
 きょう拝見したお手紙もほんとうは読まずに裂いてしまうのでございましたけれども……わたしの居所をどなたにもお知らせしないわけなどは申し上げるまでもございますまい。
 この手紙はあなたに差し上げる最後のものかと思われます。お大事にお過ごし遊ばしませ。陰ながら御成功を祈り上げます。


中村しょう口コミ
0

(無題)  

その皮で頭の外面、顎、眼、肢、胃袋やその他のいろんなものが出来る。それが普通のひきはがし方だ。古い体を覆つてゐた破れた皮は、終ひに繭の中で隅の方におしつけられる。
『繭の中でその仕事をしてゐるのは何んだらう? 違ふ虫か、それとも蝶か、どつちでもないのだ。彼等の体は巴旦杏の型をして一方の端は円くなり他の方は尖つてゐて、皮のやうな見かけをしてゐる。それを蛹といふのだ。それは、虫と蝶との二つの資格の中間のものだ。其処では、既に未来の昆虫の型を表示した投影を確かに見る事が出来る。大きい方の端では触角を見分ける事が出来、翅はしつかりと蛹の横に折り畳まれてゐる。


どもる原因
0




AutoPage最新お知らせ