桐山純一の説明・紹介  

「書けばきり がございません。伺えばきり がございません。だから書きもいたしませんでした。あなたのお手紙もきょういただいたものまでは拝見せずにずたずたに破って捨ててしまいました。その心をお察しくださいまし。
 うわさにもお聞きとは存じますが、わたしはみごとに社会的に殺されてしまいました。どうしてわたしがこの上あなたの妻と名乗れましょう。自業自得と世の中では申します。わたしも確かにそう存じています。けれども親類、縁者、友だちにまで突き放されて、二人の妹をかかえてみますと、わたしは目もくらんでしまいます。倉地さんだけがどういう御縁かお見捨てなくわたしども三人をお世話くださっています。こうしてわたしはどこまで沈んで行く事でございましょう。ほんとうに自業自得でございます。
 きょう拝見したお手紙もほんとうは読まずに裂いてしまうのでございましたけれども……わたしの居所をどなたにもお知らせしないわけなどは申し上げるまでもございますまい。
 この手紙はあなたに差し上げる最後のものかと思われます。お大事にお過ごし遊ばしませ。陰ながら御成功を祈り上げます。


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