A・JARIのinformation  

分るかね」
「よく分らない」
「じゃあこう思えばいいのだ。舟が渦巻のなかに吸込まれそうになっている。そのとき舟から大きな丸太を渦巻の中心へ向って投げ込むのだ。すると渦巻はその丸太を嚥みに懸るが、嚥んでいる間は渦巻の形が変る。ね、そうだろう。その機を外さず、舟は力漕して渦巻から遁れるのだ。それと同じように、いま本艇から出来るだけ沢山の物品を投げ出して、平衡点から遁れようとしているのだ。これで分ったろう」
「まあ、そのくらいでいい」僕には、はっきりしたことが嚥みこめなかった。「それで、それはうまく成功する見込みかね」
「今やっている最中だ。はっきり分るのは、もうすこし経ってだ。おお、卓子や長椅子を放り出している。艇長は、最後には、艇内にいる三十八人の発狂者を投げ出す決心をしている」
「三十八人の発狂者を……」
 いつの間にそんなにたくさんの発狂者が出たのであろうか。僕は、ベラン氏のことを思い出した。
「それは人道に反する。発狂者とて、まだ生きているのではないか。生きているものをむざむざと……」
「待て。

元カノ遭遇
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