(無題)

2012/12/27 
農民のうちに、あれだけ自覚した反都会精神といふものが生れてゐることは、僕も今まで気がつきませんでした。これは、かなり面倒な問題ですよ」
 幾島はさう云ひながら、玄関の階段を降りて行つた。それは、ひとりでに素子を暗闇の小径へ誘ひだすことになつた。
「よく晴れてますね、空が……」
「夜、ひとりで外が歩けるくらゐになつてるといゝんですけれど……かう道が暗くつては……」
「分譲地の方もこんな風ですか?」
「まあ、こんなもんだと思ひますわ。ですから、夜のない都会だつて、みなさん云つてらつしやるさうですわ」
「夜のない都会か。……さう云へば、僕なんか東京にゐてさへ、夜街へ出るつてことは殆どありませんからね。縁日なんていふのは、子供の時の記憶以外にないくらゐです」
「まあ、そんなにお堅くつていらつしやるの? ぢや、ここでせいぜい夜遊びをなすつてらつしやるといゝわ」
 いつの間にか、二人は表門の潜りを潜つて、表通りへ出てゐた。
「そつちへ登つて行くと何処へ行くんです?」
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キレイな胸とは、、、

2012/12/17 
今までは馬だけだったんだ。や、や、これはどうだ!」
 人と馬との足跡はそこで急に方向を転じて、キングス・パイランドの方へ向っていたのである。ホームズは呻吟したが、そのままその足跡を追って新らしい方向へ歩き出した。そして、彼はじっと足跡ばかり見て歩いたが、私はふと横の方に眼をやってみると、驚いたことには、少し離れたところに同じ足跡が、再びケープルトンの方へ向っているのを発見した。私がそれを注意すると、ホームズは、
「ワトソン君、お手柄だ! おかげでうんと無駄足をふまされるのが助かった。さ、あの足跡を辿って進もう」
 そこから先きはあまり歩かなくともよかった。足跡はケープルトン調馬場の厩舎の入口に通ずるアスファルト舗装の道路の前でつきていたのである。そこまで歩いて行くと、厩舎から一人の馬丁が飛び出して来た。
「ここは用のない者の来るところじゃねえだよ」
「いや、ちょっとものを伺いたいのだがね」
 ホームズは二本の指をチョッキのポケットへ入れていった。
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