2010/5/19

戻らない時間・最終回  小説

そして結婚式当日。
控え室では彼女が着替え終わって鏡の前で座っている。
「莉子・・・キレイよ」
「ありがとう、お母さん」
「ママ、キレイ」
「瑛莉もキレイだよ」
すると仲間が控え室に入ってくる。
「上杉」
「あ!藤堂さん、来てくれてありがとう」
「見違えたよ、やっぱ違うな」
「そうかな?」
「莉子さん、ホントキレイ」
「ありがとう、密ちゃん」
「はい、本当にキレイです」
「小野田さんだって今日のリボン可愛いよ」
「そ、そうですか?そう言われると嬉しいです」
「・・・・」
「はるひ?」
「莉子、おめでとう・・・」
「ありがとう」
「あ!やっぱ、却下」
「え??」
「ホンマにえぇんか??」
「・・・・」
「好きなら自分の気持ち隠しとったらアカンで??」
「おい、西本・・・」
「離してや!」
「大丈夫、はるひ」
「莉子・・・」
「幸せにしてもらうから」
「・・・・」
「ねっ」

そしてチャペルの前で。
「なんか緊張するね、瑛・・・・」
「・・・・・」
「瑛?具合悪い?」
「・・・・莉子、おれ」
するといきなりチャペルの扉が開いた。
ふたりはぎこちない歩きで進んでいく。

その頃志波は、結婚式場に向かって走っていた。

式場では二人が神父様の前まで着いた。
「これより、佐伯瑛・上杉莉子の結婚の儀を執り行います。賛美歌斉唱」
そしてチャペルの中では賛美歌が響いていた。

志波は必死に走っている。
(回想)
「3人で幸せになろうね、勝己」
「私、幸せだよ。勝己が側にいてくれるだけで・・・」
「私、後悔しない。勝己が側にいてくれたらきっと・・・・」
「勝己、私のこと愛してるって言ってたじゃない、瑛莉の事も好きだって・・・」
「なんで??・・・・何で私じゃないの??私じゃ駄目なの?ねぇ、勝己!!」

「莉子・・・・」
志波は必死に向かった。

それでも式は着々と進行していた。
「・・・・それは指輪の交換をいたします」
神父がまず新郎に指輪を渡し、彼女の左薬指にはめた。
そして神父は新婦に指輪を渡し、彼の左薬指にはめた。
「それでは、誓いの言葉を・・・」
神父は新郎の目を見て言い出した。
「新郎・佐伯瑛。あなたは上杉莉子を妻とし、苦しいときも病めるときもこれを敬い、愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います!」
「新婦・上杉莉子。貴方は佐伯瑛を夫とし、苦しいときも病めるときもこれを敬い、愛し続けることを誓いますか?」
「・・・・・」

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2010/5/19

戻らない時間・第24話  小説

そして結婚式前日。
「莉子・・・」
「あ!お母さん・・・」
「どう?緊張してる?」
「そうだね・・・」
「でも本当にこれでいいのかしら?」
「いいんだよ、これで・・・」
「・・・・」
「お母さん」
「何?」
「私産んでよかった?」
「当たり前でしょ?」
「・・・私も瑛莉にそう言われるかな?」
「・・・言われるわよ」
「え?」
「だって、莉子は私の自慢の娘ですもの」
「・・・・お母さん」
「でもね、お母さん貴方に後悔だけはして欲しくないわ」
「え??」
「・・・・もう、わかってるんでしょ?自分の気持ち・・・」
「・・・・」
「まだ引き返せるわよ」
「・・・いいの。もう吹っ切れたから」
「そう」
「うん・・・」
「・・・」
「お母さん、産んでくれて・・・・ありがとう」
「・・・・どういたしまして」
そして二人は寄り添い笑い合った。

その夜、志波の実家に柊が訪れた。
「あら、柊さん」
「こんばんわ、志波君いらっしゃいますか?」
「あ〜はいはい。ちょっとまってね」
そして二階から志波が降りてくる。
「柊、どうした?」
「これ、頼まれた」
彼女は志波に段ボールを渡した。
「なんだ?これ?」
「いらなかったら処分してくれって」
「え??」
「それと、これ」
彼女は飛行機のチケットを2枚だした。
「あ・・・」
「戻るつもりでしょ?」
「・・・・あぁ」
「それでこそ、志波勝己!!」
「でもこのもう1枚は・・・」
「わかってるくせに」
「え??」
「彼女、迎えに行ってあげて」
「え?」
「好きなんでしょ?まだ・・・彼女のこと」
「・・・・」
「意地を張るのもいい加減にしなさいよ、男らしくない!!」
「・・・柊」
「私の気持ち無駄にしないでね。私だってあの子だから妥協するんだから」
「・・・」
「じゃ、幸運を祈る」
そして柊は帰っていった。
志波は自分の部屋にもどり段ボールを開けた。
そこには瑛莉のアルバムが入っていた。
志波は懐かしさのあまり一冊手に取り見始めた。
アルバムには一言メモ付きの写真がずらりならんでいた。
「(1月23日。今日、瑛莉が初めて立った。勝己あんまりいきなり立ったから驚いてご飯もたべないで瑛莉に夢中)」
「・・・・懐かしいなぁ」
「(3月3日。今日はひな祭り。勝己ったら部屋が狭いのにひな壇買ってきて飾り付けしてた。おひな様の頭が取れて少し半べそ、可愛い)」
「・・・・」
「(4月15日。今日は天気が良かったので3人でピクニック。勝己は瑛莉を肩車。瑛莉大はしゃぎ)」
「(6月9日。今日は私の誕生日。私のために勝己がプレゼント買ってきてくれたのに、瑛莉は自分がもらえないことを知り大泣き)」
「(8月3日。今日は3人で海水浴。初めての海にちょっと興奮ぎみの瑛莉。勝己はずっと瑛莉から目を離さない)」
「(11月11日。瑛莉、誕生日。この日初めて3人で写真館で写真撮影、勝己緊張のせいか顔が引きつってる。このまま3人で一緒にいたいなぁ)」
「・・・・莉子」
「(12月25日。クリスマス。サンタに扮した勝己を目の前に瑛莉が号泣。勝己はひげと帽子を取って姿を見せたら瑛莉が泣きやんだ。さすがパパ!!)」
そして志波はアルバムを閉じた。
志波は決心して自分の部屋から飛び出した。
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2010/5/19

戻らない時間・第23話  小説

アナスタシアで・・・
「なぁ、ホンマに言うん??」
「仕方ねぇだろ??志波に頼まれたんだから・・・」
「そうかもしれんけどやな・・・」
すると彼女が入ってくる。
「よっ、りこ!!」
「あ!ハリー、また見ないうちに男前になって」
「そうか?なんてったって俺はハリーだからな」
「また始まった」
「いいじゃね〜か、これが俺なんだから」
「はいはい・・・」
「はるひ・・・なんか太った??」
「あ、うん。実は・・・出来たの」
「え??」
「お・・・お〜よ。」
「ホントに?じゃ、ハリーはパパ??」
「わ・・・わりぃかよ?」
「大丈夫なの?」
「おい!!それ、どういう意味だよ」
「あははは」
そしてケーキと紅茶を飲みながら世間話が終わり本題へ向けて話を進めた。
「そうそう、なんか用事だった?」
「あ・・・」
「あ、あのよ・・・」
「うん」
「・・・志波のことなんだけど」
「勝己?」
「あぁ」
「・・・・コウ」
「言わなきゃ駄目だろ?」
「・・・何?」
「・・・・」
「・・・・」
「何があったの??」
「志波がお前に謝っておいてくれって」
「・・・・」
「それでマネージャーの・・・何ていったっけ?」
「柊さん」
「あ!そうそう、その子と結婚するらしい」
「・・・・そうなんだ」
「で、日本たつらしんだ。その・・・お前の結婚式の日に」
「・・・・」
「何か伝えたいことあるか?」
「え??」
「今ならまだ間に合う。まだ好きなんだろ?佐伯じゃなくて・・・志波のことが」
「・・・・そ、それは」
「お前、このままじゃ本当に後悔するぞ」
「私もどうしていいかわからないの・・・」
「りこ・・・・」
「今でも勝己のこと好きで・・・でも瑛莉のこと考えると、父親はやっぱり血のつながった瑛の方がいいって思うし。それに瑛は私を大事にしてくれてる」
「・・・・りこよ」
「ん??」
「結婚って言うのは、自分のためにするんじゃないのか?」
「え?」
「子供も大事かもしれない、そりゃ瑛莉はお前と佐伯の子かもしれないけど、でも瑛莉の中の父親はもう志波なんじゃね?」
「・・・・」
「本当に幸せになりたいなら自分の気持ちを伝えるのが先決だと俺は思うぜ」
「・・・コウ、あんたイイ事言った!!」
「だろ??」
「りこ、私もそう思うで・・・」
「はるひ・・・」
「りこに必要なのは佐伯ちゃうで。志波やん」
「・・・・」
「りこ、志波に本当の気持ちつたえぇ??」
「・・・ねぇ、二人にお願いがあるの」
そして針谷と西本を連れて家に戻った。

「ただいま・・・」
「あ!ママお帰りなさい」
「瑛莉、ただいま。あれ?パパは??」
「ん??」
すると佐伯が出てくる。
「あ!瑛、ハリーとはるひ連れてきた」
「え?」
「よぉ。佐伯・・・」
「針谷」
「よ、佐伯。ひさしぶりやん。ますますいい男になってからに・・・」
「そうか?まぁ、あがれよ」
「あぁ・・・」
すると彼女ははるひの腕を引っ張って別の部屋に連れ込んだ。
「なんやねん、りこ・・・」
「お願いがあるの」
「え??」
「瑛莉のアルバム、瑛が捨てろって言うの」
「え??」
「私には出来ないの。アルバム、勝己に届けてくれないかな?」
「・・・うん、わかった」
「ありがとう、じゃ・・・あれ?」
置いてあったところにアルバムがなくなっている。
「ねぇ、瑛・・・」
「なんだ?」
「アルバムどうした??」
「アルバム?」
「そう、さっき見てた瑛莉のアルバム」
「あ〜、さっき捨ててきた」
「え?」
「もう必要ないだろ?」
「どうして!!」
「・・・・」
「どうして捨てたりするのよ!」
そういうと彼女は走って家から出て行った。
「莉子!!」
「おい、いいのか?アイツ追いかけなくて・・・」
「・・・・」
彼女は必死にゴミ捨て場をあさった。
「・・・ない、ない」
「あの、収集したいんですけど」
「もう少し待って下さい。大事なものがあるんです」
「・・・・・」
かのじょは汚れなんか気にせずに必死になって探した。
3カ所回目に来て探していると、偶然そこに柊さんが通りかかった。
「・・・・あの」
「あ!柊・・・さん??」
「どうしたんですか?」
「・・・捜し物を」
「一緒に探します」
「あ!お洋服汚れますから」
「大丈夫、このくらい・・・」
そして二人で探しようやく見つけ出した。

二人は公園のベンチで。
「はい・・・」
「あ!すみません、一緒に探してもらったのにジュースまでごちそうになって」
「大事な物だったんでしょ?」
「え?」
「足・・・・裸足だから」
「あ・・・あは、あはは」
「なに?これ?」
「あ・・・アルバムです」
「アルバム?」
「はい、あの子の・・・・」
「あの子って・・・貴方のお子さん?」
「はい」
「見ても・・・いいかしら?」
「・・・・あっはい」
そして彼女はアルバムを手に取り見始めた。
そこには自分が見たこともない志波の表情が鮮明に写真によって表現されていた。
「・・・・こんな顔もするんだ」
「え?」
「あ・・・彼、笑ったとこ見たことなかったから」
「・・・・・」
「いい顔してる・・・」
「あの」
「はい?」
「お願いしたいことがあるんですけど・・・」
「何?」
「このアルバム、志波君に届けてもらえませんか?」
「え?」
「ムリは承知してます。でも、私にはどうしても捨てることが出来ないから・・・」
「・・・・」
「志波君に必要でなければ捨ててもらっても構わないと伝えて下さい」
「・・・わかったわ」
「ありがとうございます」
「・・・今までごめんなさい」
「え?」
「私、どうしても志波君自分の物にしたくて貴方にきつくあたってたの」
「・・・・」
「でも。彼は・・・・私じゃない。心の底から貴方とあの子を愛してた。自分のことを犠牲にしても」
「・・・・そんなことないです」
「・・・」
「私は志波君を苦しめることしかできなかったから」
「もしかして、あの時のこと・・・?」
「え?」
「志波君と私が・・・」
「・・・いいんです、もう。子供じゃないんだし」
「どうしても彼のことものにしたくて、それで・・・だからごめんなさい」
「あ!頭を上げて下さい」
「・・・」
「もう、いいんです。私来週結婚式挙げるんで・・・」
「え??」
「だからもういいんです。私の代わりに志波君の側で彼を支えてあげてくれませんか?」
「・・・・」
「お願いします」
そして二人は別れた。
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2010/5/19

戻らない時間・第22話  小説

その日の夜。
柊が志波の実家に訪れた。
「はい」
「あ!すみません、柊と申しますが」
「あ〜、お電話の・・・」
「勝己くんご在宅ですか?」
「はい、お部屋の方に。あ!ここじゃなんですからどうぞ、お上がり下さい」
「それじゃ、お邪魔します」
そして柊は二階に通された。
「勝己、お客さん」
「え?」
勝己はドアを開けた。
そこに立っていたのは柊だった。
「・・・・志波君」
「なんだ、お前か?どうした?」
「帰る日が近づいてるんだけど、何にも連絡くれないから」
「・・・柊」
「何?」
「俺、野球辞める」
「え?」
「もう、野球したくないんだ」
「どうしたの?」
「・・・それと、お前には謝らなきゃなんねぇ」
「え?」
「俺。やっぱ自分に嘘付くのこれ以上無理みたいだ」
「・・・・」
「俺、今でも莉子のこと」
「いいの!!」
「え?」
「分かってたことだからいいの」
「・・・柊」
「私は志波君の横で野球に打ち込んでる志波君が好きだったの。いつか、あなたの支えになれたらって頑張ってきた」
「・・・・」
「けど、志波君の見てるのは私じゃない。彼女だったって気づいたの」
「・・・・」
「テレビ見たよ。写真。今でも大事に持ってるんだね」
「・・・・」
「何処が良いの?彼女の?」
「・・・全部」
「え??」
「しゃべってるときの顔とか、何にもないところで転ぶと事か、子育てに一生懸命なとことか、寂しがり屋なところとか・・・全部ひっくるめてみんな好きなんだ」
「・・・そっか。彼女には私が持ってない物みんな持ってるって事なんだね」
「・・・でも、莉子は違う奴と幸せになるんだ」
「え??」
「俺の過ちのせいで・・・」
「過ちって・・・もしかして」
「あぁ」
「それは違うよ。私が事情説明しに・・・」
「いいんだ。俺が悪いから・・・」
「ねぇ、野球だけは辞めないで。お願い・・・」
「考えておく」

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2010/5/19

戻らない時間・第21話  小説

彼女は珊瑚礁に飛び込みそのまま休憩室に向かった。
「・・・・莉子、大丈夫か?」
「・・・・」
「莉子・・・」
彼女は涙が止まらないで居た。
するとマスターが近寄ってきて瑛を引き留めた。
佐伯はその姿を見て、彼女に必要なのは自分じゃないと悟った。

そして勝己と別れて1週間。
勝己はそれ以来姿を見せなくなった。
瑛莉と家でぽ〜っとしていた。
「ママ、今日お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんはお店でしょ?」
「じーじは?」
「じーじ?」
「うん、海のじーじ」
「あぁ〜、マスターの事かぁ。」
「・・・じーじのばーばね、人魚だったんだって」
「え?なにそれ??」
「あ!!パパだ!!」
「え??」
テレビには勝己の姿があった。
「今日はよろしくお願いします」
勝己は司会者に頭を下げる。
「向こうでの成績ですが、すごいですね」
「いえ、そんなことないです。まだ半人前なんで」
「そんな事はないですよ、なんでも日本のプロ野球からのオファーを蹴ってこのメジャーに入ったそうですが、志波選手は何処に惚れられて入団したんですか?」
「・・・・自分の力を試そうと思って」
「そうなんですか」
瑛莉はテレビに釘付けになっている。
「パパ、かっこいいね」
「瑛莉・・・この人パパじゃないでしょ?」
「ママ変なの、瑛莉のパパだよ?」
「・・・・」
すると司会者は思わぬ事を口にした。
「志波選手のその力の源はどこから来てるんですか?」
「・・・・」
「聞いた話によると異性の存在が居るとか・・・」
彼女は目を丸くした。
「え??」
そしてテレビを凝視する。
「いつも写真を持ち歩いてるとも聞きましたが、いかがなんですか?」
「はい、俺の宝物ですから」
「そうですか?拝見って出来ますか?」
「あ・・・はい」
志波は胸ポケットから写真を取り出し、司会者に渡した。
「うわ〜、素敵な写真ですね。すごく幸せそうです。この方は志波選手の?」
「はい、おれの最愛の人です」
「皆さんに見せて大丈夫ですか?」
「あ〜・・・・はい」
すると見る勇気がなくてテレビをリモコンで消してしまった。
「あ〜!!ママ、テレビ消しちゃいや!!」
「瑛莉、ここ片づけなさい」
「・・・・」
そして瑛莉を連れて家を出た。

珊瑚礁で。
「「ありがとうございました」」
「莉子、招待客リスト出来たか?」
「あ〜・・・うん」
「どれ見せてみろ」
彼女は用紙を渡した。
「あ!西本呼ぶのか?」
「うん。はるひの結婚式呼ばれたし」
「そっか。あとは・・・小野田に、水島に、と・・・」
「え?なんかあった?」
「藤堂も・・・呼ぶのか?」
「うん。私は瑛と幸せになるって見せつけてやるんだぁ」
「・・・莉子」
「ねぇねぇ。ピンクのドレスとブルーのドレスどっちがいいかな?私は瑛が青が好きだからブルーにしようと思ってるんだけど、でもオレンジも捨てがたいなぁ。あ!赤もイイかも・・・」
「莉子?」
「何??」
すると顔を上げた瞬間、佐伯は彼女にキスをした。
彼女は驚き、佐伯を突き飛ばした。
「あ!!」
「!!」
「ご・・・・ごめん」
「私こそ、驚いて。ごめんね・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「そろそろ店閉めるぞ」
「う、うん・・・」
そして二人はこの後沈黙だった。

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