ずっとここで待っていたのか?

2010/11/25 
 真実を見つめ、そこに想像という名の光をあて、新しい世界を創造する、そんな作家に。
 門をくぐり、ぼくは遠子先輩が去ったのと、逆の方向へ歩いていった。
エピローグ ● 文学少女
 会えないまま、六年が過ぎた。
「井上!」UGG
 空港のロビーで、ストロベリーピンクの半袖のニットに白いスカートの琴吹さんが、手をあげて合図をする。
それが嘘ではないことも分かっている。黄金の髪を突き抜ける二本の角。それが彼が正真正銘の鬼であることを示している。美しい曲線を描きながら伸びている鬼の象徴に視線を預けて、さつきはそう確信した。
 ほっと息をつきながら湯飲みに口を当てる彼女を見て、そろそろいいだろうと思ったのか。熱い茶を数口啜ると、蒼鬼はどこか悲壮感を漂わせながら静かに語り出した。
 琴吹さん、どうして……!UGGブーツ
 ずっとここで待っていたのか?
 ぼくに気づくと、眉をきゅっと下げ、泣きそうな顔になった。
「よかった……会えて」
 冷たい空気を、小さな声が震わせる。アグブーツ
 目に涙をいっぱいためて、琴吹さんは一言一言つっかえながら、一生懸命に言った。
「井上……昨日、いきなり早退しちゃったし……今日も、休んでるから……心配で……ごめんね……来ちゃって……。芥川は、井上も苦しんでいるから、答えを出すまで……待っててやってくれって……言ったんだけど……井上、辛そうだったから……あたし、じっと、してられなくて……ごめんね……ごめんね」アグブーツ
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歩いてみて気づく

2010/11/24 
 あたたかくて、優しくて、誰かを好きな気持ちがあふれているところが。
 それが、ますますわたしを、懐かしい、幸せな気持ちにしてくれました。
 樹が羽鳥に告白するシーンは、特に大好きだったわ。UGG
 構成的には、よくなかったかもしれないけど、一生懸命に告白している樹が可愛くて、このシーンをロにしたら、どんなに甘い味がするかしら、レモンパイみたいに甘酸っぱくて、幸福な味なんじゃないかしらと想像して、うっとりしていたの。
 大丈夫、恐くない。このまま自分は進んでいける。UGGブーツ
 歩いてみて気づく。父親に連れられていった時は、あの大きな桜木までの距離がとても遠く感じられた。けれど今になって歩いてみれば、ほんの数分の場所にあったのだ。思いがけず短時間で辿り着いてしまいそうなことに戸惑いながら、さつきは空を見あげた。
 さっきまで、眠くてたまらなかったのに、心臓がドキドキして、頭の中も熱く痺れて、眠れないっ!アグブーツ
 毒を盛ったのは、結衣さんなのか? 遠子先輩は、安らかな寝息をたてている。一体、どういうつもりで、遠子先輩はあんな手紙を残しておいたんだ。
 闇が、重くのしかかってくる。喉が苦しい。余計なことは考えるな。今は眠るんだ。
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来なかったら

2010/11/23 
「ええ」
「来なかったら、やっぱりダメだったかって思いますよ」
「大丈夫よ、自信あるもの」UGG
 遠子先輩は、ぺたんこの胸をそらして、笑っていた。
 合格の発表は、三月二十三日。
 そのあとの一週間は、時間の流れがゆっくりに感じられた。同時に、もう三月もわずかだという焦りも覚えた。
「ふうん。道満ってどんな奴? それに敵じゃないって言ってなかったか?」
「……」
 忠利の軽い返答に、静成は一瞬だけ呆れたような表情をした。さつきの友人について、忠利は何も気づいていないようだ。だがそのことについては、静成は何も口にしなかった。わざわざ説明する必要はないと思ったのだろう。忠利が相手にするべき対象は蘆屋道満ではないのだから。UGGブーツ
ぼくは本棚から『狭き門』を持ってきて、ずっとそれを読んでいた。
『わたしは、あなたに、せめてわたしがあなたをこの上なく愛していたことをおぼえていらしっていただきたいの……』アグブーツ
『わたし、あなたのお好きだったこの小さい十字架を、あなたのお子さんが、わたしの記念に下げてくださる日の来ることを考えていたんですの。誰からの贈り物とも知らずに……』
『そして、そのお子さんにつけてくださるかしら……わたしの名を……』
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人形みたいな無表情で

2010/11/22 
「あの子が病室の前で、自分の首にカッターナイフをあてて言ったの。『それ以上、こっちへ来たら切ります。流くんはあたしの彼氏だから、近づかないでください』って」
「!」
「人形みたいな無表情で、淡々と話すものだから、みんな恐れをなして帰っちゃったわ」
 心臓がどきどきしている。UGG
 竹田さん、なんてことを――! 本気で、さくっといきそうなところが怖い。きっとみんなも、脅しではないと感じて、震え上がってしまったのだろう。
 彼女の手を引き、悠太は全速力で走り出す。駆ける足は、ここへ来たときよりも軽い。今、こんなところで掴まってしまうわけにはいかない。とにかく河原へと戻らなくては。
 けれど走っても走っても橋が終わらない。橋は短かったはずなのに。はたと悠太は気づく。少しも終わりへと近づいていないことに。
 ――駄目だ、追いつかれる!UGGブーツ
 その時、さつきの胸ポケットから光が溢れ出た。神鏡から女性の声が溢れる。
 風邪? 妖怪も風邪をひくのか?
 それにしても、そんなに長時間、雪の中でなにをしてたんだ? 先週末、都内は大雪だった。まさかあんな日に出かけたんじゃ! 電車が止まって大変だったそうなのに。無謀すぎる。アグブーツ
 呆れたり、ムカついたり――何故かホッとしたりもした。その日は、遠子先輩がいないのはわかっていたのだけど、放課後、やっぱり文芸部へ行き、遠子先輩のことを考えながら、一人で過ごした。
 翌日の放課後。部室のドアを開けると、遠子先輩はいつものようにパイプ椅子に体育座りし、本を読んでいた。
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かすかな痛みが、胸を刺した

2010/11/21 
 九年間ずっと――いや、結衣さんと文陽さんが出会ってからずっと、叶子さんは裏切られた痛みを胸に抱えてきたのだ。
 顔を大きくゆがめ、我を忘れて叫ぶ叶子さんに、遠子先輩の嘘を知ったときの自分を重ね、吹雪の屋上でぼくを糾弾する美羽を重ねる。ようやくわかった。
 叶子さんは、作家に裏切られた読者だった。UGG だから自分が作家になり、復讐をしたのだ。もう自分のための物語が綴られることはない。自分で綴るしかない。餓えを癒すように、書き続けるしかないのだと――。
「良かったね、さつき」
 目の前にやってきた母親は、そっとさつきの頭を撫でた。膝をつき、目線を同じにして優しく笑う。
(そうじゃない!)
 母親の肩越しに、二人の姿が見えた。父親に手を引かれていく妹の姿。どんどん小さくなっていく。妹の小さな身体は、ぐいぐいと引き摺られるように連れていかれる。
(ぁ……)UGGブーツ そっちに行っては駄目。あの桜木があるから。そこで恐ろしいことが起こるから。拳を握りしめたさつきの耳に、また声が聞こえる。
川くんの席が今日も空っぽなことに気づいて、ドキッとした。
二日も続けて休むだなんて……。
 よっぽど具合が悪いのかな。あとでメールしてみよう。
 授業がはじまると、泥のような倦怠が訪れた。体がだるく、頭がぼーっとする。すべての感覚が麻痺して、心が感じにくくなっているようだった。アグブーツ 今朝、遠子先輩と会って言葉を交わしたことも……マフラーを返してもらったことも……さよならと言ったとき、遠子先輩が優しく笑っていたことも……ずっと昔のことだったような気がする。
 いや違う。
 かすかな痛みが、胸を刺した。
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