2017/6/15

危ないのは育鵬社だけではない  日本の教育の今

今、全国で小中学校(一部高校も)の展示会が開催されている。市町村教委のHPに載っています。注目は何と言っても初めて作成された新教科道徳の教科書です。小学校1年から6年まで6冊セットで各社の教科書が展示されています。ぜひ閲覧にいって意見を書いてきましょう。
道徳教科書にはまだ育鵬社は参加していません。だからといって極端なものがないかと言えば、そうでもないのです。育鵬社に比べればやや色が薄まっているとはいえ、他社本と比較すると際だった特色をもつのが教育出版の道徳教科書です。教材の選定、上から目線の押しつけ的内容といい、大人が決めた守るべき規範をたたき込むという性格が最も濃厚な教科書です。それも当然で育鵬社に関係した人物たちがずらっと編集・執筆者に顔をそろえているのです。危機感をもった教科書大阪の会がアピールを出しています。これを参考にして展示会で教科書を手に取ってみてください。


2018年度使用小学校教科書採択にあたっての要望書

子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会

 貴教育委員会の教育へのご尽力に敬意を表します。
 現在、2018年度から使用される小学校道徳教科書の採択業務が進められていると存
じます。
 すでに各地で教科書展示会が始まっており、8社の教科書の特徴が明らかになって
きました。それらを読み比べた結果、かなり問題点のある教科書と、子どもたちに
とって重要なことを伝えようとしている教科書があることがわかってきました。
 そこで私たちは次のことを要望いたしますので、ご検討の上、貴教育委員会が子ど
もたちにとって最も良い教科書を採択してくださるようにお願いいたします。

1.教育出版の道徳教科書は問題点が多いので採択しないでください。
 <理由>
(1) 教育出版の5年生の道徳教科書には現職の政治家2名の写真が掲載されていま
す。「下町ボブスレー −町工場の挑戦―」には安倍首相の写真が、「一人はみんな
のために・・・」には野田東大阪市長の写真があります。いずれも本文の内容と直接
の関係はなく、政治家の宣伝のような印象を受けます。現職の政治家の写真を載せて
いるのは教育出版だけです。
道徳教科書に掲載されている限り、子どもたちは“立派な人”だと思うでしょう。し
かし安倍首相は森友学園や加計学園の優遇、森友学園への100万円寄付が疑われ、野
田市長は2015年の育鵬社公民教科書採択の際に政治介入したことが疑われており、い
ずれも議会で追及されている政治家です。そもそも歴史的評価の定まっていない現職
の政治家を、人としての生き方を学ぶ道徳教科書に載せることは不適切ではないで
しょうか?

(2) 教育出版は明治維新を美化し、立志伝中の人物をたくさん取り上げ、西郷隆
盛を3年生と6年生で取り上げています。しかし西郷隆盛は「征韓論」を唱え、朝鮮の
植民地化を強く主張した人物です。西郷の主張を実行した結果、日本は朝鮮を35年間
にわたって支配し朝鮮の人々を苦しめたことが、今になっても日韓関係に暗い影を落
としています。西郷隆盛など歴史上の人物の負の側面を教えずに、お手本になる“偉
人”として子どもたちに教えてよいのでしょうか?歴史教科書とは異なり、道徳教科
書で人物を取り上げる場合はもっと慎重になるべきではないでしょうか?

(3) 教育出版の編著者には育鵬社道徳教科書(パイロット版)の関係者が多く
入っています。貝塚茂樹氏(武蔵野大学教授)、柳沼良太氏(岐阜大学大学院准教
授)、木原一彰氏(鳥取市立世紀小学校)の他、道徳教育に熱心なことで知られる東
京都武蔵村山市立第八小学校からは校長以下3人の教員が入っています。一つの学校
から編著者が3人も入っているのは極めて異例です。貝塚茂樹氏は日本最大の右翼団
体といわれる日本会議のブレーンとして知られ、戦前の「教育勅語」や『修身』を賛
美する発言をしています。育鵬社が発行している道徳教科書のパイロット版は、戦前
の『修身』と共通する軍国美談や天皇賛美の教材が多く、日本国憲法や教育基本法に
抵触すると考えられますが、教育出版の道徳教科書の内容に問題が多いのは、編著者
の構成にもよることが明らかです。

(4) 教育出版の2年「大切な国旗と国歌」ではオリンピックで使用される旗を「国
旗」と明記していますがこれは誤りです。オリンピックで使用されるのは「選手団の
旗」であり、必ずしも「国旗」でなければならないわけではありません。これが混同
されて報道されたりしていますが、「国」対「国」の争いではないというオリンピッ
クの精神にのっとって正確に教えるべきではないでしょうか?

以上のことから、教育出版の道徳教科書は採択しないでください。

2.人類普遍の道徳である「人権・平和・共生」の大切さを教える教科書を採択して
ください。
 <理由>
 道徳教育は古来、その時々の政権の支配の道具として、政権に都合のよい価値観を
信じこませる道具として利用されてきました。近くは戦前、「教育勅語」の忠君愛国
精神が『修身』教科書をつうじて国民にたたきこまれ、国民は侵略戦争をアジア解放
の「聖戦」と信じこんで戦いました。その結果、日本国民は軍人・民間人合わせて
310万人が命を失い、多くの人が生涯癒えぬ傷を負って戦後も苦しみました。被害を
受けたアジアの人々の犠牲者数はその何倍にもなります。
 日本国憲法はその戦争への深い反省から生まれたものであり、日本国憲法の「人
権・平和・共生」の精神は、当然道徳教科書にも貫かれるべきものです。今回発行さ
れた8社の道徳教科書にはこの日本国憲法の精神や、世界人権宣言の精神を伝えよう
としている教科書があります。「人権」問題を個人の思いやりに解消せず、社会的な
問題として取り上げ多くの教材を掲載している教科書や、「平和」問題を積極的に取
り上げている教科書があるのは、編集者の良心がうかがわれます。
 私たちは決して道徳教育そのものを否定しているわけではありません。人間が社会
生活を送る以上、道徳もきまりも必要です。私たちが反対しているのは、国家のため
に命を懸けることが正義だと教える道徳教育であり、社会の責任を問わず自己責任論
を刷り込む道徳教育です。
 私たちは教えるべきは人類普遍の道徳ともいえる「人権」「平和」「共生」の大切
さであると考えます。命の大切さ、人は皆平等であり、どんな夢も平和があってこそ
描けるということを伝え、人としての努力、自立、助け合いの大切さを学ぶ道徳教育
であってほしいと願っています。
 そのような教科書はどれかをよく吟味していただき、より良い教科書を採択してく
ださるように切に要望いたします。
                                      
 以上
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2017/4/27

日の丸・君が代裁判は続いている  

 忖度やら自粛やら要するに自発的隷従が強いられる現在の状況を先取りしていたのが、教育現場における日の丸・君が代の強制だった。2003年の都教委通達(10・23通達)から強制は始まった。以来、500人近い都立学校教員が処分され、さらに不起立で抵抗した教員は定年後の再雇用も拒否される(強制わいせつで3ヶ月の停職処分を受けた者でも再雇用されているのに、戒告処分1回だけで再雇用を拒否されている)という差別的で過酷な仕打ちがされている。そうした有無を言わせず服従を強要されてきた職場では自由にものを言う空気は希薄になり、代わりに沈黙と迎合が支配的になっている。これは今の日本社会で浸透しつつある状況の先取りといえるのではないか。

 再雇用を拒否された元教員は3次にわたって都教委を民事裁判で訴えてきたが、そのうち3次訴訟の高裁判決が26日に出された。2次訴訟が都教委の裁量権逸脱を認めたのに対して、今回の高裁判決は都教委の言い分を鵜呑みにしたものである。原告は最高裁に上告することを決意しているが、以下は判決に対する原告・弁護団の声明である。日の丸・君が代裁判は終わっていない。


声明

1 本日、東京高裁第5民事部(永野厚郎裁判長)は、都立学校の教職員3名が卒業
式の「君が代」斉唱時に校長の職務命令に従わずに起立しなかったことのみを理由
に、定年等退職後の再雇用である非常勤教員としての採用を拒否された事件(東京
「再雇用拒否」第3次訴訟)について、控訴人らの控訴を棄却する不当判決を言い渡
した。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長
らに通達を発し(10.23通達)、卒業式・入学式等において「君が代」斉唱時に教職
員らが指定された席で「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を斉唱すること等を
徹底するよう命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
 都立学校では、10.23通達以前には、「君が代」斉唱の際に起立するかしないか、
歌うか歌わないかは各人の内心の自由に委ねられているという説明を式の前に行うな
ど、「君が代」斉唱が強制にわたらないような工夫が行われてきた。
 しかし、都教委は、10.23通達後、内心の自由の説明を一切禁止し、式次第や教職
員の座席表を事前に提出させ、校長から教職員に事前に職務命令を出させた上、式当
日には複数の教育庁職員を派遣して教職員・生徒らの起立・不起立の状況を監視する
などし、全都一律に「日の丸・君が代」の強制を徹底してきた。
 控訴人らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観・宗教観や、長年の教師とし
ての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史
を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、学校行事
における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そう
した自らの思想・良心・信仰から、校長の職務命令には従うことができなかった。と
ころが、都教委は、定年等退職後に非常勤教員として引き続き教壇に立つことを希望
した控訴人らに対し、卒業式等で校長の職務命令に従わず、「君が代」斉唱時に起立
しなかったことのみを理由に、「勤務成績不良」であるとして、採用を拒否したもの
である。
3 高裁判決は、「君が代」斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条及
び同20条に違反するかという争点については、2011年6月6日最高裁(一小)判決に
従って、起立斉唱命令が控訴人らの思想・良心及び信仰の自由を間接的に制約する面
があるとしながら、公務員としての地位及び職務の公共性から、必要性・合理性があ
るとして、憲法19条・20条違反と認めなかった。
4 また、高裁判決は、都教委による10.23通達及びその後の指導について、卒業
式・入学式等における「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱の実施方法等について、公立
学校を直接所管している都教委が必要と判断して行ったものである以上、改定前教育
基本法10条の「不当な支配」に該当するとは言えないと判示した。
5 さらに、判決は、控訴人らに対する採用拒否も、都教委の裁量権を逸脱・濫用し
たものではないとした一審東京地裁判決(2016年4月18日)を維持した。高裁判決
は、非常勤教員制度が定年退職後の教職員の雇用と年金の連携の施策を補完する機能
を果たしている面のあることは否めないものの、雇用期待は、あくまでも事実上の期
待に過ぎないとした。さらに、わいせつ行為をして停職3ケ月の懲戒処分を受けた者
なども合格させている事例があることを認定しながら、非常勤教員採用の場面で過去
の懲戒処分をどのように重視するかは、都教委に広範な裁量権があり、直ちに平等原
則に違反するとはいえないとした。
しかし、本件と同様の事件(再雇用拒否撤回第2次訴訟)において、東京地裁民事第
36部(吉田徹裁判長)は、2015年5月25日、東京都の採用拒否について、裁量権逸
脱として違法とし同事件の原告らの損害賠償請求を認め、同事件の控訴審において
も、東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)は、2015年12月10日、東京都の控訴を棄
却している(東京都が上告受理申立をして、現在最高裁にて係属中。)。上記二判決
においては、再雇用拒否は本件職務命令違反をあまりにも過大視する一方で、教職員
らの勤務成績に関する他の事情をおよそ考慮した形跡がないのであって、客観的合理
性や社会的相当性を著しく欠くものといわざるを得ず、都教委の裁量権を逸脱・濫用
したもので違法であると判示している。本判決は、これらの判決にも反する極めて不
当な判断である。
6 控訴人らは、本不当判決に抗議するとともに、本判決の誤りを是正するために、
直ちに上告をする。引き続き、採用拒否の不当性を司法判断にて確定するために努力
する決意である。

                  2017年4月26日
               東京「再雇用拒否」第3次訴訟原告団・弁護団
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2016/3/25

都教委裁判で12連敗  都立学校の今

 3月24日、東京高裁は深甚教員の不当な懲戒免職処分をごり押ししようとする都教委のの控訴を却下しました。これについての知人からの情報を紹介します。

◆また負けた都教委 12連敗―東京高裁が都教委の控訴を棄却 一審原告勝訴

3月24日午後、都立高校教員Oさんの懲戒免職処分取消等請求事件で、東京高裁(第4民事部・綿引万里子裁判長)は、都教委の「裁量権の逸脱濫用」を認定し、都教委の控訴を棄却し、懲戒免職処分取り消しを言い渡し、一審原告Oさんが勝訴しました。

都教委は、Oさんの免職処分を取り消した一審東京地裁判決(2015年10月26日)を不服として、東京高裁に控訴していましたが、高裁は1回の弁論(1月21日)で結審し、3月24日に判決日を指定しました。綿引裁判長は、判決日前までの双方の和解を提案しましたが、都教委側は和解を拒否し、昨日の判決に至りました。

これにより、都教委は、この事件について、@地裁での執行停止申立、A地裁判決、B高裁での執行停止申立、C高裁判決、と4回敗訴が続きました。2013年12月以降、都教委は、教育裁判で何と「12連敗」です! 都教委は、敗訴を重く受け止め、上告を断念するように求めます。

◆生徒に寄り添って頑張る教員を励ます判決

この事件は、東京都教育委員会が、女子生徒Aさんに「不適切なメール」を送ったなどとして、2014年7月、都立F高校の教員Oさんを懲戒免職処分としたことに対して、Oさんが免職処分取り消しを求めた事件です。

地裁の口頭弁論の中で、「教え子」の生徒Aさんも証人として出廷し、親に学校をやめさせられそうなほどの厳しい家庭環境で、O先生の援助で学校を卒業できて感謝していること、Oさんを免職処分するにあたり、都教委は女生徒本人の事情聴取もしなかったこと、などを証言しまし。

また、F高校の校長(当時)は、都教委作成の虚偽の陳述書に無理矢理署名・押印させられたが、良心の呵責に耐えかねてその陳述書を撤回する旨の陳述書を裁判所に提出しました。

これらの証言などにより、この免職処分が、生徒を思いひたすら生徒に寄り添う教育実践をめざしていたOさんに対する都教委によるパワーハラスメントであることが明らかになりました。

Oさんは、地裁に続き、東京高裁で執行停止申立を認められ、1月6日にF高校に復帰し、授業をさせてもらえないものの、教務部などの校務分掌の仕事に就き、勤務していました。特に入学選抜の業務の中心で頑張っていました。そして今回の判決を迎えたのです。

高裁判決を受けて、Oさん(数学科教諭)は「高裁でも勝ってとても嬉しい。授業で教室に行けないのは本当につらい。生徒に数学を好きなってもらうため、一日も早く教壇に立ちたい。」と涙ながらに語りました。

代理人の加藤文也弁護士は、次のように報告しています。
「事実認定は、現場で生徒のためにがんばっている教員を励ます内容となっております。

(判決の結論部分は、次のように述べております。)
 「生徒Aが家庭環境に恵まれず、被控訴人はその窮状を見かねて支援の気持ちから生徒Aを熱心に指導するようになり、本件非違行為に至ったという本件非違行為の原因や動機、生徒Aはそのような控訴人の熱心な対応に感謝し、被控訴人が懲戒処分を受けることを望まず、苦情を申し立てた生徒Aの父親も被控訴人を免職にすることまでは望んでいない状況にあること、被控訴人に過去の処分歴はなく、日常の勤務態度についても特に問題はなく、熱心に生徒を指導し、佐藤校長や他の同僚教員からも評価されていること、本件非違行為が発覚した後も命じられた本件研修に熱心に取り組んでいたにも関わらず、都教委は、復職を前提とするはずの研修が終了する前に本件免職処分を行ったこと、そして、何よりも免職処分は、公務員にとって職を失うという重大な不利益を課すものであることを踏まえると、被控訴人に対して本件処分量定に定められた停職よりも加重して懲戒免職処分を選択することは、社会観念上著しく妥当性を欠くものと言わざるをえない。本件免職処分は、懲戒権者たる都教委が有する広汎な裁量を前提としたとしても、なお、その範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであり、違法であると判断せざるを得ない。」

この教員が、1日も早く授業を持てるようにするため、最後のご支援をよろしくお願いいたします。」
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2016/2/2

都立定時制4校廃止に反対する  都立学校の今

 現在、都教委は定時制高校4校の廃止を決定しようとしている。具体的には小山台、雪谷、江北、立川の4校だ。理由は要するに財政問題つまり定時制に金を使うのは無駄だということに尽きる。全く同じ理由でこの20年間で定時制高校は半減してしまった。そのため多くの定時制は入学定員をオーバーして最後のセーフティネットの役割が危うくなっているほどなのだ。
 貧しいが学習意欲のある生徒が通うところといった50年も前のイメージとはちがって、現在の定時制に通う生徒は実に多様だ。不登校であった生徒、障害のある生徒、外国出身の生徒、全日制になじめなかった生徒、つまり日本のマジョリティである全日制普通科からはじき飛ばされた子どもたちが教育を受ける権利を享受できる数少ない場の一つが定時制だといえる。過疎の村の学校を閉鎖するのが人権問題であるのと同様に、定時制高校を財政を理由に廃校するのは教育を受ける権利を侵害する人権問題なのだと考えるべきなのだ。
 東京弁護士会も反対声明を発している。それを紹介します。目下反対署名が展開中です。

夜間定時制高校4校の廃止(閉課程)に反対する会長声明
                  2016年02月01日
                 東京弁護士会 会長 伊藤 茂昭

 東京都教育委員会は、平成27年11月、「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」(以下、「計画案」という。)を取りまとめ、その中の「定時制課程」の「改善」において、チャレンジスクールや昼夜間定時制高校の規模を拡大する一方で、夜間定時制課程(以下、「夜間定時制高校」という。)のうち、立川高校(立川市)、小山台高校(品川区)、雪谷高校(大田区)、江北高校(足立区)の4校を廃止(閉課程)するとした。
 しかし、東京都においては、平成9年度から平成18年度における「都立高校改革推進計画」の中で、101校存在した夜間定時制高校のうち44校が、チャレンジスクールや昼夜間定時制高校への統合対象とされることとなった。これに対し、当会は、生徒らの学習権を侵害するおそれが高いことなどから平成16年6月7日付け「都立定時制高校の廃校による募集停止措置についての意見書」を発表し、再検討を求めた。にもかかわらず、平成16年度以降、定時制高校の統廃合が進められ、現在、夜間定時制高校は44校となっている。
 こうした統廃合の結果、夜間定時制高校は、全日制高校に通うことの出来ない生徒らの最後の受け皿としての機能が期待されているにもかかわらず、平成22年度都立高校入学者選抜においては、夜間定時制第二次募集では、募集定員に対し合計300人を超える応募があった。現在も、廃止(閉課程)の対象とされている立川高校では、平成27年度都立高校入学者選抜の二次募集で入学希望者が募集定員を超えている。こうした状況において、さらに4校の廃止(閉課程)が計画されているものである。
 今回の廃止(閉課程)の理由として、計画案では、まず夜間定時制高校設立の当初に想定されていた「勤労青少年」の生徒は減少の一途をたどり多様な生徒が在籍するようになっていて、多様な生徒の状況に応じた指導を行う必要があるとされている。しかし、当会の先の意見書においても指摘した通り、そもそも多様な生徒のニーズに応える上で、学校の種類や数の拡大はともかく、夜間定時制高校という既存の学校の廃止が必要といえるのかとの疑問は払拭されていない。上記計画が減少してきたとする「勤労青少年」は正規雇用者のみを意味し非正規雇用者を除外していると考えられ、非正規雇用者が増加している実態が踏まえられていないと言うべきである。また、同じく夜間定時制高校の廃止理由とされる、全日制・定時制併置校における施設の共用による利用上の時間的制約という弊害についても、学校現場における長年にわたる自発的努力によって工夫、解決されてきたものであり、さらなる廃止(閉課程)を要するほどの弊害があるのか、疑問がある。
 また、夜間定時制高校は、少人数の家庭的な雰囲気の単学級(ないし少数学級)として運用されてきたとの特性もあって、昼間就業しながら夜間勉学する勤労生徒をはじめ、帰国子女、外国から日本に帰化した生徒、在日外国人などの外国人生徒、社会に出たあと高校卒業の必要性を感じて入学してくる成年者の生徒、高校を中退した生徒、様々な原因で中学校まで不登校であった生徒や引きこもり傾向であった生徒、心身にハンディキャップをもつ生徒、夜間中学出身者などの、多様な生徒を受け入れ、憲法26条第1項に定める、教育を受ける権利を保障する重要な受け皿となっている。これに対し、計画案では、生徒らの多様なニーズに応えるという視点から既存のチャレンジスクール及び昼夜間定時制高校の規模拡大と、チャレンジスクール2校の新設が検討されている。しかし、これらの学校は単位制で、特に3部制の高校については教員同士の情報共有が難しいなどの指摘もされているところであり、多様な課題を抱えた生徒に対して個別・丁寧な対応を目指す夜間定時制高校とは趣旨が異なる。その上、チャレンジスクールは応募倍率が高いことが指摘されており、新設されても狭き門であって、夜間定時制高校へのニーズを持つ子どもたちが、事実上、教育機会を失う結果となりかねない。
 さらに、夜間定時制高校が対象として想定する生徒らにとっては、通学費の増大や通学時間の長時間化は、経済的、体力的、精神的に通学そのものを困難とする可能性が高い。既に、これまでの統廃合の結果、例えば、立川高校定時制課程に在籍する生徒の居住地は、平成27年5月1日現在、全生徒301人のうち、立川市49人、八王子市47人、東大和市29人、武蔵村山市24人、昭島市20人などと広域化している。また、江北高校は平成27年4月7日現在、4学年併せて180人もの生徒が在籍しており、需要が高い。さらに、雪谷高校と小山台高校は、比較的近距離に位置し、2校が同時に廃止(閉課程)の対象となれば、周辺地域の生徒に対する弊害は大きい。なお、計画案においては、既存のチャレンジスクール等7校の規模拡大が検討されているものの、これらの学校の多くは、廃止(閉課程)される4校とは地域を異にし、生徒らが通学に利用する路線も異なっており、4校の廃止(閉課程)を補完するには不十分であることは明らかである。こうした状況においては、4校が廃止(閉課程)となれば、通学に要する経済的、体力的、精神的負担の増大は避けられない。まして、子どもの貧困がますます拡大し、学費等の自己負担を強いられる者が増加している現状においては、こうした負担増が教育機関へのアクセス権に及ぼす影響は重大である。
 以上の実情を踏まえれば、夜間定時制高校4校を廃止(閉課程)することは、現在の夜間定時制高校へのニーズを持つ子どもらにとって、その学習権を侵害するおそれが極めて強く、たとえ限られた予算の有効な配分を理由としても決して許容されるものではない。
 従って、当会は、夜間定時制高校4校を廃止(閉課程)とする計画に対し、強く反対する。
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2016/1/22

教科書疑獄か?  日本の教育の今

 中学校の教科書発行会社が検定中の教科書を約5000人の教員らに見せ、そのうち4000人には何らかの謝礼を渡していたと新聞に報じられている。すぐに連想するのが明治30年代に起きた教科書疑獄だ。この疑獄事件を口実に教科書は国定になったことはよく知られている。自民党が今回の事件を問題視することがあるなら、間違いなく教科書の国家統制を強化する方便として利用することになるだろう。例えば、教科書採択に一般教員の意見を反映させる制度を排除し、教育委員会が排他的に採択を仕切るとか。

 検定中の教科書というのは白表紙本のことをさしていると思われる。文科省に検定申請する際、どこの会社、だれが執筆者などがわからないように白い表紙にして提出するのでそうよばれる。検定中の教科書を外部に見せるべきではないとされている。ましてや謝礼を出したとあっては法的問題にも発展することだった考えられる。教科書会社と教員のモラルが問われると言ってしまえば簡単だが、謝礼を受け取った教員(4000人のうち何人かはわからない)のモラルが批判されるのは当然だとして、問題の根はモラルにだけあるのではない。

 小中学校の教科書採択制度と今回の事件は密接に関係していると私は思う。教科書の採択は市区町村を単位とする広域採択制度がとられている。最大級の採択区である横浜市であれば生徒数は1学年で数万人になる。そして一度採択されると4年間は採択され続ける仕組みになっている。教科書会社にとっては大口の採択区をとれれば4年間食いっぱぐれ無しであり、取りそこなえば4年間収入無し、最悪会社がつぶれかねない。であるならどんな手段を使ってでも採択してもらう努力をしようということになりがちなのだ。白表紙本を持参してご意見をいただくことで教科書を認知してもらう、高額ではなくとも多少の謝礼くらいは出しておこうとなる。私の推測ではこうしたことは教科書会社の間では公然の秘密であり、必要悪としてお互いが認め合っていたのではないかと思う。

 当然ながらこうした営業は大手教科書会社が有利なので、教科書の寡占化が確実に進む。大手の会社は文科省や自民党からにらまれるのを恐れるために、政権の意向に忠実な教科書が作られることなるだろう。

 高校も白表紙本が作られて検定を受けるという点は同じだが、おそらく小中学校のような問題はごくわずかだろう。白表紙本が外部の教員の目にふれることがあっても、そこに金銭がからむ可能性は低い。なぜなら高校の教科書は学校ごとの採択で、しかも一年ごとに採択の変更ありとなっているからだ。どんなに賄賂を贈っても一校に一年しか影響しないのではコストパフォーマンスが悪すぎる。特定の人物に教科書採択権が握られているような学校は営業努力は効果的かもしれないが。

 こうなれば結論は簡単だ。小中学校も学校ごとの採択にし、採択は毎年変わってもよしとし、採択は複数の教員が関わり透明性を確保することだ。

 
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