1キロ溺れた

2012/7/9 | 投稿者: 溺れる人

 ところが、私が小学六年生になると、担任の教師は、もっと滅茶苦茶を言い出した。
 大人でも不慣れな人なら難しい、一キロの遠泳を課したのだ。それも、クラス全員に。

 ウソだろ、できるわけない……そういう声がうずまいたのを覚えている。
 私も、いつもの通り、無茶を言う先生だと思った。
 だが、よくよく考えてみれば、私の一日の水泳部での、水泳による移動距離は、少なくとも2〜3キロには達していた。つまり、物理的には十分達成可能な距離だ。但し、間に休憩はほとんど入れられないわけだが。

 ここも、情けない話だが、いつ挑戦すべきかという時期を、私は自分では決められなかった。例によって、私の様子を見ていた先生が、いきなり私をプールに突き落とす。そして、いつもの調子で、1キロ泳いでこい、というのだ。
 ウソだろ、というのは、もはやクラスメートの叫びではなかった。ところが、今度こそ私は、それを一度でやり遂げてしまったのだ。後で聞いたところでは、先生自身、私がそこまでやるとは想定しておらず、途中脱落してもいいかも、などと思っていたらしい。だが、やれるはずだ、と信じることが、どこまで私に力を与えていたか、それを想定しきれていなかったのだ。

 顔面蒼白になったのは、クラスメート達だった。今まで一番できない奴だと思っていた人間に、先を越されたのだ。この件がきっかけとなって、全員が目標を達成してしまったのだから、ちょっとした事件だった。
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