2012/8/6

信頼できるビジネス  


エイギンスの本では、ダナ?キャランがウオール街に進出して、上げ相場にやられた順末も描かれているが、ダナ?キャランのCEOとしての才覚不足や経営内容については、伊藤操の『マネージダナ?キャランを創った男滝富夫』が詳しい。ダナ?キャランを経営面から支えた滝富夫の半生を描いていて参考になる。同書によると、放漫経営によって株価が下がっても、ダナ?キャランCEOは「株はスカート丈と同じように上がったり、下がったりするものよ」と呑気なものだったという。なお、ダナ?キャランは二○○一年にLVMHの傘下に入ったが、以上の二冊はそれ以前の出版であるため、LVMH傘下入りの話は登場しない。

LVMH傘下のブランドではないが、ハナエ?モリも、マネジメントを仕切っていたご主人が亡くなってから経営がおかしくなり始めた。クリスチャンディオールのチーフデザイナーを八九年から九五年まで務めたジャンフランコ?フェレは、フアッションにおけるビジネスという側面について語るなかで、信頼できるビジネスのパートナーを探せ、と述べているのは注目すべきだろう。

平たくいえば、クリエーションは右脳であり、経営はそろばん勘定の左脳であり、一人の人間が両方できたり、同時に考えたりすることは難しい。ピエール?カルダンのような例外はいるが、あくまで例外である。会社が小さいうちはよいが、ある程度の規模になってくると、経営はデザインのかたわらでするような簡単な作業ではない。ここにこそ、LVMHに傘下入りするメリットがあるといえるだろう。
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2012/7/31

惑覚はとびっきりおしゃれなひとだ  

これを書きはじめたとき、もっとも強い刺激を受けたのが、植島啓司さんが雑誌「ユリイカ」のファッション特集に書かれた小さな断章群であった。植島さんは、競馬やトラソスや快楽についてはいっばい害くのに、なぜかフアッシ田ソについての文章は少ない。が、つねに断片的ではあるが、ファッショソについてもっとも本質的なことを語るひとである。


服はかならずしもそうではないかもしれないが、惑覚はとびっきりおしゃれなひとだ。そういう意味で、ぽくには植島さんの顔にいまは亡き寺山修司の顔が重なる(ちなみに、寺山修司の書きものの多くはファッション論として読めると考えている)。


その植島さんは、ここに収められた文章をぼくが書きだしたとき、最初の読者の役を引き受けてくださった。かんたんな言葉だったけれど、かならずポールを投げ返してくださった。その植島さんにここに「解説」を書いていただいたのは、幸福というしかない。


このたびちくま学芸文庫の一冊として衣裳替えするにあたっては、同編集部の大山悦子さんが、もう一度産湯につけて、耳垢をとり、目脂をぬぐい、混りをあたえ……と、まるで母親のように、いつくしむように介抱してくださった。あとは彼女が用意してくださった美しい衣(おべべ)を待つばかりだ。ありがとう。
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