■メンテナンスの備忘録(1)
SRのバルブクリアランス調整(タペット調整)を久しぶりにやりました。
今日は、タペット調整とオイル交換を両方やる予定ですが、タペット調整はエンジンが冷えているときにやる必要があり、オイル交換はエンジンを温めてからの方がオイルの抜けがよいので、まずはタペット交換から始めます。
シリンダヘッドの中でカムが回ってロッカーアームを押して、ロッカーアームのもう片方がバルブの頭を押すときの「すき間」がバルブクリアランス。ずっと走っているうちにだんだんすき間が増えてきて、ロッカーアームがバルブの頭をたたく音(タペット音)がうるさくなってきます。(少し音がしている状態が適正との情報もあります。)
増えすぎたすき間を適正な間隔に調整するタペット調整、現行バイクのほとんどはタペットの手動調整が不要になっているようですが、SRでは定期的に必要なメンテナンスです。大体5,000kmに1回位の頻度で実施しています。
参照:
タペット(Wikipedia)
手順1:まずシートとタンクを外します。外したシートとタンクはこんな感じで置いておきます。
シートとタンクを外すとこうなります。SRのスリムさがよく分かります。
手順2:シリンダーヘッドのタペットカバーを排気側・吸気側ともに外します。
吸気側のタペットカバーの固定ボルトには、ノロジーホットワイヤのアース線を共締めしてあります。
外したタペットカバーはこんな感じ。排気側(写真上)と吸気側(写真下)で形状が微妙に異なります。
ロッカーアームとアジャストスクリューが見えるようになりました。
手順3:ここからは、すき間を測るシックネスゲージの出番です。
メガネレンチと六角レンチの間に置いてあるのが、ノーマルのアジャストスクリュー調整用の特殊工具(車載工具の一部)です。今回は使いません。
タペット調整は、クランクの圧縮上死点で行います。サービスマニュアル通りだと、クランクケースカバー(左側)を外して、フライホイールの位置で圧縮上死点の確認をする必要があります。でも、それだとカバーを再度取り付ける際に毎回ガスケットを新品交換する必要があるので、私はカバーを外さないで、手順4の方法で圧縮上死点を探っています。
<余談1>:私のSRでは、アジャストスクリューをSRノーマルの四角い頭のスクリュー(調整に上記の特殊工具を使用)から、普通の六角レンチで調整できるタイプのXV400用のスクリューに交換してあります。(外すときは、エンジンの中にスクリューを落とさないように細心の注意が必要で、かなり慎重に作業したのを思い出します。)
交換した際(既に10万km近く走っていた時点)に外したノーマルのスクリューのバルブに当たる側を見ると、若干虫食いみたいに磨耗していました。交換したこと自体は正解だったのですが、今から考えるとスクリューはノーマルのままがよかったと思います。特殊工具を使わなくていいことがメリットだと思って六角レンチで調整できるタイプにしたのですが、実は通常の六角レンチよりも特殊工具のバルブアジャスティングツールの方が狭い場所での作業に適していました。実際、吸気側の調整では六角レンチがフレームにあたってしまい、ちょっとやりにくいです。特殊工具はさすがその作業専用に作られているだけのことはあると思いました。
<余談2>:ケチってクランクケースカバーのガスケットを再利用したのが原因(カバー内に水が入った?)と思われるジェネレータ故障で、多額の修理費を払ったことがあります(泣)→しかも北海道ツーリングでフェリーを降りて上陸翌日の小樽で発生・・・今は懐かしい思い出。
手順4:
4ストロークエンジンの1サイクルで上死点は2回(圧縮上死点と排気上死点)あります。圧縮上死点は「2本のバルブ(吸気側+排気側)が完全に閉まっている状態」=「ロッカーアームがバルブの頭を押していない状態」=「アジャストスクリューとバルブの間に若干のすき間があって、シックネスゲージが入る状態」と解釈しています。
これに対して排気上死点付近では、排気バルブと吸気バルブが同時に開いている(オーバーラップ)ので、「バルブが押されている」=「バルブクリアランスはゼロで、シックネスゲージが入らない状態」となります。
つまり、2種類の上死点のどちらかで、シックネスゲージが入る方を圧縮上死点だと判断します。
SRの場合は、上死点を出すためにキックをゆっくり動かしてキックが固くなって止まる場所(=ピストンが一番上に来ている)を探します。そこで、規定値(吸気側:0.07〜0.12mm、排気側:0.12〜0.17mm)の最低値よりも少し狭いシックネスゲージがすき間に入ったら、圧縮上死点です。シックネスゲージが入らなかったら、そこは排気上死点なので、デコンプを使って圧縮を抜いて、キックを動かしてクランクを360度回転させると今度は圧縮上死点になるはずです。
最近はずっとこの方法で圧縮上死点を探ってタペット調整していますが、不具合がないので多分これでいいのでしょうと思い込んでいます。
手順5:ロックナットをメガネレンチで緩めます。
シックネスゲージをバルブのすき間に入れて、六角レンチですき間を調整。このとき、ぎりぎりでシックネスゲージが動く程度に調整します。よく聞くのは「ようかんを包丁で切るときの抵抗感」です。確かにそんな感じがちょうどいいようです。
私の経験値では、すき間は規定値の最低限(吸気側:0.07mm、排気側:0.12mm)でちょうどいいようです(タペット音が気にならず、圧縮抜けにもならない)。すき間を狭くしすぎると、常にバルブが押されている(常にバルブが開いている)状態になってしまい、圧縮抜け(始動時にキックが上死点で止まらずに空回りしてしまう)の状態になってしまうので注意が必要です。すき間が調整できたら、六角レンチが動かないようにして、ロックナットを締めます。
タペット調整終了(この写真は排気側)
タペットカバーを元に戻して、エンジンをかけてみて、始動時のキックで圧縮抜けがないことを確認し、始動後はシリンダヘッドのタペット音がうるさくないことを確認します。今回は1回でうまくいきました。
SRのタペット調整はエンジンが冷えているときに作業する必要があるので、バイク屋まで乗っていってその場で作業するわけにもいかず、自分でできるようにしておかないと結構面倒です。自分で整備できるメンテナンスの一つでもあり、うまく調整できると満足感も得られていい気分になります(笑)
メンテナンスの備忘録(2)オイル交換・・・に続く。

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