「(その2)高齢者医療2/英国のNHSとロンドン五輪開会式」
医療、介護
その2/高齢者医療(英国のNHSとロンドン五輪開会式)
昨日の続きです。私の左乳房部の炎症は毎日通院して傷口の消毒をしています。外科は待時間が短いのですが、待合室で観察していると、日本の医療制度や介護システムの縮図をみる思いです。待合室には老人保健施設から付き添いのスタッフに伴われてきた車椅子の老人が診察の順番をまっています。中には意識がほとんどないと思われる人がイビキをかいている場合もあります。お年寄りの姿を見る度に、我が母と二重写しになって色々と考えさせられます。
きょう土曜日は車椅子に乗ったおじいさんが一人で受診していました。診察カードを機械に入れるのですが、どうやったらいいのか解らず係員が案内していました。診察が終わって会計が終了したら、処方箋が出ていました。おじいさんは処方箋をどうしていいか解らない様子。窓口の係員が出てきて、「お隣の薬局で買うのですが、私が代わりにもらってきてあげましょう」ということになりました。お隣とはいえ、暑い中を車椅子で買いに出かけるのは難渋です。医薬分業の法精神から言うと、医療側のスタッフが薬局の販売行為にかかわることは問題があるともいえますが、なんと親切な行為でしょうか。
これは医療システムの問題ではなく、病院スタッフの属人的な行為に過ぎませんが、どう考えたらいいのでしょうか。病院には院内薬局がありますが、この場合、院内で処方する方法もあります。これはシステムの問題になります。本来理想とする医療システムが、現場運用では必ずしも賢い制度にはならない一つの例と思います。
医療制度といえば、きょうロンドンオリンピックの開会式がありました。そのなかで英国の歴史を辿るショーがあり、煙突が林立する産業革命のシーンの後、ベッドがたくさん登場する場面がありました。イギリスが世界に誇る「揺りかごから墓場まで」の社会保障制度を表現したもので、アナウンサーは「NHSを表現したもの」と放送していました。
NHS=National Health Service(英国の医療システム)は、公平、無料、国営を貫く英国が世界に誇るべき医療制度です。サッチャー政権下の新自由主義政策にもかかわらず生き残り、ブレアー政権で息を吹き返し、かつ改革に成功しました。ある場で「イギリスでは医者はみんな公務員なんですよ」と紹介したら聞いていた人から驚かれました。「揺りかごから墓場まで」の具体的中身は意外と知られていないのです。日本の医療制度は英国から見習うべき点が多々あると思っています。そんなことを待合室で考えていました。
竹内和久他「公平・無料・国営を貫く英国の医療改革」(2009年/集英社新書)
007になぞらえてエリザベス女王がエリコプターで競技場までやってきてパラシュートで飛び降りるCGシーンもありました。英国的ユーモアは文化の基盤にあることを実感させられました。日本の憲法状況を見るにつけ、マグナカルタ以来の英国近代立憲政治の歴史の深さを見る思いでした。
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