(その25)自宅で鍼灸治療
父の入所は10月6日でちょうど1年となった。毎日の生活は比較的安定しているが、何か精神的に刺激がない。またマヒしている左脚の関節がすこしずつ固まってきている。そこで老健のセンター長に掛け合って自宅で鍼灸治療を受けさせることにした。
鍼灸はかつて母に施術していただいた先生である。
10月7日(水)外出許可をもらって自宅へ連れて帰ってきた。帰宅前に介護士がオムツ交換を済ませておいてくれた。父が1年半前まで暮らしていた部屋はリフォーム済みで、車イスでも床に傷がつかない作りになっている。そこに簡易ベッドを入れた。
11時に老健を出た。車で5分とかからず自宅へ到着した。車庫から車イスごと降ろす。スロープを上がりウッドデッキ側から部屋にはいった。まずは仏壇に手を合わせる。ついでベッドに横にする。「ここは静かでいいね」などという。「お父さんの老後はここがいいね」とも。
正午過ぎに先生が見えた。まずは全身を診て、次いで両手、両脚。さらに腹部へ施術を行なう。全くマヒしている左側に対して、右側から攻めて行った。そんなに強い刺激ではないようだ。置鍼や通電ではなく、接鍼である。
左手を動かそうと耳などに施術したがきょうは動かなかった。痰が引っかかって変な咳をしていたのがすっかり治まった。お腹がグーグーと鳴り始めた。だんだんと効果が出始めたようだ。背中や腰部へは私が半身をかかえている間に刺激を加えた。治療は約1時間行なわれた。とても気持ちよさそうだった。
治療が終わって先生がお帰りになると、ちょっと遅い昼食とした。老健ではパンは出ないので、食パンとジャム&バター、ニラレバ、牛乳、パイナップルなどを食べた。食べ終わって歯磨きなどをすませ、15時過ぎに老健へ戻った。ベッドへ横にして私は帰宅した。
17時過ぎに私が老健へ戻ると、ベッドに横たわっていたが寝てはいなかった。「起きよう」というので起こす。右手を洗って車椅子でラウンジへ。最初はテレビを見ていたが、食事が始まると目を閉じることが多かった。介助を主に完食する。看護師と介護士から「鍼はどうでしたか」と聞かれた。体験がないという。「無痛ですよ」というと驚いていた。食べ終わって部屋に帰る。歯磨きはかろうじて出来たが、介助で磨く。ベッドに横にするとくたびれたという。有意義な一日だったようだ。鍼の効果はすぐには出ないので、気長に様子を見てみたい。
ちょっとベッドの高さが低いが、気持ちよさそうに鍼灸治療を受けた。

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