2011/2/28  22:09

単独と合築の比較2  

 単独と合築の比較表の続く項目を見てみよう。

 「ハイブリッド型図書館」として、単独整備では「設備や資料・情報の問題であり、合築と変わらない」とし、合築では、「設備や資料・情報の問題であり、単独と変わらないが、財源論で言えば単独よりも充実した整備が可能」と書いてある。「変わらない」と書いておきながら、「財源論で言えば」うんぬんという記述があるところが妙だ。

 財源論で言えば、とは何だ?

 これは、単に2箇所にあるより1箇所にある方が見かけ上いっぱいあるように見えるというだけではないか。

 さらに言えば、1箇所にあるものの量の方が少なくても、2箇所に分かれてあるよりたくさん見えるというふうにも読める。

 こんなのは子どもだましみたいなものではないか。

 こんな論法を突き詰めていけば、日本にはいくつかの壮大な図書館があればいいっていうことになってしまう。

 図書館は身近な地域になるべくたくさんあって、密着したサービスを展開すべきだという公共図書館最大の原則がくずれてしまう。この原則があるからこそ、県立図書館のようなバックアップ図書館の存在意義もあり、二重行政ではなく、二段行政が可能なのだ。

 だいたい、戦争でも前線部隊と後方支援部隊が一緒くただったら、うまく行かないだろう。山登りでもベースキャンプがなかったら、登山隊は安心できないだろう。

 そういう根本認識からして間違いがある。

 これは高速道路と一般道路を一緒くたにしたり、路面電車と新幹線を一緒くたにする発想と同じようなものだ。


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2011/2/28  21:51

単独と合築の比較1  

 新図書館基本構想の中間報告には、単独と合築の比較表がある。この表は検討委員会でもわざわざ合築よりにつくってあると指摘されていたが、もう一度よく見直してみよう。

 まず、「資料の収集・整理・保存」である。

 これは、図書館としてかなりのボリュームを占める仕事である。

 単独整備の場合としては、次の事があげられている。

(1) 県と市、それぞれの特性に応じた特色のある蔵書構成ができる
(2) 収集・整理機能は、機関発行等の寄贈資料や、調査研究用の参考
 図書等の資料が多い県立図書館と、迅速性が求められ、ポピュラーな
 本を中心とする市民図書館との業務の違いに応じた体制が組める
(3) 整理機能は、速さの求められる市民図書館と詳細さの求められる
 県立図書館とそれぞれ重点を置いた業務プロセスを設計できる
(4) 保存機能は、県内最後の拠点としての県立と、適宜、一定の除籍も
 可能な市民図書館とそれぞれ適合した体制を組める

 これは、おおむねその通りだろう。

 合築の場合としては、次の事があげられている。

(1) 基本機能は変わらないが、合築することによるメリットと付随する問
 題が発生する
(2) 資料が集積し、県民市民の利便性が高まる
(3) 合築による浮いたお金を資料購入費に廻すことができれば、単独整
 備より充実した資料の収集が可能となる
(4) 図書館の資料構成が、市民のポピュラーな図書と県立の専門性の
 高い図書の二つの山を築く可能性があり、その隙間を埋めるためによ
 り蔵書を充実させる必要が生じる可能性がある
(5)作業効率と書庫のあり方については検討が必要である 
(6)県立と市民の図書の書誌データの購入先(日販かTRC)を統一する
 必要がある
(7) 蔵書統合のため経費が発生する

 1は項目として必要ない。

 問題は2である。「県民市民」というフレーズがよく使われるが、これは大変奇妙なフレーズだ。市民とは高知市民のことだが、こういうフレーズを使うこと自体に、高知市民にサービスが偏在することを示している。
 たくさん本があって、一番、利用に有利な高知市民がばんばん借りていってしまったら、他の県内の市町村にまわす分がどんどん足りなくなるに決まっているではないか?
 県立図書館と市立図書館が別だったらこういう問題は起きない。高知市民は市立図書館におもに行ってもらい(他の市町村民がそれぞれの図書館に行くのと同じように)、それで足りない時に県立図書館に行けばよいのだ。
 県立図書館は、県内全体公平に、それぞれの市町村図書館・図書室で足りない本を協力貸出しや長期貸出しすることができる。
 一緒くたにしてしまったら、この分担はうまく行かない。

 3も奇妙だ。

 合築して浮いた建設費とは、それぞれ単独の単純合計の面積から減らした面積分の費用となっている。しかし、その費用を資料費にまわしたら、今度は本が増えるわけだ。すると、その本はどこに置けばいいのだ。

 器を減らして、中身を増やしたらあふれるに決まっているだろう。

 4から7はデメリットだ。こんなにたくさんデメリットがあるのに大丈夫なのだろうか。

 ただし、4は本当にたくさん資料を買えば解消される。しかし、それだけ資料を買うとなると置き場としての面積がより求められ、合築のメリットはまったくない。

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2011/2/28  21:12

前県立図書館長パブリック・コメント第3弾  

前高知県立図書館長の丸地さんがパブリック・コメント第3弾を出したので、掲載させていただきます。


新図書館基本構想中間報告書(案)(以下、「報告書」)について

合築の賛否については、昨年、高知新聞へ寄稿したとおり反対なので、ここでは繰り返さないが、県として、真っ当な図書館行政が行われるようにするために意見を述べる。

1.「高知県図書館振興策」の策定

 県内の図書館整備が、ぶれることなく行われるために、明確な理念に基づいた図書館振興策を策定し、全県域を対象とした図書館振興を、県教委は県民に約束すべきである。その際には、県民や、図書館の現場の意見を尊重すべきである。

2.「高知県図書館基本条例」の制定

 上述の振興策を制度的に下支えし、担保する「高知県図書館基本条例」の制定が必要である。それには、「報告書」にもあるとおり、新図書館への必要十分な人的・物的投資や管理運営体制(直営であることや、館長の権限強化等)も含むべきことは言うまでもない。

3.「高知県図書館振興策」「高知県図書館基本条例」が必要であることの背景

@ 地域の問題解決には図書館の充実が必要
 これからは、社会情勢の変化に伴って発生する様々な問題を行政や住民が解決・軽減していくために役立つ資料・情報の必要性がますます高まる。したがって、新図書館はもちろんのこと、特に高知市以外の市町村立図書館も、今より人的・物的(=職員体制と資料費)両面を充実させるべきだし、未設置自治体には図書館を設置する必要がある。

A 生涯学習を促進する環境づくりが必要
 学校だけが学びの場ではない。人は常に、何らかの方法で必要なことを学んで生きていく。まさに「生涯学習」という言葉が当てはまるが、その1つが本を読むことである。
図書館は、「社会教育のための機関」だが、教育行政が直接的に関わる学校教育と社会教育のうち、図書館への投資が他県と比べて非常に少ない高知県は、生涯学習のための環境が整備されているとは言えない。県教委は市町村教委と協力し、図書館への投資を充実させて、県民の生涯学習を促進する環境づくりに努めるべきである。
 高知県の高齢化は全国平均より10年先行しており、人口減少も激しい。人口学的に見て人口減少に歯止めをかけるのは非常に困難とは言え、発生が予測される問題を解決する時間を稼ぐ意味で、県人口の減少を少しでも緩やかにするための対策を立てることは、県が取り組んでいる県外住民の移住に関する施策も含めて、非常に重要である。生涯学習を可能とする環境づくりはそのためにも必要であり、それには図書館の充実が必須である。
 
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2011/2/27  15:29

地方自治と図書館  

 以前、このブログでも何回か、都道府県と市町村は対等であることが地方自治法でも明らかになっていると書きましたが、法文上ではきわめてわかりにくいものになっています。
 現在の地方自治法は1999年に大改正されています(その後も何度も改正あり)が、改正の元になったのは、地方分権推進委員会の勧告です。
 この委員会の勧告の都道府県と市町村との関係の部分をリンクしておきます。

http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/2ji/5.html

 地方自治法の大改正では、「関与の法定主義」というものが貫かれています。この改正以前も自治体はやっぱり自治体であったはずなのですが、「機関委任事務」という何だかわからない仕事がありました。これは、都道府県や市町村が国の出先窓口のような位置づけになってする仕事のことです。こういうものがある限り、市町村より都道府県が、都道府県より国が「偉い」という「雰囲気」はぬぐえませんでした。
 そこで、この改正では、本来、国が行わなければならない仕事を都道府県や市町村にやらせる場合は、法律でしっかり定めることとなったのです。これを「法定受託事務」と言います。こういう、イレギュラーなものは、法でちゃんと決めてやりましょうということです。都道府県は自治体なんですから、国がその自治について「関与」することは原則的にダメであって、それをしなければならない場合は法律にしっかり決めましょうということです。

 これは、都道府県と市町村の関係にも言えます。

 従って、今回の高知県と高知市の合築図書館では、県が市に、市が県に関与することになります。県と市は対等なので、市が県に関与するという関係もあります。法定主義という建前から言えば、最低でも双方の条例できちんと決める必要があります。

 しかし、これとても、団体自治(自治体という組織としての自律性)の側面はある程度満たすものの、「住民自治」の面は弱いのではないでしょうか?

 図書館は住民自治と密接に関係します。

 住民が自分たちの地域の課題や問題を真剣に解決しようと思ったときの情報源なのです。この情報源に基づいて、本来、議会その他の討議もなされるべきです。そうでないと「ただの言い合い」やセレモニーに堕してしまいます。

 県全体の課題と高知市の課題は違います。

 それは、日本全体の課題と高知県の課題が違うのと同じです。

 日本全体の課題が優先されれば、高知県は必ず見捨てられます。特に、東京が日本を代表しているかのような考え方がされれば、多くの地方はお荷物でしかありません。

 高知市の課題が優先されれば、高知県内の他の市町村は見捨てられるところが必ず出ます。

 自治体とか地域は、会社とは違います。お荷物とか効率が悪いとかいうような存在ではなく、そこで暮らしている人がいる文化の母体なのです。

 他の地域から移り住む人が増えたところで、地域はそれを柔軟に受容し、新たな文化を創っていくのです。

 そういったものと自治と図書館は一体なのです。この大きな前提を考えずに、県と市を機械的に一体にしようというのは、本人の意向を無視して政略結婚させるようなものです。

 いや、実際、そういう政略があるのかもしれません。これからの様々なことの布石かもしれません。



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2011/2/24  23:43

レファレンス・サービスについて  

 レファレンス・サービスとは、図書館が利用者の調査・研究の援助に応じることである。これは、図書館法にも明記されており、市町村立であれ、県立であれ、両方行うべきサービスである。

 そして、このレファレンス・サービスを行うためには、専門職である司書がいることが必要である。

 もっとも、レファレンス・サービスは調査・研究の援助であって、利用者のかわりに調査・研究を行うことではない。司書は、調査・研究にあたって使えそうな資料を探し、提供するのが仕事となる。

 レファレンス・サービスを行政が行うサービスとしては過剰サービスと考える向きもあるが、それは違うのである。そこまで極端に何でもやってあげるという類のサービスではないし、いくらなんでも、そこまでは実際できない。

 このレファレンス・サービスのためには、資料が必要なので、市町村立図書館の蔵書の量や内容では対応できない場合がある。このようなときに、県立図書館がバックアップする。バックアップの仕方としては、市町村立図書館の職員を通じての問い合わせに応えるという形もあるが、利用者自身が直接、県立図書館に出向いて尋ねたいという場合もある。

 つまり、直接サービスであってもバックアップのサービスであることがあるのだ。

 それから、いくら優れた司書がいても、資料がなければやはり応えられない。司書は資料を通じてサービスするのだ。司書は資料とその組織化(分類などをしたり目録データを作成したりして検索できるようにすること)、そして探索や検索についての専門家であって、個々の分野の内容の専門家ではないのである。いくら何でもすべての分野の専門家になることは天才でもできない。ただ、司書はいろいろな分野の資料・情報・知的資源の組織化や管理(企業の場合はナレッジ・マネジメントにあたる)の専門家なのである。こうして、多くの専門にまたがる課題や問題には図書館が有効となるのである。

 まちづくりや地域活性化などは、こういう複合問題の典型で、図書館で人を寄せて解決しようなどということではなく、図書館本来の機能を使い、そこで自ら学習して解決を図ってもらうのが筋である。(と言うより、そうできなければ、図書館をただ作って人を寄せただけでは、まちづくりにも地域活性化にもならない。)

 そのためには、県立図書館も市立図書館も中途半端な一体化といった奇形ではなく、きちんと独立した組織体になっている方が2段構えの使い方ができて、実は利用しやすいのである。

 本がとにかくたくさんあるといいと思っている人もいるが、多すぎたり傾向がいろいろだとかえって使いにくいということを忘れている人もいる。できてしまってから気づいたのでは遅すぎる。
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