現在、休校中ではありますが、授業再開後、皆さんが図書館にも気軽に立ち寄れる日が少しでも早く到来するように、心から願っております。(※東西の入り口に手指消毒剤・アルボナースを設置しました、学校再開時に御活用下さい。また、換気を徹底するために全ての窓を開けております。)図書館では今年度放映中の、長谷川博己主演・NHK歴史大河ドラマ「麒麟がくる」にちなんで明智光秀に関する書籍やビジュアルブック【←解説本『明智光秀と織田信長』】を昨年度来より購入しております。そこで、歴史小説・時代小説に関して多少なりとも申し上げたいと思います。
まず歴史小説ですが、主要な登場人物が歴史上実在した人物で、ほぼ史実の通りにストーリーが展開します。そして、その主人公の生き方や思想に没入した作者が、主人公の言動にメッセージや主要なモチーフを込めていきます。
これに対して時代小説は、架空の人物「銭形平次」を登場させたり、「水戸黄門」の様に実在の人物を使いつつ史実と違った展開をさせたりします。後者は、天下の副将軍と雖も勝手に他国の領地に入ることはあり得ない時代に、家来の助さん・格さんと一緒に諸国を巡らせ裁きをさせます。実例としては、池波正太郎『鬼平犯科帳』などの様に、史実よりもエンターテインメント性を重要視したのが時代小説なのです。鬼平は監督役として一歩引いて登場するにも拘わらず、同心・密偵・盗賊よりも確かな存在感を持って描かれています。
江戸時代以来、講談の人気が強かったことなどにより、第二次世界大戦以前は史実を踏まえて書かれた小説というものは少なく、本格的歴史小説は誕生していませんでした。(※舞台を過去に採った大衆小説や、史実を物語
風に記述する史伝は存在。)その中でも明治維新の時代を描く、島崎藤村『夜明け前』は歴史小説の要素を持つ秀作とされ、森鴎外も「歴史其儘(
そのまま)」←→「歴史離れ」という2つの形態の歴史小説を執筆しました。その後、昭和期に吉川英治は時代小説で多くの読者を獲得し、「剣禅一如」の境地を求める主人公を描いた『宮本武蔵』は、戦時において広く受け入れられ、大衆文学の転機となりました。(※戦後、武蔵の姿勢が戦争遂行を助長したという批判が知識人から出ました。)
やがて、経済成長期に登場した司馬遼太郎らによって歴史小説は大きく変化しました。司馬は独自の視点から、『竜馬がゆく』『坂の上の雲』などの作品を発表し、その後の歴史小説に大きな足跡を残すことになります。戦前の「武蔵」に対して、戦後の司馬遼太郎の『竜馬がゆく』は青春小説という側面も持ち合わせ、禁欲的な「武蔵」とは対照的に、竜馬は自分
硫椎柔C謀劼餌人佑別瓦鮗存修気擦討いC泙后C泙拭◆悵任鯲「e察涼案瓮肇鵐優襪タ蟶燹蓮戞愆愿貘膺椋辧戮吉村昭は「記録小説(文学)」と呼ばれるジャンルを開拓し、史伝文学(歴史小説)の大家・海音寺潮五郎は『武将列伝[明智光秀も入っています]』などを発表しました。あと、下級武士や庶民の哀感を描き、映像化される原作(『蝉しぐれ』『用心棒日月抄』など)
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また、西洋史に題材を取った小説を多く発表している、塩野七生(『ローマ人の物語』『ギリシャ人の物語』)らの外国歴史小説の書き手が非常に多いのも日本の特徴で、特に中国史に於ける『小説 十八史略』『諸葛孔明』の陳舜臣・『太公望』『夏姫春秋』の宮城谷昌光らが特筆すべき作家です。異言語で非宗主関係の他国についてこれだけ書かれ、読まれているのは世界でも希有な例です。
特に、日本歴史が黎明期の三国時代以前に人気が集中していて、欧米に於いてローマ史やギリシャ史が愛好されているのと似ています。
上記(+下記)の作家・作品は、その作家の全集本所収を含めれば全て配架されています。最近のものがお好きな方には、時代小説作家として新たに注目されている、『村上海賊の娘』『のぼうの城』の和田竜や「合戦屋」シリーズの北沢秋、かつ『蒼穹の昴』『一路』で日中両歴史【時代】小説界の寵児となった浅田次郎の作品を手に取るのが良いかと存じ上げます。【美門 小林】