2014/3/18

桃の花  短歌

雛の節句に供えるのは桃と菜の花であるけれど、新暦で行う三月三日のひな祭りには暖地や温室で育った花が出回るのだろう。東京では桃の花は三月も半ば過ぎである。梅が咲き、桃が咲いて桜の春になるのが順序だが、東京には桃園というのはお菓子屋の名前ぐらいで、近いのは果樹園の多い山梨県だろう。花の時期はその年によって違うから、花を求めての旅は期待外れになることもある。一度甲府の城址公園から遠くにかすむようなピンク色の景色を見たことがあるが、満開の桃畑を散策などという贅沢はとうとう出来なかった。
桃というのは漢詩で李だろうか、中国の話の方に多く出てくるようで、日本では万葉の花は梅、古今からは桜となって桃が少ないような気がする。私の思い出は童謡「春よ来い」で作詞:相馬御風作曲:弘田龍太郎の二番

春よ来い 早く来い
おうちの前の 桃の木の
蕾(つぼみ)もみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている

この歌の桃の木はどんな花だろうと思ったものだ。私の小さなころには上野公園でも桃の木はなかったように思う。だんだん絵本で見るようになった桃の花は可愛らしいピンクで、実物が見てみたいと思ったものだ。その実物をいつ見たのがはじめだったか覚えていないが、見るたびに引き付けられて家にも一本ほしいものだと思うようになった。そうしたら20年位前、家に出入りの大工さんが食べたネクターの種から育てたと言う50pくらいの苗木をくれて、じきに花が咲くようになった。その花は桃色と言うよりは緋色が少しくすんだような八重咲きで、重たい感じだったが綺麗はきれいだった。
桃が咲くとじきに桜になるので、毎年楽しみながらも印象はすぐにぼやけてしまう。大体梅には令夫人のようなきりっとしたうつくしさがあり、桜ははかない恋人の俤か、対して桃には妖艶な中国女性を思わせるところがあるのは、果実の喩も影響するだろうが濃いピンクの芯に墨を含んだような花のせいかもしれない。

ビルの建て替えのとき、屋上の木々と一緒にその桃も捨ててしまったので、知人が新築祝いに植木をと言ってくれたのをこれ幸いと「桃の木!」と頼んだ。今のビルはセットバック分を多めにベランダとしてもらったので日当たりがよく、農園から送られてきた1mほどの桃はすぐに咲いてくれて嬉しかった。「黄桃」の実も取れる物とラベルにあったが花はホントに桃色で、昔絵本で見た桃の花だった。もう五年、毎年の台風や酷暑、大雪などで折れたり枯れかかったりしながらもまた枝をだして少しずつ花を咲かせる、私の可愛い桃なのだ。

桃色のかわゆい乙女戸に立ちて誰を待つらん爪先けりて 多香子
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2014/3/14

「そののち歌会」3月  「そののち歌会」

「そののち歌会」141回に参加しました。
今月のゲストは薮内亮輔さん。「京大短歌」で「塔」第58回角川短歌賞受賞者、二十五歳ぐらいの方で今回の参加者28名28首という数の多さはゲスト人気もあるかもしれませんが、主催者の紀水章生さんが第一歌集「風のむすびめ」を出されたことにあるとおもいます。正直いって歌会は20首くらいがコメントにも選にも楽なのですが、大勢の参加者があるのは紀水さんの人柄なのだろうと思います。

お題は「かばん」。物が一つのお題はイメージとしても固定化されやすいので難しいと思ったのですが、さすがに皆様それぞれに工夫をしていました。大勢の効果かコメントが活発で、読みもさまざまでハッとするような読みもあり面白かったです。私も好き勝手を書いて、後で自分がそう書かれたらいやだったろうと言う思いもあり、リアル歌会ではもっときつい思いもするのだろうけれどコメントが付かないのも寂しいものです。
私の歌「かばん」

きみ逝きて窓辺に残る折りかばん<さみしいね>にも知らん顔する                        多香子

私自身は「かばん」と言うお題が苦手で、前にもN短で苦労したことがあったなと思ったので、五つぐらい作ってみたのですが、この歌会にはつい甘っちょろい歌を出したくなってこれにしました。モデルはないと言うか、この年になると人を失う経験は多くなるので、春は別れの季節も思わせるのですね。別れとともに新生活としてランドセルの歌も作ったのですが、他に二首出ていました。7点頂きましたが、点をくださった方で丁寧なコメントを書いてくださったのが本当に嬉しかったです。「そののち歌会」newで検索してくださると全体がみていただけます。
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2014/3/10

秀歌(27)坂井修一  秀歌読みましょう

雪はもう降らないだろうが、寒い日が続いている。今日はまたまた毎日新聞の歌壇五首詠の切り抜きで、今回は坂井修一さん。今度は日付があって今年の一月二十日、月曜日の歌壇俳壇面である。
坂井さんは「かりん」の馬場あき子さんのお弟子で奥様はおなじ「かりんの」米川千嘉子さん。松山市出身で東大卒、東大の先生になった理系の歌人である。(永田和宏さんも京大で理系で先生)このごろは理系の歌人は多く、大成しているような気がする。前のNHK短歌の選者で、根っからの文系である私ははじめの頃坂井さんの歌には?が多くついていた。ネットで短歌を見るようになって若い人がテキストとウェブ上で名前を並べているのに気が付いて、勉強しなおしだと思ったのは坂井さんのお蔭かもしれない。「夢」という題の五首詠をならべる。

ズームするグーグルマップ いにしへのすべての風の故郷楼蘭

西域に死ぬほどの夢ありし日の夜光杯ほとほとわが手にあそぶ

死んだなら時の魔術師になるだらうキルギスの野の蟻の女王

わたくしの体ほにゃほにゃぺったんこしばらく旅はダメと主治医が

きみは見よタクラマカンの駱駝の背 夢に傷つく葡萄のいのち

このお歌からみると、坂井さんは病気をなさって旅は禁止になってしまったらしい。そこでグーグルマップでウェブの旅をしている。ウェブ上では好きなところに行けるので、歌人は中国奥地の砂漠に飛び、シルクロードの夢に遊ぶ。確かに医者ならば止めるであろう。弟夫婦は毎年のようにそんな秘境に出かけていたが、年をとったら体にきつくやめにしてしまった。
現代短歌は難しく、塚本邦雄は中々手におえないが、勉強し直し詠み直しと思った一二年で坂井さんのお歌はすこしわかるようになった。絶対だめだろうと思っていたN短でも佳作に二首とっていただいたのが懐かしい。テレビ画面での印象では真剣で元気な方だったのに「ほにゃほにゃのぺったんこ」が本当ならどんなご病気かわからないが、心配をしてしまう。まだ56歳ぐらいだからお元気になって「夢」を本当の旅にして欲しい。しかし、ウェブ上の旅を神秘的な西域の歌に仕立ててしまうのはさすがだと思った。
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