2014/8/6

「われは海の子」  短歌

夏だから海の話がいいかな、と思って唱歌「われは海の子」の歌を思い浮かべた。でもこの歌についての思い出を書いていくと、多分脱線するので、ああまたと諦めて欲しい。
調べてみると、この歌は明治43年「尋常小学読本唱歌」に編纂された曲だそうで、いわゆる「文部省唱歌」というものだ。母など戦前に学校を出た人たちはただ「唱歌」と言っていた。作詞作曲者は不詳となっているが、ウィキには宮原晃一郎と芳賀矢一の名が挙がっている。
もとは7番まであったのだが、戦後は3番までにしたのは、7番の「いざ軍艦に乗り組まん」のような勇ましい歌詞がひっかかったのと、戦前の長い歌詞が子供に向かないと判断されたのではないかと思う。この歌をはじめ、私達が小学生の頃は新しい歌のように思っていたが、あとからびっくりするほど古い歌と知るものは多い。では、まず歌詞を三番まで

(1)我は海の子白波の   さわぐいそべの松原に
  煙たなびくとまやこそ わがなつかしき住家なれ

(2)生まれて潮に浴みして 波を子守の歌と聞き
  千里寄せくる海の気を 吸いて童となりにけり

(3)高く鼻つくいその香に 不断の花のかおりあり
  なぎさの松に吹く風を いみじき楽と我は聞く

こうして書きながら歌っていると、結構覚えている所と、忘れている所があるが、子供に分りやすい歌詞ではない。日本の歌は文語調で言い回しも古いから、耳だけで聞いていると頭の中で変換する時にとんでもない語を当てていることがある。
私がこの歌を初めて教わったのは、五六歳ごろ学校ではなくて親戚のお兄さんが、ハモニカでメロディーを吹きながら歌詞を教えてくれたのだ。そこで耳から入った歌詞は、子供の頭の中で空想されておかしなことになる。私の場合一番の「煙たなびくとまやこそ」が分らなくて「住家」だから家なのだろう、お兄さんは「貧しい家」と教えてくれた、ああきっとあそこのような所だわ。と思った所は当時上野の池の端に都電が走っていて、七軒町というあたりは板葺きのような家がびっしりとたつ裏側を線路が走っていた。貧しいには違いないが、町場の戦後のバラックよりはましな小住宅であった。上野には海も無いのに子供は変な事を思うものである。
少し大人になっても、和歌の「うらの苫屋」を浦ではなく、裏と思って、やっぱりあのような所と確認していたが、それが間違いと気づいたのは高校生くらいだった。この話は「赤い靴」が人さらいの歌だと思う類だが、気付くのは遅かったと思う。

ハモニカを上手に吹ける少年は海の匂いを思い出させる 多香子
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2014/8/2

秀歌(35)宮柊二E『獨石馬』  秀歌読みましょう

『獨石馬』とは、中国の墓陵を守るために飾られた古代の石馬が、その陵墓は風化してしまい草原にひとり石像のみが経っている光景。柊二はそれを写真でみて、寂寞たる思いに駆られたのか、第八歌集の名前に付けた。昭和41年〜47年の作品を集め、柊二53歳〜60歳の歌である。昭和50年刊行。

今では53歳は中年、60だってまだまだ若いのだが、戦争に命をすり減らし戦後の混乱を生きてきた人には、肉体の衰えはやってくる。この間糖尿病を得て昭和44年には入院生活もする。今では糖尿病は内分泌の免疫異常の部分も分ってきて、一生の病気でも管理していけるものだが、その頃はまだ「治らない病気」で失明や足の切断などもある病気だったなと思い出す。柊二もいよいよ老いが来たと思ったろうし、動ける内という思いもあったか旅の歌、帰郷の歌も多くなっている。

銀杏と胡桃(くるみ)を箱に送りきぬ雪すでに降る越の木の実ぞ

不安なる渚のごとし夕映の森林わきの舗道見えゐて

犀川の夜空に寒く星満てり宿らんとする心ひもじき(金沢)

わが持てる小さき童の石ぼとけ亡き子悲しむ親の作りし

春逝く夜柱時計の鳴りそめて籠の中なる文鳥騒ぐ

はろばろと声聞こえけりがらくたの躰なりともなほ愛(を)しめよと

戸を引けばすなはち待ちしもののごと辷り入り来ぬ光といふは

胸ぞこの底滓(そこり)のごとき寂しさを手掴みに掴み投げ棄てたきを

抽出しの一つ一つを整理してわれはゐにけりさびしき朝なり

通りゆく猫とどまりて都忘れの花嗅ぎたるは何故なりし

秋の日は洩れきて砂に動きをりもう一度だけ会ひたきものを(米川稔)

尋ねきて多胡の藤をば仰ぐとき病ひ癒ゆべく楽しよ我は

十二首を並べたが、決して一つのテーマではなく1200首を越える歌は様々に展開して、病を持ち不満や不安もありながら、いよいよ輝き、またやさしくもなってくる。前集でもそうだが友人知己の死も訪れ、11首目のような挽歌は他にもいくつも見られる。これから先の歌集は、晩年に向かって病気と家族自身を見据えた歌が多くなるが、それもまた味わい深いものであろう。
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