2016/1/29
秀歌(60)佐伯裕子 「角川」十首詠より 秀歌読みましょう
佐伯裕子さんは「未来」に選歌欄をもつ歌人で、東京生まれ学習院卒で近藤芳美の弟子という諸々の事より、今はNHK短歌の「胸キュン」の選者としてみんなに知られているのではないだろうか。私は歌集はまだ読んだ事がないが、「未来誌」や角川、N短テキストなどで読んでいると肌合いが東京人という感じで、好きな歌人である。
角川「短歌」去年の11月号の十首詠から五首を引く
「寝ころんでみる」
子を真似て寝ころんでみる胸のうえ過ぎゆく風にふと覚えあり
寝ころべば見えわたる空きらきらと今日この窓は空の中心
四囲は草 とり残される子とわれの頭上にぽかっと雲の浮きおり
雑草の騒立ちやまぬ戸のめぐり何処にでも在る不幸が匂う
郵便配達研修に行く子の背中 世間は恐くてただ懐かしい
おもしろいというか、不思議な空間の広がるお歌と思った。初めにも子供が郵便配達の制服を着ていくという歌があり、多分息子さんのことであろうと思われる。以前から私性と虚構の論争などがあるが、そういう歌壇の風習から行くとこれは作者の実生活と普通は読むのだが、どうもそうとも思われない。私は自分が「真っ赤な虚構を売り物にしている」と言っている人なので、これはそんなことを考えずに「歌の空間として」味わえばいいのだろうと思う。
この他に「子の籠る」歌も出てきて、中年の母と社会に出るくらいの息子の物語として読むことが出来る。社会の生きにくさ、先の世への不信感を抱きながら、息子のように寝ころんでみて親子の軌跡をとらえていく。歌にその感覚が軽く美しく漂っている。このような不思議な明るさや透明感を得た人を羨ましくも素敵と思う。ちょっと嫌な事があったのだが、お歌を読み返すと自分も透明に近づいていく気がする。
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角川「短歌」去年の11月号の十首詠から五首を引く
「寝ころんでみる」
子を真似て寝ころんでみる胸のうえ過ぎゆく風にふと覚えあり
寝ころべば見えわたる空きらきらと今日この窓は空の中心
四囲は草 とり残される子とわれの頭上にぽかっと雲の浮きおり
雑草の騒立ちやまぬ戸のめぐり何処にでも在る不幸が匂う
郵便配達研修に行く子の背中 世間は恐くてただ懐かしい
おもしろいというか、不思議な空間の広がるお歌と思った。初めにも子供が郵便配達の制服を着ていくという歌があり、多分息子さんのことであろうと思われる。以前から私性と虚構の論争などがあるが、そういう歌壇の風習から行くとこれは作者の実生活と普通は読むのだが、どうもそうとも思われない。私は自分が「真っ赤な虚構を売り物にしている」と言っている人なので、これはそんなことを考えずに「歌の空間として」味わえばいいのだろうと思う。
この他に「子の籠る」歌も出てきて、中年の母と社会に出るくらいの息子の物語として読むことが出来る。社会の生きにくさ、先の世への不信感を抱きながら、息子のように寝ころんでみて親子の軌跡をとらえていく。歌にその感覚が軽く美しく漂っている。このような不思議な明るさや透明感を得た人を羨ましくも素敵と思う。ちょっと嫌な事があったのだが、お歌を読み返すと自分も透明に近づいていく気がする。

2016/1/22
「毎日歌壇」掲載 毎日歌壇他
去年は毎日新聞の「毎日歌壇」投稿を始めて一年に五首もの掲載をしていただいたので、夢見心地と間の空白の辛さを味わったことでした。いつものんびりとやりたいと言いながら、どんな性格なのかこうと決めた日に投稿しないと気持ちが悪いような気がしています。毎日が時間で事の運ぶ介護生活だからかしら(ヘルパーさんも曜日で来る人が決まっているし、往診医の時間とか神経を使っています)母に変化があると大変なのですが、なるべく同じように暮らしていきたいと思うのです。
それでも月曜の朝は新聞が気になって、朝早くにネットで「毎日歌壇」を見てしまいます。今年はどんな年になるのだろうと思っていたら1月11日付「毎日歌壇」米川千嘉子選で【特選】をいただきました。
「君だけに」とジュリーが指を指したこと平和があったあの紅白のころ 河野多香子
【評】熱唱する大スターに熱狂した紅白。そんな昭和が遠くなって、その頃の「平和」とそれが信じられた時代に気づく。
米川さんにとって頂くのは三首目でその二首が特選というのは、相変わらずびっくりしてしまいます。
米川さん、ありがとうございました。
「毎日歌壇」はウェブ上で掲載が見られたりするので、若い新人が増えたと前からの常連さんが言っていたけれど、加藤治郎選歌欄には「うたの日」に入ってきた人たちの名前を見かけることが多いと思います。私は新聞投稿は新人だけど「若くない」ので加藤欄には投稿していないのですが、若い人は「うん、新聞に載ったよ」ぐらいの感じなのかなーと思ったりして、ギャップを感じています。(私は毎日新聞をとっているので、他の新聞はあまりよく知らないのですけれど)毎日はウェブ上でも見られるので、ネットの人たちが近く感じるのかも知れません。
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それでも月曜の朝は新聞が気になって、朝早くにネットで「毎日歌壇」を見てしまいます。今年はどんな年になるのだろうと思っていたら1月11日付「毎日歌壇」米川千嘉子選で【特選】をいただきました。
「君だけに」とジュリーが指を指したこと平和があったあの紅白のころ 河野多香子
【評】熱唱する大スターに熱狂した紅白。そんな昭和が遠くなって、その頃の「平和」とそれが信じられた時代に気づく。
米川さんにとって頂くのは三首目でその二首が特選というのは、相変わらずびっくりしてしまいます。
米川さん、ありがとうございました。
「毎日歌壇」はウェブ上で掲載が見られたりするので、若い新人が増えたと前からの常連さんが言っていたけれど、加藤治郎選歌欄には「うたの日」に入ってきた人たちの名前を見かけることが多いと思います。私は新聞投稿は新人だけど「若くない」ので加藤欄には投稿していないのですが、若い人は「うん、新聞に載ったよ」ぐらいの感じなのかなーと思ったりして、ギャップを感じています。(私は毎日新聞をとっているので、他の新聞はあまりよく知らないのですけれど)毎日はウェブ上でも見られるので、ネットの人たちが近く感じるのかも知れません。

2016/1/15
正月「折句」掲示板「風」より 短歌
一月一日に私たちのやっている掲示板「風」では私が音頭取りで「折句」の会を開きました。お題は「あけまして」五文字で、それを頭に歌を詠むものです。詠みたい人が詠めるだけ、評もなにもつけないという目出度い企画でした。
どうなることかなあと思っていたら、みなさん堂々のお歌を出してくださいました。私としてはすごく嬉しくて、そのまま流してしまうにはもったいないとブログに載せさせて頂くことにしました。三首詠んだ方もいましたが、お一人一首ずつ管理人風太郎から並べることにしました。
折句「あ、け、ま、し、て」
秋篠の今朝の初日を待つひとに新春寿ぐ光(て)る陽うれしや 風太郎
朝の門にけふを寿ぐ松竹梅 幸せはここに手塩の飾り がむし
明け初める気高き富士の眩しさにしみじみと見る手を翳しつつ しおり
あさぼらけ今日は佳き日と窓を開け静かに仰ぐ天空の星 夕鶴
あらたまの今朝も寄せ来る眞白波 志賀海(しかうみ)神社に手合わせ祀る 梅花
編み終えた毛糸のセーター 待ちかねた新年会の手紙送られ キヨ
朝早く景色を見んと窓の外 新年迎え天に日輪 権一徹
明けそめぬ気配に目覚め真夜中の静けさ破る天の雨音 こたきひろし
ありあけのけぶるがごとき松の葉にしみじみ思う天下泰平 多香子
実施時には分りやすいように「わかちがき」にして出しましたが、みなさん歌としても練られたものがありますので、つめて載せることにしました。
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どうなることかなあと思っていたら、みなさん堂々のお歌を出してくださいました。私としてはすごく嬉しくて、そのまま流してしまうにはもったいないとブログに載せさせて頂くことにしました。三首詠んだ方もいましたが、お一人一首ずつ管理人風太郎から並べることにしました。
折句「あ、け、ま、し、て」
秋篠の今朝の初日を待つひとに新春寿ぐ光(て)る陽うれしや 風太郎
朝の門にけふを寿ぐ松竹梅 幸せはここに手塩の飾り がむし
明け初める気高き富士の眩しさにしみじみと見る手を翳しつつ しおり
あさぼらけ今日は佳き日と窓を開け静かに仰ぐ天空の星 夕鶴
あらたまの今朝も寄せ来る眞白波 志賀海(しかうみ)神社に手合わせ祀る 梅花
編み終えた毛糸のセーター 待ちかねた新年会の手紙送られ キヨ
朝早く景色を見んと窓の外 新年迎え天に日輪 権一徹
明けそめぬ気配に目覚め真夜中の静けさ破る天の雨音 こたきひろし
ありあけのけぶるがごとき松の葉にしみじみ思う天下泰平 多香子
実施時には分りやすいように「わかちがき」にして出しましたが、みなさん歌としても練られたものがありますので、つめて載せることにしました。
