2018/11/30

12月の歌  

師走は走っているうちにあっという間に終わるから、少し早い目に「月の歌」をアップしてしまおう。しみじみと年の変るのを思えるのは本当の年末で、まだまだ一か月あるのだが、今年は急逝した義妹の仏事で新たな事をしている気分になってしまった。
数え間違いで本当は「金婚式」だった分も記念旅行は来年回しにして今年はとにかく「何とかなることを、何とかする」年末のようだ。慌ただしいばかりなので、12月の歌は久々に華やかな恋の歌を

「冬の真ん中」

遠くから走って来てね神宮のいちょう並木が黄に染まる道

消えてゆく思い出の如くしののめに君の腕(かいな)の中で見た雪

暮れなずむ藍色の空背にしょって、おでんの匂いの家に帰ろう

「俺だよ」と多分オレオレ詐欺なのね、三年振りの貴方の電話

君と逢う冬の真ん中まぶしさに南天の実も赤く色づく

市場にも行かずあなたを帰さずにつばき咲き散るこの一週間

はやばやと来年の暦に○つける、鬼など笑えあなたに逢える

自分から気持ちを持ち上げて行かないと、寒い時期は布団にくるまっていじいじしているほうが良くなってしまう。お寺に行こうとタクシーに乗ったら、この間まで緑だったイチョウもきれいに黄色くなっていた。馬鹿にしていた山茶花も咲いてみると美しい八重のピンクだったりすることもある。がんばろうと思う。
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2018/11/23

「読売歌壇」掲載  毎日歌壇他

遊びと言うより葬儀だとか墓参とかで電車に乗ることも増えて来たけれど、都心は地下鉄移動が多く、大船、鎌倉と行っても慌ただしくて、ホームからの景色も心に沁みないのです。でもタクシーに乗ってもそこから見える景色はマンション、住宅の姿ばかりでゆとりが無くなっているなあと思います。

私の歌は思い出を追う事が多くなり、昔の駅、昔のホームを思い描いているけれど、読み手は年代によって自分の知っている場所を思い浮かべるのかなあと、このごろ不思議に思うことがあります。(お教室などでも、これは何時の場面ですかと聞かれたり、分らないかも知れないと話す方がいたりします)

11月19日付「読売歌壇」俵万智選で一首とって頂きました。

初恋は赤く小さな柿の色代々木の駅のホームに残る    河野多香子

読売は四か月ぶりで、とても嬉しいです。この代々木駅のホームといえば、私にとっては高校時代「代々木ゼミ」の夏期講習などで乗り降りした思い出のホームです。そのころ初恋はもう済んでいて、国語の先生に恋をしていた時代なのですが、代ゼミには特別講座で小田実(私は取らなかったけど)をはじめ面白い大学の先生が教えていて、受験だけでなく文学の勉強のためになり、私の財産のひとつになっています。

俵万智さんは高校は北陸だが推薦で早稲田に入って佐々木幸綱さんに師事「心の花」の歌人です。代々木の雰囲気も知っているかなと思って出しましたが、まだ50代の彼女にはこのホームはどのように映ったのだろうと取って頂いてから考えたりしました。
俵さまありがとうございます。
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2018/11/16

秀歌(81)田野陽「角川短歌」10首詠  秀歌読みましょう

田野陽さんと言う方はあまりなじみの方でなく、年鑑を見たら昭和6年生まれ、佐藤佐太郎の「歩道」で評論端の方の様だ。私はアララギぜんとしている歌ではないので、佐太郎系は殆ど読んだ事がなかった。この前「歌会」でお題「坂」に御茶ノ水の坂を詠もうと思ったら、このかたのお歌を見て、「本郷の坂」に取り替えた。それでここに紹介しようと思ったのだ。「角川」10月号から五首を

「駿河台界隈」

楽器店ならぶ喧噪身に浴みて熱風の吹く文坂あゆむ

明大の木かげの椅子に炎熱を避けて憩へる老人ふたり

缶詰になりて文士ら執筆をせしホテルなりてんぷらの味

雁木坂紅梅坂さらに甲賀坂梍角坂(さいかちざか)さへありて候

エレベーターエスカレーター未だなき遺物のやうな御茶ノ水駅

私の家の周りを坂を中心に歌を作っているので、私にはよく分る光景だ。では知らない人はとなった時に、知らなくてもそこはかとない既視感を相手に渡せたら歌は成功なのかしらなどと考えた。
五首目の駅の状態は長い事この通りだったが神田川沿いのホームは狭く、川を蓋して駅ビルにする案も実現しなかった。(それで皆喜んだのだが川を覆ってしまった飯田橋など暑くなってしまった)それがようやく橋や周りの地盤改善をして、駅コンコースを二階につくりエレベーター、エスカレーターを作ることになったのだ。地下鉄に比べるとそれほど長くない階段、古くからの店屋の地権等を考えるとそれほどの変化はこないだろうし、少しは昔の風情も残るものと思っている。
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