2019/3/29

「NHKテキスト」四月号  NHK短歌

三月の半ばは春が足踏みして、風の冷たい日が多かったが空は真っ青に見えた。学校の跡地「小川広場」の木蓮もようやく花開き、桜もどんどん開いていきます。もう四月、春休みなどと縁の無くなった私達でも少し心が浮き立つのですが、NHK短歌の選者も四月から新メンバーに代り、どんな一年になるのかなという期待もありますね。

長いこと音沙汰のなかった「NHK短歌テキスト」 四月号で松村由利子選「子ども」の佳作秀歌に選んでいただきました。

家路ゆく子どもの群れにひそんでは見え隠れする点子ちゃんとアントン    河野多香子

N短は四月で新選者に替わりますがテキストは三か月後なのです。それでも年度末近くの滑り込みと言う感じ、それなりにとても嬉しいことです。

「点子ちゃんとアントン」というのは私の大好きな児童文学作家(詩人でも、大人向けの作家でもあります)ケストナーの作品です。ケストナーの「エミールと探偵」や「二人のロッテ」には複雑な社会環境によって貧富の差や片親家庭など否応なく置かれた自分の場所で、賢く懸命に(ときに冒険的に)人生を切り開いていく子供たちが出てきます。第一次から二次世界大戦の間のドイツと言う日本よりもひどい思いをしてきた国の中で、曲がることなく手をとりあう少年少女の姿。いますごく不安定な日本の国の中でも、きっとそう言う少年少女に居て欲しいと言う思いでこの歌を作りました。
松村さんもケストナーがお好きで、きっと分って下さったことと思っています。本の内容を知らない人には分らない歌かもしれないけれど、これは選者に向けて送った気持ちでした。松村さまありがとうございました。
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2019/3/22

秀歌(84)山川築「角川短歌賞」受賞第一作30首より  秀歌読みましょう

山川築さんは昨年第64回角川短歌賞を「オン・ザ・ロード」で受賞した27歳の若者である。「未来」所属であるが、ツイッター上「うたの日」で「もりのさと」さんのネームで歌を並べたことのある人と知ってびっくりした。もともと父上も歌人、お兄さんの創さんもY川さんであることが分かってまたびっくり。初めは「草野球」「ゲームセンター」と言っていた「うたの日」からだんだん賞を取る人が出てくるようになったのは喜ばしい。恒例の「受賞第一作」の載っている「角川短歌」12月号から9首を引く

「眠りに寄す」

夢とうつつのはざまにひとつ窓ありてそこへ差し込む朝の日ざしよ

外へ出る支度をすべてととのへてすきとほる手錠をはめ直す

犬小屋に犬は眠れり英雄を殺しし者の名は忘られて

鉄塔が西日の中に燃え落つる予感に浅き午睡より覚む

回想に表示の変はる列車よりなまあたたかく息がもれ出ず

仲秋の日は暮れかかり食卓の子持ちシシャモは口を開けり

ゆゑのなき怯えは足を濡らしをり地下書庫までの段をくだれば

喉笛をはつかに鳴らしみづを飲む夜の底ひの木椅子にかけて

空よりも雲の明るき夜ならば蠍の星は胸にし冴えよ

彼は文語旧かな派でこれも近頃の若い人に見られる傾向だけど、選者の方々が選考座談会で「年齢が高いのでは」と言っていたようなのは面白い。「角川短歌11月号」受賞の言葉で「うたの日」の管理人ののさんに謝意を表していることに意表をつかれた。
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2019/3/15

都美術で芦雪と会う  

先月上野の都美術で開催されている「奇想の系譜」という江戸期の変った構図の日本画家八人を集めた展覧会に、意を決して行ってきた。上野だから大げさだけど、しばらく展覧会に行かずにいたものだから、友人とのタイミングが計れなかったりして、一人で行くのがいいと決心するのにちょつと掛かったのだ。
一番の目玉が伊藤若冲だから混むかもと思ったが、東博に比べると都美術の知名度は低いのかも、土曜日でもさほどのことはなかった。私の目当ては「長沢芦雪」で、長い事芦雪の「虎図」に逢いたくて憧れていたのだ。

芦雪を私に教えたのは、まだ一人旅をしていた頃の母で、紀州をぐるっと旅していたとき丁度出来た串本の無量寺の「応挙、芦雪記念館」で可愛い虎と出会ったと言うのだ。その時の図説や絵葉書で動物を「かわいく」描く画家が長沢芦雪と記憶した。その後の長い介護生活で「いつか行く旅」も夢のまた夢、若冲の展覧会(若冲の虎も猫のような物で可愛い)も行かれなかった。

私が子供のころの都美術はうす暗い建物で、随分広かったけれど今の新しい建物はバリアフリーだけど、でこぼこして迷子になりそうな建物にいくつもの展覧会が開催されている。その分案内人も多く配置されて、何でも聞いてしまう私のようなおばさんは便利に過ぎたが結構歩いた気がする。
入ってすぐは若冲のコーナーなので、人気も高く人が溜まってしまうので適当に見ながら「虎図」はしっかり猫であることを確認、一階上がって芦雪の部屋に入ると画像で見かける大きな「白象と黒牛」の展示、牛の下にちょこんと居る「白い子犬」が有名。象に停まるカラスもかわいい。そして猿も龍もかわいいがお目当ての「虎図」に会う。これは紀州の襖絵のような大きい虎ではないが、マスカラを付けたような可愛らしい顔はいかにも芦雪。アメリカからの出展であった。

芦雪に会えてよかつた。数はそう多くなかったが迫力も奇想の構図も若冲に勝るとも劣らない作家だなあと大きな感動を貰った。私は日本画の虎はどうも猫を写生したのではないかと思っているので、その確認もした事になる。

猫を見て描きし目玉か可愛らし芦雪の虎も若冲の虎も   多香子『猫と暮らせば』   

(他の作家は曽我蕭白、岩佐又兵衛、狩野山雪、白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳 都美術四月七日まで)
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