2016/11/11

秀歌(66)岡井隆角川31首より  秀歌読みましょう

好きな歌人、気になる歌人を(そんな力もないくせにと言われるなあと思いながら)紹介しているのは、初心の方に色々な人の歌を読んでもらい、自分がどんな歌が好きでどんな方向を探りたいのかの足掛かりにして欲しいと言う気持ちからだった。東郷雄二氏も「歌集」から入ることは難しいと言っているように、数種の歌でも触れることにより興味を持つという事は「歌の沼」への第一歩と思うからだ。
岡井隆氏は「未来」の主宰として押しも押されもせぬ大歌人だけど、宮中御用掛を巡る毀誉褒貶もあって私は敬遠(敬して遠ざける)していた。しかし大好きな近藤芳美の後継第一であり、その歌はやはり好きなのだ。「角川短歌」27年11月号から七首を引く。

「ぼくに似た人」

ささやかな、とも人の言ふ病床に鬼子母神(きしもじん)来て花を活けたり

国の境を人知れず越えて降る雪が 怖くはないか わたしは怖い

そのときもざくろの花を活けしめつ裏庭に咲いた鬼子母神の花を

杢太郎の詩を読みてより眠りたり夢をいろどりなさいよ杢さん

北窓つて本当に寂しい奴だひよどりは今日もやっては来ない

ホバリングしてはパン屑を欲(ほ)りつつぞ近づくすずめ 見つつ書くぼく

この丘をゆつくり降りて夕霧にまぎれて行つた ぼくに似た人

岡井さんは1928年生まれ名古屋出身、慶応医学部出の医師でもあった。やはり理系歌人としてのロマンを持っているのだろう。88歳の岡井さんが「僕」と言う一人称を使うのはモダンな感じだけれど、80代の私の師匠も明治生まれだった祖父も「僕」と言っていた。これらの歌に描かれる「眠り」や「死」の影。心象の恐怖の様な物を詠っても、軽く透明な所が私は好きだ。
3



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ