2018/10/19

秀歌(80)栗木京子「角川短歌」28首詠より  秀歌読みましょう

栗木京子さんは今NHKの「短歌で胸キュン」を担当しているので、若い人でも知らない人は居ないのではと思われますが、京大出のリケジョで「塔」の選者。理知的で麗しい歌から始まって「塔」らしい日常詠になって行ったが、一時期その生活が謎のような感じがしていた。「胸キュン」で若い人に囲まれ、すごく変ったなと思っていたら、母君と生活しているのか「読売歌壇」などは古い読者にも気を配っているようだ。「角川短歌」10月号の巻頭28首がとても良かったので十首引いて紹介したい。

「移動図書館」

切り株に今日も座しゐる滑瓢(ぬらりひょん)お辞儀をすればやがて雨降る

亡き人に詫びに行きたし入谷にて買ひし鉢植ゑ朝顔提げて

夕立の嚢(ふくろ)のなかにひとときを街はしまはる音うしなひて

十三人の死刑執行されし夏 被告らの古き映像流る

足立区のアレフ施設を拒否せむと署名をつのる回覧板来ぬ

いだかれてブランコに乗るみどりごは空に近づくたび目をつむる

楽しきもの想ひ眠らむひまはりの野をゆく移動図書館などを

自転車の表面積の大きさよ何度も雑巾すすぎつつ拭く

八月の試着室いたく涼しくて白夜の国へ続きゐるべし

仲秋の月の面(おもて)にドアありと見つつ宴ののちを歩みぬ

栗木さんは生まれは名古屋の方だけど、東京暮らしが長くこの歌では「足立区」という東京のはずれの区(言い方が悪いのだが)がキーワードになっている。表題になっている七首目の歌の、恐ろしげな現実の歌の後に来る美しさ、自転車の面積などという普段考えない物を「ていねいに」詠う事の実践、ご自分では「不思議系のうたはもう飽きた」などとおっしゃりながら、巧みな比喩を織り交ぜて不思議な歌に昇華させていると思った。
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