2021/7/16

「四季」春号の歌  短歌

結社誌「四季」の春号が出来ました。いつものように私の詠草十首を載せます。もう春が終わって梅雨開け間近ですが、どこの結社も出詠から三ヶ月ほどもタイムラグがあります。「四季」は季刊ですので一季のずれはほぼ気にならなくなりました。

「にょろにょろと」

にょろにょろと長虫は人に好かれねどゆったり春の陽を身にあびる

くねくねと曲がりくねった道のりを自転車押して行きし事あり

じんじんとしびれ解けゆく爪先の畳のへりに春が来ている

しゅるしゅると蜘蛛の糸たぐり登り行く雲の上には光あふれよ

色々なことを思えば怠いから恨みは裏のお瀬戸に捨てる

よろよろと心もとなく辿り行く道にこぼれる乙女椿は

時々は紙に便りを書きながら空のあの猫(こ)に届けたくなる

くるくると絵日傘回し春の日を踊っていたよ幼いあの日

数々の思い出集めてくり返し語る媼になりたくもなし

チロチロと舌をのぞかせ我が内の長虫何かを狙っているのか


この連作はこれまであまり使わなかった「オノマトペ」やくり返し語を初句に置いた歌に挑戦してみたものです。やってみたらするすると言葉が出来て、作りやすかったと思います。結社誌でも誰も評を言ってはくれないので、お読みになった方は何かいって下さると喜びます。
4

2021/6/4

童謡「みかんの花咲く丘」  短歌

戦後すぐの童謡は、戦中のラジオから引き継いで、NHKラジオの放送で全国民に愛されていた。父母も仕事をしながらラジオとともに歌い、私も買ってもらった童謡絵本を見ながら曲はラジオとレコードでおぼえた。だから「みかんの花咲く丘」は前奏から口ずさむことが出来る。
作曲の海沼実は戦中から戦後に多くの童謡をつくり、歌手の川田正子、孝子姉妹を売り出した。戦後すぐの童謡歌手(大体子供)はものすごい人気で、児童雑誌の表紙を飾ったりしていた。作品の景色は伊豆の伊東市への列車から見たものと言われるが、私の記憶の小田原あたりの風景とも一致する。

「みかんの花咲く丘」海沼実 作曲 加藤省吾 作詞

1,みかんの花が咲いている 思い出の道丘の道 
 はるかに見える青い海 お船が遠くかすんでる

2,黒い煙をはきながら お船はどこへ行くのでしょう
 波に揺られて島のかげ 汽笛がぼうと鳴りました

3,いつか来た丘母さんと 一緒に眺めたあの島よ
 今日もひとりで見ていると 優しい母さん思われる

加藤省吾はその時期の作詞家として数多くの歌を書いているのに、それほど記憶にない人だった。でも「みかんの花咲く丘」は歌詞の郷愁と「かあさん」の思い出(もう母はいないのだろう)に胸を締め付けられる、大好きな詞である。日本の童謡は大抵お母さんは死んで、お父さんは遠い所にいて、哀しいものが多いけれど、この歌は曲調の明るさとリズムの良さが救っていると思う。

清らかなほうへ一歩を進めたいみかんの花影すこし明るく  多香子
4

2021/4/9

「四月の歌」  短歌

関東の緊急事態宣言が解除になったと思ったら、関西や東北で感染が増えて「蔓延防止等なんたら」というものが出ることになった。東京も一度解除して数字をいじっている様子だったが、やっぱり「蔓延防止措置」をだすことになりそうだ。だんだん暖かくてマスクも蒸れる季節にいやだなあと思いながら、当分旅行もお預けと覚悟は決めた。(新幹線は換気が良いと言っても、何時間かマスクのまま座っているのは辛いから、遠くには行かれない)四月の歌はそんな気分を纏めてみた。

「どこも行けない」

春色の薄いピンクの爪をたて今年生まれの子猫があゆむ

菜種梅雨 いつしかボタンの掛け違い今朝のけんかを悔やむ昼すぎ

花曇り、水色の空をみたいから植木市にて買うフリージア

草原に野焼きの煙ただよえば揺れるだれかの黄色いリボン

通勤の駅のポスター紀州路のタマ駅長にあいたくて 喪

中指で口紅なおしもう一度鏡にむかって「わたしは綺麗」

廃線の駅のホームにひとり居て雲雀上がるを眺めていたい


五首目のたま駅長は随分前に死んで、二代目が就任したはずだけど、駅名も忘れてしまった。人気(ひとけ)のないところではマスクもはずしてボーっとしていられるのだろうけど、そこまでどうやって行くのだろう。車をやめてしまった家では公共交通に頼らざるをえないので。
7



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ