2019/3/22

秀歌(84)山川築「角川短歌賞」受賞第一作30首より  秀歌読みましょう

山川築さんは昨年第64回角川短歌賞を「オン・ザ・ロード」で受賞した27歳の若者である。「未来」所属であるが、ツイッター上「うたの日」で「もりのさと」さんのネームで歌を並べたことのある人と知ってびっくりした。もともと父上も歌人、お兄さんの創さんもY川さんであることが分かってまたびっくり。初めは「草野球」「ゲームセンター」と言っていた「うたの日」からだんだん賞を取る人が出てくるようになったのは喜ばしい。恒例の「受賞第一作」の載っている「角川短歌」12月号から9首を引く

「眠りに寄す」

夢とうつつのはざまにひとつ窓ありてそこへ差し込む朝の日ざしよ

外へ出る支度をすべてととのへてすきとほる手錠をはめ直す

犬小屋に犬は眠れり英雄を殺しし者の名は忘られて

鉄塔が西日の中に燃え落つる予感に浅き午睡より覚む

回想に表示の変はる列車よりなまあたたかく息がもれ出ず

仲秋の日は暮れかかり食卓の子持ちシシャモは口を開けり

ゆゑのなき怯えは足を濡らしをり地下書庫までの段をくだれば

喉笛をはつかに鳴らしみづを飲む夜の底ひの木椅子にかけて

空よりも雲の明るき夜ならば蠍の星は胸にし冴えよ

彼は文語旧かな派でこれも近頃の若い人に見られる傾向だけど、選者の方々が選考座談会で「年齢が高いのでは」と言っていたようなのは面白い。「角川短歌11月号」受賞の言葉で「うたの日」の管理人ののさんに謝意を表していることに意表をつかれた。
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2019/2/15

秀歌(83)鈴木加成太「角川一月号」より  秀歌読みましょう

鈴木加成太さんは、2015年の角川短歌賞を「革靴とスニーカー」で受賞しその時は阪大の四年生、就活に革靴を履いて日常から離れる感覚を描いていたと思うが、その後の若者の「生きにくさ」というテーマよりはまだ苦しくない時代であったのかもしれない。平成5年愛知県生まれと言うからまだ25,6と社会に出始めた若い歌人はその後「かりん」に入ったらしい。東京在住。

私は彼の受賞当時の美しい比喩が好きだった。学生らしい清廉な心象世界がどのように変わったのか「角川」の1月号「新春歌人大競詠」は若手は7首+「最近変わったこと」というエッセイつきで特集している。その中から5首を

「切り紙のもみじ」

仕送りに母が忍ばす切り紙のもみじに残るうすい下書き

子守唄のなかに微量の水銀はふくまれ雪のそら深みゆく

靴あとがさかなの骨の化石めく小雨のエントランスをゆけば

オリオンの腰帯ゆるきあのあたり宙に誰かの三連符あり

白熊にいちにち夜がある冬をふたんふたんと貨車は遠のく

エッセイで彼は就職して、学生時代とは違う季節を生きていると書いている。夏休みや文化祭が無くても生きていけるのだと。彼の歌は少し日常に近くなり、しかし美しい比喩をもって生き続けているのかと思った。「オリオンの腰帯ゆるき」という捉え方にほおっと吸い込まれる。
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2019/1/18

秀歌(82)穂村弘角川11月号20首より  秀歌読みましょう

今はプチ短歌ブームだと書いたことがあるが、昨年の歌集ラッシュや若い人の短歌を始めた人の多さは、ネット上で実感するものの古くからの結社などでは分らないのではないだろうか。ニューウェーブ30年と言われ、穂村以後と言われる人たちは着実に歩を進めているように見えるが、私は口語を使いながら特に熱中して読んだ事はなかった。穂村弘は若手の旗手であったがもう56才その歌はともかく、このごろは評論エッセイに才を開いているし、色々な選者として伯楽の力もあるようだ。「かばん」所属。

「リング・ワンダリング」

母さんの金の指輪よその肉に食い込みすぎていてこわかった

舶来の湯の華か・・・・、と誉めながらめをとじている名探偵は

洋梨の匂いの夜よ金歯あり原節子にも李香蘭にも

跡地跡地跡地をめぐる僕たちのよくわからない未来人の旅

双子だと思っていたら三つ子だという結末の推理小説

両腕にスチュワーデスを抱えたる力道山よ タラップは風

『"ふがいない自分"と生きる』という本をじっと見つめる入れ墨のひと

蜘蛛の巣に無数の小さな飛行機がきらきらきらきら揺れている朝

「うるかす」と呟きながらぎしぎしと母が鳴らしていた薄明かり

原節子や力道山などを使い古い人にも阿って、この所の歌は少しおとなしいような気がするが、難解と言うのとはちがう感覚の扱い方なのではないかと思っている。ライトバースやモダニズムとも違った「現代」を生きているのだろう。ある意味「平成」であり、もうすぐ来る次の時代にはどのようになって行くのか興味深いところ。
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