2020/5/8

秀歌(92)恩田英明「角川」四月号より  秀歌読みましょう

ゴールデンウィークが終わって、皆様ご無事でお暮しでしようか。これからは地域差が出てきて、他県を敵視するようなことがなければいいがと思います。

今回の恩田英明さんは玉城徹の影響を一番引いていると言われるが、現在は一人で「α(アルファ)」という小冊子をやっているかたです。不識書院中静さんが一番押している歌人であるため「不識書院」で一度お会いしたことがあります。昭和23年生まれだから私より少し年下で、物静かなおじさんという感じでしたが、ちょうど第四歌集「葭莩歌集」を出したところでした。本来の歌は理知的で写実的な論理の印象はありました。ただ息子さんを亡くされ、感情を絞り出したようなところが、それまでと変わってきていたのかもしれません。それから二年あまり「角川短歌」四月号に12首が寄せられたので六首を引きます。

「ヨコハマメリー」

コイン落ちて音楽流れ楽流れジュークボックスのアナログぞ良き

月を観て木星をみて街歩きしまひに真つ赤な林檎をひとつ

馬車道に夜さ夜さを立ち白塗りのヨコハマメリーひとりで永く

酔っ払ひの男を抱へ歩みゆくをみなの小鉤(こはぜ)ひとつ外れて

古コピー「四畳半襖の下張」探ししときにはあらざるものを

青珊瑚(ミルクブッシュ)の白き樹液の雫より油採らむとなしし夢の跡

このお歌だけでは分からないにせよ、ずいぶん感じが変わったなと(私にとっては距離が縮まった感じに)思われました。
5

2020/3/27

秀歌(91)川野里子「角川巻頭28首」より  秀歌読みましょう

川野里子さんを紹介するのは二回目でしょうか。「かりん」の歌人で今年「読売文学賞」受賞。今回は角川の12月号巻頭から広島の歌を八首引いてみました。
川野さんは(苗字の読み方がおなじなので変な気がしますが)大分生まれ学校は京都から千葉大の大学院までヒロシマと関係なさそうではあるが、前年のオバマ大統領のヒロシマ訪問の影響が強くあると思われます。それはまたトランプのアメリカによってひっくり返されたおもいにもなるりでしょう。一首目はそういうことではないと思っても白い雨に「白人」を感じてしまうところがあります。

「鶴の折り方」

黒い雨のち白い雨白い雨ていねいに雨の洗ふ広島

マリーゴールド聖母マリアの黄金(きん)の花異臭はしんと歌壇を満たす

(かうやってここを合はせてかうやってここを畳んでこころのやうに)

(畳んだらひらいてこちらもひらいてね畳んで畳んで苦しくなったら)

生きるとはこのやうにリボンつけることリボンのうれしさ焼け残る服

バラク・オバマの雄弁はなにに触れたるかふはりと二羽の折り鶴残る

平和公園に虹かかりたり消えやすく虹かかりやすく平和公園

ヒロシマとわたしのあはひに架かる橋しずかにありぬ気づけばそこに

28首は平の歌と括弧でくくられた「鶴の折り方」によって成り立って、昔教わって折った折り鶴と平和への祈りの象徴として詠まれています。
4

2019/12/20

秀歌(90)香川ヒサ「角川短歌」28首より  秀歌読みましょう

香川ヒサさんは何年か前に一度取り上げた歌人。昭和22年三月生まれだと私より二学年下の横浜生まれ、いまは大阪住まいのようだ。結社「好日」に入会後、同人誌「鱧と水仙」を創刊、元気のよいおばさんという印象で私の好きな歌人である。(現実にお会いしたことがないので勝手な印象)お歌を見ていると決して元気がよいばかりではないのだろうけれど、歯切れのいい都会的な歌を詠んできているように思う。「角川短歌」九月号巻頭から八首を引く。

「サンキストレモン」

あきづしま大和の国の敗れてもありし山河が黄砂に烟る

敗戦後七十四年の竹伸びて筍生活とふものありき

コンビニで買ひ物をする老人と子供等しく国税納めて

ビルとビルの間を歩き回りつついつも何かに遅れてゐたり

鳥の声ひびく朝(あした)を鳥のせぬ深呼吸する体操をする

九十六歳の母生きてゐる税金を国と横浜市へ納めつつ

香港に雨傘掲げた若者ら 西から雨雲寄せ来るらしも

帰還せむ来年末まで「はやぶさ2」わたしの心に点ることだま

この連作のころはまだ消費税引き上げの前であったろうが、やはり国民一人一人が少なくてもみな一律に納税する「消費税」というものに目を凝らしている。
2



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ