2014/5/15

キリスト祭に驚く。  読書

 歴史上人気のある人物には、その死後にもロマンあふれる伝説が広がる事がある。たとえば、モンゴルでチンギス・カンになって大活躍したという源義経伝説。

 逆に、外国から日本にやってきた有名人がいる、という伝説だってある。有名な(たぶん)「青森キリストの墓」伝説だ。先日図書館で借りた『聖地巡礼ツーリズム』(弘文堂)という本にあった物件だ。

 「キリストの墓」が発見されたのは、1935年。発見されて100年経っていない、わりに新しめの伝説だ。茨城県の神社の管長・竹内巨麿氏の家に伝わる古文書が「キリストの遺言」だった、というところから始まる。

 その古文書を頼りに現地調査をしたら、青森県にある当時の戸来(へらい)村の丘の上に、キリストとその弟の墓(!)があったそうだ。そういえば「戸来(へらい)村」という村名は「ヘブライ」に由来するという説もあるそうだ。

 その真偽のほどはともかくとして話題にしたいのは、その地で行われる「キリスト祭」という一大イベントだ。2013年には記念すべき50回目の祭が、賑々しく行われたそうだ。この祭は、全国各地からツーリストを集めるため、当日は特設駐車場が設営され、シャトルバスが運行されるほどだとか。

 「キリスト祭」は一応「キリスト慰霊祭」として行われている。

 なのに! 

 来賓祝辞は「本日は誠におめでとうございます」と締めくくられるそうだ。いや、そのまえに「慰霊祭」に「祝辞」って! 

 なぜか「神主」による、キリストの名を含んだ(!!)祝詞奏上や玉串奉納があるらしい! 日本人の宗教的に太っ腹なところ全開だ。しかしまあ、日本人は「神仏習合」で宗教ミックスは昔から慣れっこだろうし、逆にいえば対立するよりずっといい。なにしろ「本地垂迹説=日本の八百万の神々は、実は様々な仏(菩薩や天部なども含む)が化身として日本の地に現れた権現(ごんげん)であるとする考え」なんていうのを編み出すんだものね。

 十字架の前には花立と賽銭(!)があるらしい。クライマックスは十字架をかこんでの盆踊り(!!)「ナニャドヤラ」が奉納されるのだ。

 もちろん祇園祭や葵祭などの伝統的な祭とは、来る側も迎える側も心持ちが違う。ツーリストはB級観光地の奇妙なイベント、みうらじゅん風にいえば「とんまつり」な風味を求めてやってきたはずであり、迎える側は観光戦略を明言してもいるが、一方で、全くキリスト教とは無関係と思える民族芸能、「獅子舞」や伝統的な盆踊り「ナニャドヤラ」を披露する重要な場としても捉えているらしい。

 日本全国からツーリストを集め、それどころか外国人だって参加しているそうだ。これをみたら、宗教的な対立を繰り返している地域の人は、腰砕けになって脱力しちゃうのではないだろうか。その当事者なら「オレたちって、いったい・・・」と相当なカルチャーショックをうけるかもしれない。

 「青森キリストの墓」の岡本亮介先生渾身の4p分のレポートは、こう結ばれている。

「キリストの墓は単なる観光客誘致のためのフェイクではなく、地域アイデンティティと直結するツーリズム・アトラクションといえるのではないだろうか」

 日本って、なんだか底知れない凄みがある。なんというか、日本人の吸収力と融合力がハンパない。まだまだ私の知らない日本は、いっぱいあるのだ。

 「ディスカバー・ジャパン」に蒙を啓かれる思いである。
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