2015/5/12

「テロリストのパラソル」  読書

 台風が近づいているけど、本格的に嵐になるのは夕方かららしいので、読書会へ。相変わらず出発ギリギリまでかかって読了し、しっかりチコクながら参加できた。

 テキストは藤原伊織・著『テロリストのパラソル』。チャンドラーを和製にしてたしかな描写力で読みやすくしたような、かっこいいハードボイルドだ。クールでクレバーで、キチンと筋を通すカッコイイ男やカッコイイ女が登場する小説は、胸がすくよう。ハードボイルドながら、優しい、かわいい場面も会話もある。

 冒頭の、のどかで明るく気持ちのいい土曜の公園が、爆発により一瞬にして阿鼻叫喚、酸鼻を極める場面で一気に引き込まれてしまう。そこから「容疑者になっている主人公が真犯人をさがす」という、いまではパターン化した物語に突入。しかし犯人探しよりも、登場人物の会話やキャラクター、物語の変転に引っぱられているので、だれる事がない。簡潔な文章ながら、リアルでドメスティックな主人公の鋭敏な五感にシンクロしてしまう。「夕方の天ぷらを揚げる匂い」なんていう一文で、ありありと「天ぷらの匂い」が感じられるではないか。

 読んでる途中は「パラソルはいつ出るんだろう?」と気にしていた。作者が、とても丁寧に伏線を張ってくださっているので、根拠はないから推理力じゃないけれど、犯人は勘(?笑)だけで明快にわかる。

 ラストちかくでタイトルにある「パラソル」が登場するのだけど、それがもう、見事で。ダークでどん底な気持ちが、ぱあっと透明で清冽、かつ晴れ晴れした幸せな景色に変る瞬間。極悪人にも救いがあり、彼自身の無垢さが示されているところに、読後感の爽やかさがある。極悪人が登場すると、やりきれない気持ちになるものだけど、この作品にはセンチメンタルやロマンチックな余韻すらある。

 乱歩賞と直木賞のダブル受賞作というのも、納得。20世紀末のやや古い小説ながら、結構読めます。プレ伊坂幸太郎っぽいので、ソフトな(笑)ハードボイルド好きにはおすすめ。

 
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