2010/1/18

Daddy Long legs  読書

 昨日より話は続いて、勝田文さんの『Daddy Long legs 』の表題作を読む。もちろんあのウェブスターの『あしながおじさん』のコミック翻案である。

 子どもの頃『あしながおじさん』の挿絵付きの単行本を持っていたので、繰り返し読んだ。なぜか夏休みに農場に行くヒロインがリスを見る所にインパクトがあったようで、今も覚えている。リスという生き物に、異常に憧れていたらしい。(テレビアニメ『宇宙少年ソラン』に登場するリスのチャッピーの影響か?)
 
 なんにしろ繰り返し読んだので、ストーリーも挿絵もいまだに覚えている。原作では、ヒロイン/ジュディの書簡のみで、彼女の視点からストーリーが語られるので、彼女には秘密の「おじさん」の正体は、最後の最後までわからない。そこがまた「つかまれる」のである。

 舞台が日本の昭和初期に移して描かれる勝田版『Daddy Long legs』では、最初から「おじさん」が誰かが明かされている。「あしながおじさん」が誰なのかという、ほぼバレバレな「つかみ」より、作者がずっと興味があっただろう「おじさん」側のあれこれの事情を挟んでいる。原作を繰り返し読んだ人なら誰しも思うだろう「おじさん」の、時間軸に沿った生活や気持ちの揺れをジュディ(勝田版では「いつき」)の生活と同時進行で読めるのは、やはりすっきりする。

 あのとき「おじさん」はどういう気持ちで過ごしていたのか。「おじさん」がヒロインの手紙を読むときの様子は? ヒロインがときたま発揮する反抗的な態度に対する思いは? そして肝心な「おじさん」のひととなりは? それらを明快にしてくれた勝田版「あしながおじさん」では、「おじさん」のことがもっと好きになるし、時代的にも女学生がとても自由で元気だった昭和初期に、ヒロインのキャラクターはとてもなじむ。

 そして昭和初期といえば江戸川乱歩。「おじさん」が最初のページで持っていたのも乱歩の本だった。そのあとのページで「おじさん」の仮名が「平井太郎」というのに笑ってしまう。乱歩の本名を仮名にするっていうセンスがナイス!

 勝田さんの、ほのぼのさとストイックさ、あっさり加減と可愛らしさ、コミカルさと切なさが、ここでもきちんと、そして絶妙に発揮されている。もしかしたら勝田さんの本領は原作翻案かもしれない、とさえ思う。しかも、このコミカルであっさりした味は、倉田江美さんをなんとなく思い出させる。

 オリジナル作品でなくても、原作の味を100%以上引き出している上、自分のオリジナルなテイストを遺憾なく発揮しているのだから、貴重な才能だ。これからも勝田さんに見合う原作を発掘しつつ、原作のより深い、かつわかりやすい読みを読者に提供していただきたいものである。
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