2010/5/20

再度、『勇気の季節』  読書

 ロバート・B・パーカーの『勇気の季節』について、読み終えてひとこともふたことも言いたい事があるのに気づいたので、再度ネタにしてみる。

 まずタイトルについてだけど、『勇気の季節』って読後どうもピンとこなかったのだ。『勇気』って、イメージとしてはマッチョでアツくて殺伐としていう部分がなきにしもあらずなんだけど、内容的にはどちらかといえば、意外にフェミニンで清々しくて、ウイットのある会話やシンプルな名言や、自制力のある人たちの話なのだ。原題だって単純に"The Boxer and the Spy"だし。

 主人公は、ボクシングに夢中なテリー少年で、彼とボクシング・ジムのトレーナーをしているジョージの素敵な師弟関係を軸にし、おとなしい同級生が巻き込まれた殺人事件探索と、才色兼備な同級生アビーとの恋愛(?)模様とが語られて行く。

 帯には「男の心の物語」ってあるけど、テリー少年も、元ボクサーのジョージも、いわゆる「男らしい」人間とは、ほど遠い。「自分をコントロールできるようになること」が最も大切と信じている人たちだからだ。

 「思春期の少年が夢中になっているボクシングと恋愛を描いた、アメリカ青春ミステリー(?)」という先入観から、暴力とセックスをイメージしがちだけど、意外にもそうじゃなかった。

 恋愛感情はしっかり持っているけど、セックスはまだちょっと、と繰り返しハッキリと誠心誠意、言うことができるヒロインはそうそうお目にかかれない。でもアビーはそんな希有なヒロインなのだ。じらしのテクニックとかではなく、15歳の少女としての、自分の正直な気持ちとして。そんな彼女の「現在の」気持ちを大事にするテリーも、話のわかる男の子なのだ。

 かといってアビーは、純潔至上主義者ではない。下ネタ話題だって、スマートでおしゃれにきり返したりしてくれる、器の大きい子だ。ハッキリいってテリーよりはるかに大人っぽくて、賢くて、作中でも大活躍なのだ。要するに「素敵女子」なのである。

 そんな訳でこの小説には、「男の心の物語」という地味路線と平行して、素敵女子の冒険と大活躍というキラキラ路線もある。

 テリーの師であるジョージの「他の何を忘れても、コントロールだけは忘れちゃいけない」という言葉を、テリーは敵との対立や恋愛にも、しっかり応用できる、こちらも希有な少年である。

 たとえ一見卑怯にみえたとしても、もしかしたら草食系男子といわれても、これってとてもカッコイイ、と昔の女子は思うのだ。
 だから、この日本語タイトルと帯の惹句は無視して、実は最先端にカッコいいストーリーを、ご堪能あれ。むしろ女子にこそ、おすすめかも。
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