
すみません、もう少し「いろどりきもの」のお話にお付き合い下さい。こちらは、五十嵐の紫の紬です。何か物語性を持たせるきものにしたいと考え、憧れである額田王の万葉集の歌「あかねさす 紫野ゆき 標野(しめの)ゆき 野守は見ずや 君が袖ふる」から、紫根染をしていただいたものです。屋内ではブルー、屋外の自然光では上品な紫色に輝くのですが、カメラのレンズの限界で目で見た色が再現できていないのが残念です。

こちらは吉川。帯は型押しを依頼した藤本工房さんのものを合わせています。

山梨出身の吉川は、武田菱と葡萄をデザインした刺繍の花紋を入れました。こんな楽しみ方ができるのも、色無地の紬ならではです。

…と、いろどりきもののお話が長くなってしまいましたが、綺麗なきものを作ることが目的ではありませんでした。衰退の一途をたどってしまった養蚕という「手仕事」を今でも守っていらっしゃる人を応援したい。需要が激減してしまった手織りの反物を織る素晴らしい技術を持つ方に、着る人の顔を思い浮かべて楽しみながら反物を作っていただきたい。そして着る側の自分たちもその過程に深くたずさわって、養蚕→製糸→織り→仕立てという工程を知りたい。そして、その過程で知り得たことをいろいろな人に伝えたい!そういう思いで進めて来た結果、このようなシンポジウムを開催することに繋がりました。そして、素晴らしい「いろどりきもの」がその結果として姿を現したのです。
私たちの活動は、これが終着点ではありません。NPO川越きもの散歩は、今年もいろどりの生糸を20Kg購入しました。けしてきものを売ることが目的ではなく、この流れの中でまた新たな御縁をいただいて、いい展開をしていけたらいいと考えています。ご参加の皆さま、本当にありがとうございました。今後とも、一緒に楽しみながら応援していただけたら幸いです。

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