2011/3/7  20:38

合築図書館の将来と高知県の将来  

 合築図書館の将来はどうなるのだろうか? 中間報告では、30年くらいしかもたない書かれ方をしている。わずか30年で建て替えるというわけにはいかないから、建て増しというのが順当な考え方だろう。しかし、建て増しする土地が追手前小敷地にあるのだろうか? だいたい雑誌や寄贈資料も含めると、本当に30年後までもつのだろうか?

 それとも、30年後にはほとんど電子書籍になっていて、紙の本は出版されていないから、紙の本の書庫は増加させる必要がないのだろうか?

 電子書籍のメリットとは何だろう?

 コピー&ペーストは自由にできない。ただ読むだけだ。全文検索ができれば便利だが、今のところそういうのはあまりない。

 特に、図書館が購入してそれを貸出し(期間付きの配信)をするとなると、著作権上の様々な制限がつくだろう。図書館内でしか見ることができないものも多いかもしれない。県立図書館から市町村立図書館へ協力貸出しするなどと言う紙の本ならではのモデルは崩れ去ってしまうかもしれない。

 紙の本を蓄積している図書館は、無料で誰でも利用できる。

 電子書籍を蓄積した電子図書館もそうなるだろうか?

 いろいろなところでお金を取られるかもしれないし、制度自体が変えられてしまうかもしれない。つまり有料制の導入だ。また、機械についていけない人は門前払いだ(今でもそうだが)。

 30年後には、もはや機械についていけない人はいないのかもしれない。

 しかし、機械の方でついていけなくすることは可能だ。情報をいろいろ操作したければ、そういうこともなくはない。

 電子図書館が本当に役立つためには、むしろ、縦横に検索できて、それを再組織化できたり、知的情報処理ができたりした場合である。今の電子書籍のモデルはそれに適合しているとは思えない。

 そもそも無料の情報コンテンツはインターネット・サイトで提供されている。

 しかし、インターネット・サイトではまともに勉強もできないのはなぜなのか? インターネットが一般的になってから、もう15年以上にもなろうとしているのに。今、インターネットで流行っているのは、目の前の友人とは対話せずに、遠くの人々とつぶやきあっているような世界である。

 こういうのは進歩と呼べるのだろうか?

 30年後はともかくも、これから30年の間に突然、紙の本や図書館がなくなるということはないだろう。紙の本は大きさが自由だし、印刷も綺麗だ。もっともこの印刷技術もコンピュータによるものだが… (実は、紙の印刷の本だから「古い」技術だとは言えないのだ。)

 さらに、今までの本を電子化するというのはなかなか大変な作業である。印刷会社にデータが残っている年代のものなら、まだしやすいがそれ以前はかなり困難だ。不鮮明な画像からテキスト化するという難題がある。

 その間に高知県はどうなるか? ひたすら人口減少を続けていき、次々に限界集落が廃墟となっていくのだろうか?

 それをやむなしとするのか? 大都市圏にこれ以上人が集中するのは本当に良いことなのか? 中核都市である高知市に一時的に人が集まっても、そこに就職口はあるのか? なければ、さらに大都市圏への流出が進むだけだろう。

 高知県の人口減少問題は、単に自然減だけでなく社会減が多いということである。つまり、高知県から出ていってしまう人が多いのだ。そして、高知県にやってくる人は少ない。だから、人口が減る。

 高知県に戻りたい、やって来たいと思うような所にしないといけない。こういう認識を持たなければ、もはや、県自体が店じまいの準備をしなければならず、中心市街地の活性化どころではなくなってしまう。うまい具合に、高知市の中心部だけ人が集まってくれるなどということにはならないのだ。

 もし、そういう妙な想定で合築図書館が考えられている(つまり、将来的に、高知県の実質的な地域は高知市近辺しかないと考えている)のなら、それは、大いに危ない認識ではないだろうか? 一部の学者にそういうことを主張する人がいるかもしれないが、そう都合良くはいかない。

 そんなことよりも、都市には都市の、田園には田園の図書館が存在し、情報が電子化した未来社会においても地域の核として、単に情報の受容体というだけでなく発信していく存在になっていけば、進化しつづけることができるのではないか。すると、むしろ、地域との密着性が必要になって来る。合築図書館はその方向性とは逆ではないだろうか。

 合築図書館構想を出すなら、30年後の高知県をどうしたいのか、その構想も合わせて必要だろう。

 少子高齢化、情報化、グローバル化などということは、すでに1980年代から予見されていた(*)。20〜30年後のことは、きちんと考えればある程度わかるのだ。

*2000年の日本 1-10巻 経済企画庁編 大蔵省印刷局発行 1982
高知県立図書館の書庫に収められています。高知市民図書館には所蔵されていません。

15



2011/3/8  22:34

投稿者:yantan

(拍手完了)
本を読まない人ほど
「これからは電子書籍の普及で紙の本はなくなる」と
声高に叫んでいるように感じます。
紙の本はいらないなどという挑戦的なタイトルの本そのものが
紙媒体で出版されていること自体が、
本稿の内容を象徴しているようでもあります。

人口減という「予測」を
「決まったこと」とすり替えて合築の根拠とする手合いもまた、
日頃、図書館という知の資源を使わず
論理的な思考を持たない下地を露呈しているといえるでしょう。

高知県が「どうなるのか」は誰にもわからず、
「どうしたいのか」をまず考え、
そこから出発する。
構想と呼ぶならまずはそこをしっかりしてもらわないと。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ