2012/12/4

最後の国内2輪生産を守ることができるか。  
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11月中旬、タイ・バンコクにあるホンダの2輪工場で、新型車の生産が始まった。「CB500」シリーズ。タイで初めて生産する中大型バイクだ。

 中大型バイクは、ホンダの国内生産にとって最後の牙城だった。小型バイク(コミューター)に比べ、部品点数が多く、品質要求も高い。開発・生産両面で習熟度が要求されるため、これまでホンダは、中大型バイクをすべて熊本製作所(熊本県菊池郡)で生産してきた。

 円高で空洞化が進む日本の製造業。2輪はその先行指標ともいえる。ホンダがタイで生産を始めたのは、今から45年も前。その後、2輪の海外生産が急拡大する一方、国内生産は縮小に次ぐ縮小を続けた。2008年には2輪の国内生産を熊本に集約、中大型バイクに特化することで生き残りを図ってきた。それでもホンダの2輪生産における国内の比率は、わずか1%しかない。

 しかし、その中大型バイクでも海外生産が始まった。二輪事業本部長の大山龍寛専務は「開発体制が充実しているタイには、熊本に成り代わるポテンシャルがある」と語る。

取引先とひざ詰め 

 「このままでは国内でバイクを造れなくなる」。渡部勝資・熊本製作所長は危機感を隠さない。いま熊本を舞台に、最後の国内生産を守る改革が進んでいる。

 「ギアの形状を変えれば、同じラインで流せます」「図面の変更を検討しましょう」

 熊本製作所から車で1時間半ほど離れた九州武蔵精密。ギアやシャフトを生産するホンダ系部品メーカーには、毎月1回、熊本製作所の担当者が訪れる。部品メーカーの生産ラインにまで入り込み、ひざ詰めでコスト削減に知恵を出し合う。

 これまでもホンダは部品メーカーと、新技術や新機構を共同開発してきた。ただし部品の生産方法や効率化手法は、あくまでも部品メーカーの領域。互いのノウハウを持ち合い、完成車メーカーが部品メーカーの体質改善まで乗り出すのは、2輪でも4輪でも極めて珍しい。

自助努力には限界がある。趣味性の高い中大型バイクは、車種ごとに使う部品が異なる。九州武蔵精密が生産するギアの種類は、実に1611。そのうち、月の生産量が1000個に満たない部品が9割以上に及ぶ。1部品当たりの生産量が極端に少ないため、工程ごとに装置の取り替えが必要で、ラインを組むことさえ苦慮していた。

 現在同社は、形状の近いギアを集約することで、その大半をラインで流せるように取り組んでいる。もちろん設計図面の変更が必要になるが、ホンダは協力を惜しまない。むしろ、コスト削減のネタをすべて出すよう求めている。

 部品メーカーを巻き込む改革に着手したのは4年前。当初は思ったとおりには成果が上がらなかった。

 「ホンダの図面がどんなに難しくても、それを実現するのが技術だと思ってきた」(九州武蔵精密の笠井昭輝社長)。下請け意識がしみ付いた部品メーカーは、ホンダと対等にやり取りするのに気後れがあった。

 ホンダにしても、設計段階から部品メーカーの要望を細かく受け入れる体制になっていなかった。が、それも徐々に変わっていった。

ホンダの誇る開発部隊「AKB」

 「図面変更にはいくつもの会議が必要だったが、AKBが即断即決できるようになった」(本田技術研究所2輪R&Dセンターの藤田茂久マネージャー)。AKBとは「朝霞研究所・熊本・分室」の略。埼玉県朝霞市にある研究所から、熊本に移った開発部隊だ。

 AKBは2年前にスタートした。それまで朝霞に独立していた開発部隊が生産現場に張り付き、問題をその場で解決する。開発を生産に密着させる体制は、昨年、4輪を生産する鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)が取り入れ、大ヒットした軽自動車「NBOX」の開発に生かされた。

 今年10月には朝霞から調達陣も加わり、AKBは44人から276人へ大幅に増員された。メンバーが増えたことで、ホンダ内の意思決定スピードが上がっただけでなく、部品メーカーとも柔軟な協調態勢が取れるようになった。

改革において国内部品メーカーに与えられた目標は、「中国メーカーに勝つ」(渡部所長)ことだ。

 今年2月投入された「NC700X」。排気量700ccでありながら、65万円からという低価格を実現した中大型の戦略商品だ。同車を熊本で生産するに当たり、ホンダは海外からの部品調達比率を4割まで高めた。中国、ベトナム、タイ…。アジアで部品メーカーを開拓する過程で、ホンダは海外部品メーカーのコスト競争力を把握できた。

国内調達にこだわり

 今後は国内メーカーにも同じ条件を求める。現状中大型領域では日本勢に優位性があり、NC700でもアプローチした海外メーカーのうち、採用に至ったのは54%にすぎない。だが「中国メーカーには技術も技術者もある。2〜3年もすれば優位性はなくなる」(渡部所長)。だからこそ、今のうちに国内メーカーに力をつけてもらう必要がある。

 ホンダが熊本を維持するだけなら、海外調達を増やせばいい。それでもなぜ国内調達にこだわるのか。

 それは感情論ではない。足元で円高の修正が進むように、為替の振り子はどう振れるかわからない。円安になったとき、急に国内に生産を戻そうとしても、部品メーカーが残っていなければ、後の祭りになる。そもそも生産拠点から近い場所で部品を調達するのが、最も理にかなう。

 取り組みはホンダ系列6社に広がっている。コミューター部品が中心だった合志技研工業(熊本県合志市)では、中大型バイクのマフラー生産に取り組む。コミューター部品でも3分で製品を切り替える多品種生産に取り組んでおり、「これまでのノウハウを生かせば、中国メーカーに勝てる」(朝吹和博社長)。

 当面の数値目標は、部品メーカーのコスト3割削減。ホンダは系列メーカーと成功モデルを作り上げたうえで、2〜3年のうちに国内全取引先に波及させる。

 ホンダの2輪は国内生産の砦を守れるか。改革によって生まれた部品は、来年立ち上がるモデルから採用される見込みだ。

 (週刊東洋経済12月8日号)

http://money.jp.msn.com/news/toyokeizai-online/%e5%9b%bd%e5%86%85%e7%94%9f%e7%94%a3%e3%81%af%e6%8d%a8%e3%81%a6%e3%81%aa%e3%81%84-%e3%83%9b%e3%83%b3%e3%83%802%e8%bc%aa%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%94%b9%e9%9d%a9%e3%80%8d-%e5%9b%bd%e5%86%85%e3%81%ae2%e8%bc%aa%e7%94%9f%e7%94%a3%e3%82%92%e5%ae%88%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%8c%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%8b%e3%80%82


AKB48ならぬ、AKB276で何とか生産を守って欲しい。

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