49鍵のくせに図体は無駄にデカイ。
おそらく背面の銘板だけで2kgはあるかと。
【概要】
1979年発表 アナログ音源(1VCO+1VDF+1VCA+2EG)
同時発音数:4 鍵盤:49、プログラム数:8 プリセット数:10
アルペジエーター、アンサンブル(コーラス)エフェクト
定価:385,000円
【発売当時のこと】
中学校に入学してから、私にとって、シンセサイザーは無くてはならないものになりました。寝てもさめてもシンセサイザーです。自宅にはすでにYamaha CS-30が鎮座しているという恵まれた環境であったにもかかわらず、新製品が出るたびにカタログを集めてはため息をついていました。数多く集めたカタログの中で、最も多くの溜息を吸い込んだに違いないうちの一つに、このJupiter-4が掲載されていました。
木目のサイドパネル、鍵盤手前のカラフルなプッシュボタン、Compuphonicとプリントされた、フューチャーフォントのロゴ。カッコイイ外観もさることながら、音色がプログラムできて、しかも和音が弾けるという利便性、そして、当時の人気バンド、ゴダイゴのミッキー吉野が使っているという話題性、なにかにつけて気になるシンセサイザーでした。YMOの80年ワールドツアーでも、教授の左手側に地味に置かれていました。
【音色】
とは言いながら、実は、私はRolndのシンセサイザーは手弾きする楽器としては、あまり好きではありません。どれも音が軽いというか冷たい感じで。特にノコギリ波は、ビリビリしているというか、刺々しいというか...。『眩しい!』と感じるほどのキラキラした音は非常に得意なのですが、暖かい音は苦手なように思います。Jupiter-4の場合、後のJunoシリーズよりは重めで、粘り気のようなものを感じますが、傾向としてはやはりRolandの冷たい系統の音です。
【アルペジエーター】
では、Jupite-4のどこが良いのか?というと、EGの粒立ちがよく、アルペジエーターでピコピコと機械的に音列を鳴らしていると非常に気持ちが良い(当時を思えば、結構贅沢な使い方ですが)。アンサンブル(コーラス)エフェクトが原音を曇らせることなくクリアなまま音像を広げてくれる所が、私にとっては長所です。
アルペジエーターでピコピコというと、昔風のテクノを想像されるかもしれませんがVangelisがシーケンサーを走らせながら、レゾナンスやカットオフを上げたり下げたりする----『螺旋』とか『托鉢僧D』のような感じ----をやって、一人で悦に入っています。これを始めたら止まりません。私はテクノとかトランスとか良く分かりませんが、TB-303を鳴らしながらツマミをウネウネやっている気持ちよさも、こういう感じなんでしょうね。
ちなみに、アルペジエーターのいずれかのボタンと、アサインモードのボタンを二つ(たとえばPOLY1とPOLY2)を一緒に押し込んだ状態で、鍵盤を押すと、アルペジオにならず、同音連打されます。ドミソを押さえれば、ドミソの塊がダダダダダダと連打されます。
【汎用性】
先述の通り、Rolandの音は軽い、冷たいと言いました。しかし、軽い音=しょぼいシンセという訳ではないのです。Jupiter-4にかかわらずRolandの機種は、カットオフ、EG類のパラメーター変化幅が広いので、波形の好き嫌いは除くとして、音を作っていて欲求不満になりません。『こうしたい!』と思ったようになってくれます。YamahaやKorgの場合、いい音なんですが、『もうちょっと開いてほしいんだがな....もうちょっとプチプチ言ってほしいんだがな....』という気持ちがいつも残ります.....。
これを言い換えれば、Rolandのシンセは、バリエーションが広い→つぶしが効く→使える音が多い、ということに繋がるわけです。実体験として、大学時代のバンドサークルでJuno-106を持っていた方が居たのですが、非常に音作りがうまく、どんなジャンルの曲もJuno-106一台でこなしていました。一方、私は、PolysixとDX7の2台を使っていながら、それでも物足りなさを感じて、後輩のDW-8000とかD-50とかM1をちょこちょこ借りていました...。
【Jupiter-8とJuno-6のプロト的存在】
ツマミは非常にRolandらしい形状、配列をしています。オシレータは、FeetとWaveformがロータリースイッチで、その他はスライダー。それまで発売されたSHシリーズにも見られる共通点で、後のJupiter系(上級モデル)、Juno系(エントリーモデル)にも、引き継がれていきます。パラメーターは、オーソドックスな楽音からSE系まで、ある程度カバーできるものがチョイスされてJupiter-4で一つの完成形となり、これをベースにオシレーターを一基追加したものがJupiter-8に、EGを一基減らしたのがJuno-6に分派していったように思われます。中の回路は全然違うのかもしれませんけどね。
そして、謎なのがHPF。後のJupiter-8にも搭載されています。Roandの音はもともと線が細いのに、それをさらに細くしてしまうHPFをつけて、どうするつもりだったのでしょうか。Yamahaが波形の貧弱さを補うサブオシレータ(サイン波)を装備していたのと比較し、非常に対照的です。
【使いにくいといえば】
Jupiter-4は、オリジナル音色のプログラムを8個まで記憶させることができますが、それをEDITするのは楽ではありません。80年代以降のプログラマブルシンセサイザーは音色を呼び出してから、どこか一つのツマミを動かせばすぐさまエディットに入れますが、Jupiter-4はできません。Programableエリアのつまみをいくら動かしても変わりません。
よって、プログラムを書き込む際には、すべてのツマミの位置を一旦、紙に書き出しておく必要があります。音色の編集をする場合は、マニュアルモードで、紙に書き出した通りにツマミの位置を再現してから変更を行うことになります。今から思えば非常に面倒なのですが、当時は音色の保存が出来ることが、特にライブ向けのシンセサイザーとしては求められていましたし、元々ツマミの位置を紙に書いて残しておく事は至極当然の事でした。実際、取扱説明書にあるブランクチャートをコピーして、プログラムを残していましたから、当時は、こういう手間も、あまり問題にされなかったのではないかと思われます。
【秀逸なエフェクト】
コーラスアンサンブルのところで述べましたが、Rolandのシンセについているコーラスエフェクトは秀逸で、Junoシリーズに内蔵しているコーラスも非常に透明感があり、原音のよさを損なわないで気持ちよく鳴ってくれます。中古市場でJunoシリーズが1オシレーターでありながら、いまでも良い値段で取引されるのも、このコーラスによるところが大きいと思います。
で、思い返してみると、私が所有しているエフェクト系は、ほとんどRoland系です。初めて買ったアナログディレイ(DC-30)、初めて買ったデジタルディレイ(BOSS DE-200)、初めて買ったフランジャー(BOSS FB-2)、初めて買ったテープエコー(Roland RE-201)、マルチエフェクター(BOSS SE-50)、グラフィックイコライザー(GE-10)、ボリュームペダル(FV-200)等など。逆にそれ以外のエフェクターは、VestaのスプリングリバーブとAlesisのクオドラヴァーブぐらいでしょうか。
【資料】
カタログ
ブランクチャート
ブロックダイヤグラム

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