2014/9/9

「きりぎりすとこおろぎ」  短歌

秋の気配が少し感じられるころには、こんなビルの四階のベランダでも虫が鳴きはじめる。たいていはコオロギの仲間で,綺麗な声だと思うのはアオマツムシという外来種らしい。この前「朝顔」と「桔梗」の名前の混同について書いたが、「こおろぎ」と「きりぎりす」も同じように中世までは漢字で「蟋蟀」と書く虫は「きりぎりす」と呼ばれ、中身は「こおろぎ」だったらしい。
歌の世界でもすぐに浮かぶのは

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかもねむ 
                  後京極摂政前太政大臣

と言う「百人一首」の歌だが、これは「新古今」から採られている。私にはなじみ深い歌なので、多くの「きりぎりす」の歌があるかと思ったが「古今集」でも

もろともに鳴きてとどめよきりぎりす秋の別れは惜しくやはあらぬ 
                        藤原兼成

一首だった。しかし「枕草子」40段にも虫の名として「きりぎりす」が松虫などとともにあげられ、解釈本にも「こおろぎ」であるとなっている。鳴き方の記述はなく、図鑑などでキリギリスは「ぎーちょん」など短い声を張り上げるのにコオロギは「コロコロ」と鳴きつづけるとあるので、お歌の様子からも人の住まい近くで鳴きつづける「こおろぎ」なのだろう。確かに前のビルの一二階に住んでいた時、一階のトイレの中にコオロギが入り込んで、夜中に良い声で鳴いていたことがあった。怖がりの私でもさすがに怖くも無くいい気分だった。トイレのコオロギでは、先生のあだ名につける「便所コオロギ」みたいだが、そちらは「カマドウマ」の仲間で鳴かないのだ。
ウィキによると江戸時代の「虫売り」は鈴虫などとともに「こおろぎ」を鳴く虫として売っていたというので、そのころから名前はわかれたのかもしれない。昔、理科の覚え歌のように歌っていた歌があって、あれは何だったのだろうと検索したら

<きりぎりすは羽根で鳴くかよ 蝉ゃ腹で鳴く わたしゃ貴方の胸で泣く そうだそうだ まったくだよ>

と言う歌で「新土佐節」というのだそうだ。平安の頃の和歌で始まって、戦後の俗曲に話を持ってきてしまって申し訳ないとも思うが、虫の鳴き方は羽をこするのと、腹部を震わせるものがあると教わった記憶がある。
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