2019/2/1

「雪の日」の一葉と藤むら  短歌

去年、本郷の「藤むら」が無くなってしまったことを書いた時、樋口一葉もさくらもちを買いに行ったのは、萩の舎のお使いか何かかとおもったけど、『一葉日記』の高木絢子さんにお聞きしたところ、当時九段に住んでいた師「半井桃水」を訪れるための手土産だったのではないかと教えてくださった。私はうかつなことに桃水は根津のあたりに住んでいたのではと(何の根拠もなく)思っていたので、ああと腑に落ちた。

一葉が五千円札の肖像になってから、偉大な女流作家として見られるため、半井桃水のことはあまり語られなくなった。もともと貧しい御家人の家で父の死後一家の柱として明治の新時代を生きねばならず、若くして亡くなった一葉であるから、人々は彼女の「恋」など考えなかったのだろう。しかし日記にも残る彼女の気持ちは明らかに「師への恋」でありその成就しなかった恋は彼女に短編「雪の日」を書かせた。その中では主人公の娘は育ての親のおばを捨て、思いのあまりに恋人である教師の胸に飛び込むのだが、今読み返してみると道徳的な面白くない話である。

それよりも日記に出てくる「雪の日」に妻不在(当時は独身との説もある)の桃水を尋ねた一葉の、泊まれと言ってくれない師への想いと、泊まれと言えない師の駆け引きの切なさのほうがこちらには可愛らしく迫ってくる。

もゝの花さきてうつろふ池水のふかくも君をしのぶころかな

わが思ひなど降る雪のつもりけんつひにとくべき中にもあらぬを   一葉


雪の日も雀は番で餌を欲りうらやましかろう若き一葉  多香子
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