2019/5/11

秀歌(85)吉川宏志「角川短歌」巻頭28首より  秀歌読みましょう

吉川宏志は永田和宏から「塔」を引き継ぎ今の主宰であるが「塔」は法人化したので、その重荷は合議制で担えるのだろうか。1969年生まれだから今年50才、昔の歌人たちはやはり若くて結社を興したりしていたのだろうけれど、今のように安定の歌壇では若いと言えるだろう。吉川さんは京大でも文学部出だし、風貌も永田さんよりは優男めいて線の細さが気になっていた。しかし歌集評などを読むと、憲法も沖縄も自分の考えで行動していると言う事なので、少し読むんでみると(女性的な優しさが嫌だと言う人も居たのが)私には肌の合う歌が多いのかもしれないと思った。「角川短歌」四月号28首から9首を引く

「野宮」

鳶の輪は海をめぐりてまた陸にもどりくるなり高く啼きつつ

貝の散る浜辺に立てば一枚の皮はがすごと冬波は来る

貧しくなりされどもかっての貧しさに戻れぬ国よ川に降る雪

ともに暮らすウサギも老いて涙目になるらし顔の毛を濡らしつつ

傘の柄の凍るごときを立てながら野宮(ののみや)神社の苔を見ており

誰に呪われしか知らず死にゆきし葵の上に髪ながく添う

古は衣を着しまま抱き合いし折り紙の鶴重ねるに似て

恨むとは忘れざること 野宮の黒き鳥居を風とくぐりぬ

草枯れ石多き道 昼にのみ春の来たりて夕べは去りぬ

「野宮」は京都の郊外にあって、斎宮の潔斎のための場所であった。この世をあきらめた六条の御息所が源氏と最後のお話をする場面でもある。私にとっては「歌」のテーマの一つであるけれど、先んじられたという思いはしなかった。京都に住んでいる吉川さんは周りの観光客のゴタゴタとした景は取り除いて、私の好きな「源氏」の世界を垣間見せてくれたなと嬉しかった。
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