2019/11/15

島田達巳歌集『立山連峰』  歌集

今年の一月に上梓された島田さんの第一歌集『立山連峰』(現代短歌社)に言及することが遅くなってしまった。氏とは竹橋の短歌講座でご一緒して、親しく接していただいていた。情報処理についての大学教授だった方で、その点では私には接点はないが歌に対する真摯な姿勢に学ぶところがあった。
今年傘寿を迎えた記念にと第一歌集をまとめられたと聞く。それとともに竹橋のお教室はやめられ、所属の「八雁」と師の阿木津英教室に通われているという。故郷の富山県の立山連峰を銀の線でかたどったシンプルな装丁のソフトカバーも好ましいものであった。まず、十首を引く。

「立山連峰」

蛍烏賊バケツ一杯汲み上げてペダルも軽き初夏の夕暮れ

たらちねの母の惚けてわがために届けし鮭の荒巻三たび

鹿避けてニッコウキスゲは柵のなか群れ咲く黄いろ打ち萎れつつ

山荘の裏のなだりに地肌出づ笹叢までも鹿食むらしく

ゆっくりとナイルを上る船室にコーランひびく向かい岸より

コルヴァッチ展望台行きロープウェイ百人乗りにて犬も乗り込む

朝食後鏡の中の顔に問う「洗顔するのは二度目でないか」

三渓園林中にして祠あり首の欠けたる狛犬坐る

認知症の姉を支うるわが妻の昼の振舞いさらに明るし

小寒は七福神をお詣りす寿老人さまには賽銭多めに

全体は三部に分けられ、小見出しはあるが、年代順というわけでもなく生活歌、別荘での暮らし、旅の歌などがちりばめられている。近しく聞いた蓼科の別荘の話は私にも懐かしく、夏はそのような自然に囲まれて暮らす老後は羨ましいようであった。でもご本人は「老い」を詠んでいるので、なるべく明るくと心掛けているという。確かにユーモアのある語り口に魅力を感じる歌集であった。
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